感想・解説『イニシェリン島の精霊』

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少し前に見たこの映画
なかなかの衝撃的な作品でした。

作品紹介

『イニシェリン島の精霊』は2022年に製作された映画となっています。

監督は『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナーでコリン・ファレルとブレンダン・グリーソンがメインとなる二人の男性を演じています。

第80回ゴールデングローブ賞にも7部門にてノミネートされ作品賞、主演男優賞、脚本賞を受賞しています。

story

1923年、アイルランドの小さな孤島イニシェリン島。住民全員が顔見知りのこの島で暮らすパードリックは、長年の友人コルムから絶縁を言い渡されてしまう。理由もわからないまま、妹や風変わりな隣人の力を借りて事態を解決しようとするが、コルムは頑なに彼を拒絶。ついには、これ以上関わろうとするなら自分の指を切り落とすと宣言する。

https://eiga.com/movie/97618/

アイルランドの小さい島で

『イニシェリン島の精霊』観てきました。

観たのは少し前となるのですが、何か引っかかる部分があり観ることにした作品の一つです。

この映画はアイルランドの小さな孤島であるイニシェリン島という場所が舞台となっています。(実在はしないようです)

この島は小さい島で、島民全員が顔見知りという場所でそこに住む二人の男性を中心に話は進んでいきます。

パードリックとコルムは長年友人として島で暮らしていたのですが、ある日突然コルムから絶縁を言い渡されます。

訳も分からないパードリックは関係の修復を試みようとするのですが、コルムの方には全くその気はなく、行動も過激さを増していきます、、、。

そんな話となっています。

コルムの行動とは

絶縁を言い渡すコルムの行動について、観ている観客もその理由については分かりません。

最後まで見ても明確に理由は示されず、そこは想像して補完するしかありません。

指を切り落として投げたり、家に火をつけたり、狂気じみた行動をしているコルムなのですが一体なぜこのようなことをしたのでしょうか。

おそらく、それにはイニシェリン島が島民全員が顔見知りである小さな孤島であることが関係していると思えます。

そこは限りなく閉鎖的で、毎日の行動もほぼほぼ決まっているような場所です。

いわば、”終わりなき日常”が永遠に続いている場所なのです。

パードリックはそんな島で起こる小さな出来事にあまり疑問を抱いていない人物です。

繰り返される日常、島にある小さなバーで飲むことを楽しいと思えている人物です。

コルムもかつてはそうでした。

しかし、コルムはそのことに疑問を抱くこととなっていったのではないかと思います。

死と向き合って

コルムはある日、自分に残された時間と、失った時間のことを強く意識することになったのではないでしょうか。

自分が死ぬということを考えてしまった時、自分に何ができるのか、何をしてきたのかということを考えてしまったのです。

そして、今までこの島で過ごしてきた無為な時間を後悔するとともに、その怒りをパードリックへ向けることになってしまったのではないかと思いました。

失ってしまった時間はもう戻すことはできず、その”取り返しのつかなさ”に絶望したのです。

途中、パードリックと一緒に住んでいた妹も島を出て行ってしまいます。

この判断も凄く分かるというか、閉鎖的で刺激の少ない場所にずっといることはある種”狂っている”ことなのかもしれません。

精霊とは

作品のタイトルにもなっているイニシェリン島の”精霊”とはなんなのでしょうか。

これもまた作中では明確に示されることはありません。

崖で黒い何かが佇んでいるような様子が映っていたりしてそれが精霊なのか、、、?とか思ったりはしました。

トータル、何なん?この映画?というような作品ではありますが、何かあって考えさせられる作品ではあります。

個人的には閉鎖的な島での時間の流れと、そこで失ったものを取り返そうとする男と、それにまだ気がついていない男との話なのだと思いました。

最終的に考えてみると、コルムからしたら自分はもう遅いけど、少し若いパードリックはまだ間に合う。

お前は馬鹿だから早めに気づけよ、、という優しさと見ることもできます。

全く派手さはない作品だとは思いますが、人間として生きることとはということを考えさせられる一作だと思います。

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