感想・解説『怪物』

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気になってたこの作品。観てきました。

作品紹介

2023年に公開された日本映画で、監督は是枝裕和さん。
脚本は『花束みたいな恋をした』の坂元裕二さんが担当し、音楽を坂本龍一さんが担当しています。

出演は安藤サクラさん、永山瑛太さん、二人の子供を黒川想矢君と柊木陽太が演じています。
他、高畑充希さん、東京03の角田晃広さん、中村獅童さん、田中裕子さんが出演しています。

STORY

大きな湖のある郊外の町。
息子を愛するシングルマザー、
生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。
それは、よくある子供同士のケンカに見えた。
しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、
大事になっていく。
そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した―。

https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/about/

是枝裕和さん監督作

映画『怪物』観てきました。
是枝裕和さんの最新刊得策ということで気にはなっていたのですがようやく観れました。

前情報はほとんどなかったんですが、SNSとかで面白いというような評判は見ていたりして、今回も間違いないんだろうなと思いながら劇場へ。

観るまで知らなかったんですが、脚本と担当されているのは坂元裕二さんという方で『花束みたいな恋をした』という映画の脚本を担当されている方でした。そして、音楽は先日亡くなった坂本龍一さんが担当、、、。

観る前からこれはすごい作品なんじゃないかという感じでした。

序盤はミステリー展開

映画はとあるビルが火事になるシーンから始まります。
そして序盤は安藤サクラさんの演じるシングルマザーのシーンが続きます。

自分の子供がいじめられているのでは無いかという疑問を抱き学校へ押しかけたりするのですが、学校側の対応は違和感のあるものであり、何が起きているんだ??という展開が続きます。

息子となる湊君も何を考え、何をしているのかということが読み取れないように描かれながらも、どこか意味ありげなセリフがあったりと、考えさせられる展開が続きます。

先生のパート

途中からは永山瑛太さんの演じる保利先生という人物のパートが始まります。

この先生は最初のパートでは不気味で何を考えているかわからない人物として描かれていて、この人が”怪物”なのかということを考えながら観ることとなります。

この誰が”怪物”なのかということは後々考えてみると非常にうまいミスリードとなっているんですが、この瑛太さんの演技にはビビりました。

第二部的な先生パートでは保利先生の人間的な部分が描かれ、この人は悪い人では無いという部分が見えてきます。

やっていることや発言は変わっていないのに、見えている部分が違ってくると見え方が違ってくるのです。

このパートを見ていくと、怪物は他の先生達や、組織というシステムそのものなのでは無いかと思えてきます。

子供達目線

そして、第三部としてあるのが子供達目線のパートです。

この映画では二人の少年が実質的に主役として登場します。

一人は安藤サクラの息子となる湊君。そしてもう一人がクラスメイトである依里君です。

この二人のどちらかが”怪物”なのか、、、という見方をしてくのですが、次第にそうでは無いことがわかります。

二人は二人だけの友情を育んでいて、二人だけの居場所を見つけることとなります。

そして、次第に友情を超えた感情を抱いているのでは無いかということに気がつき始めます。

それが物語をややこしくしていくこととなるのですが、、、。

怪物はいない

最後まで観て思ったことは、明確な”怪物”と言える人物はいない。ということです。

予告でも使われていた「怪物だーれだ」という言葉。

これがミスリードとなっていて誰が怪物なんだ、、、ということを考えながら観ることとなるんですが、この物語に明確な悪役は出てきません。

校長先生も保利先生も、安藤サクラも二人の子供達も誰しもが”普通”の人間なのです。

裏を返せば誰しもが怪物になりうるし、そういった部分を誰しもが持っているということでもあるのかもしれません。

安藤サクラの演じる母親は息子を思うあまり、”モンスターペアレント”のようになっていきますし、校長先生も学校を守るという目的のあまりロボットのようになってしまいます。

最後は希望のある

台風の日が最終的には重要な1日となります。

この日にはいろんな人のいろんな側面が描かれ、二人の子供達が自由になった姿が描かれます。

是枝さんの映画はどれもそうなのですが、明確な回答や答えのようなものは無いことが多いです。

いろんな解釈ができ、いろんな解釈を許容する作品が多いです。

今作もまさにそんな感じで、二人は結局どうなったんだろう、、というラストとなっています。

雨は急に上がっていて、二人は亡くなっているのではという見方もできたりするのでは、、、と。

多面的な

思い返してみると、登場人物一人一人に細かい演出がされている気がして、本当に多面的な映画だなと思いました。

依里君の父親である中村獅童さんが演じている人物もDVをする悪者と見えましたが、彼も何か過去にあり生活が荒れてしまったのでは、、、という見方もできたり。

放火の犯人は明確にはされませんし、校長先生の孫を轢いたのが誰かも明確には示されません。

それでもこの作品は成立していて、本当に多面的な作品だなと思います。

二人の少年にはLGBT的な要素もあっったり、「ドッキリだよ」でいじめを済まそうとする今のテレビを皮肉っているような表現もあったりと。

とにかく観た人は誰しもが何かを考えさせられる作品ですし、必見の一作だと思います。

坂本龍一さんの音楽も良いです、、。

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