
原題の意味が深いです。。
『17歳の瞳に映る世界』
2020年に公開されたドラマ映画で、アメリカとイギリスの合作で製作された作品です。
日本では2021年7月16日に公開され、原題は『Never Rarely Sometimes Always』。
監督はエリザ・ヒットマンさん。主演はシドニー・フラニガンさん。他、タリア・ライダーさん、セオドラ・ペレリンさん、ライアン・エッゴールドさんなどが出演しています。
中絶手術を受けるためにペンシルバニアからニューヨークへ向かう二人の少女の様子を描いた作品となっています。
story
ペンシルベニア州に住むオータムは、愛想がなく、友達も少ない17歳の高校生。ある日、オータムは予期せず妊娠していたことを知る。ペンシルベニア州では未成年者は両親の同意がなければ中絶手術を受けることができない。同じスーパーでアルバイトをしている、いとこであり唯一の親友スカイラーは、オータムの異変に気づき、ふたりで事態を解決するため、ニューヨークへ向かう……。
https://17hitomi-movie.jp
高い評判を耳にし
『17歳の瞳に映る世界』見てきました。
コアな作品ばかりを上映しているTOHOシネマシャンテへ行き鑑賞。
この作品は結構高い評判を耳にしていて、ポスターや予告なんかもいい感じで、ぜひ見ようと思って劇場へ。
内容に関してはあまり調べずに行ったのですが、劇場のロビーに新聞や映画誌の記事なんかが貼ってあったりもして、そこで色々読んでから見ることとなりました。
”いい映画”であることは間違い無いのですが、扱っている内容は物凄く難しく、かつ繊細なものです。
これを”いい映画”と言っていいのかはなんとも言えず、生半可な感想を口にするのも憚られるような、そんな映画でもあります。
望まぬ妊娠により
物語はオータムという少女の妊娠が発覚するところから始まります。
相手が誰だとか、なぜそうなったかというような経緯は示されることはなく、未成年である17歳の少女が直面する妊娠ということを扱っている物語となっています。
親に相談することもできず、産むという選択をすることも難しいオータムは、従姉妹であるスカイラーとともにニューヨークへ向かいます。
ペンシルヴァニアではできない中絶手術を受けるために二人でニューヨークへ向かうのです。
その道中を描き、少女たちの前におこる出来事や、タイトルともなっている”見える世界”とはどのようなものなのか、というものを描いている作品となっています。
扱っているテーマは誰もが無関係と言えることではなく、それでいてなかなかに重い内容です。
娯楽として作られている映画では無いということは明らかで、見ている側に現実を突きつけるとともに、考えさせられる作品となっています。
視線に映るもの
この作品はオータムという少女の視線のカットが印象的にいくつも差し込まれています。
日本語タイトルを『17歳の瞳に映る世界』としたのも見事だな・・・と思うような感じで彼女に世界がどう見えているのかということがいくつも映し出されています。
ニューヨークへの移動中の風景の移り変わりなんかは単純にすごく綺麗ですし、辿り着いたニューヨークという街がどのように見ているのかというところも絶妙に作られています。
世界というものの見え方が、妊娠することによって変わったんだなというようなことも考えさせられるようにもなっている気がして、
今まではまだある意味では他人事だと思っていたことが、突然自分に降りかかってくるということの微妙な感情が切り取られている気がします。
正直、男である自分はこの映画をどのように見ればいいのだろうかとも思いながら見てました。
決してこの映画で扱われていることに本質的に共感することはできませんし、むしろ作中で所々に登場する”男たち”の一人である可能性が高いです。
そっち側にいる人が何を思うべきが正しいのか、そんなことを考えさせられる映画でもあります。
原題の意味とは
この映画の原題は『Never Rarely Sometimes Always』という英題となっています。
”全くない、時々、たまに、いつも”という意味の4つの単語を並べているタイトルとなっているのですが、これはどういう意味なんだろうなーと思いながら見ていました。
この言葉が登場するのは、ニューヨークに到着したオータムが受けるカウンセリングのシーンです。
ここで、自分の過去の男性付き合いや、性事情を聞かれることとなり、その回答の4択として使われるのがこの4つの単語です。
ここはタイトルにもなっている通り、物語の中でもかなり重要なシーンだと思います。
ただのカウンセリングのシーンだといえばそうなんですが、オータムが自分の過去を内省することによって少しずつ感情をあらわにしていく様子が映し出されています。
演じている女優さん凄えな・・・という話なんですけど、このシーンは物凄く深い部分でオータムが自分自身と向き合うシーンでもあります。
それは恐ろしいことでもありながら、確かに一歩進むために必要なことでもあるんだろうなとか思ったりしました。
時々こういう映画を見たくなる
時々、こういう作品を見たくなります。
娯楽的では無いんですが、細部まで細かく作り込まれていて、後々になっても思考を促されるような作品です。
扱っている内容は結構重たく、そこまで派手なシーンもない静かな作品ですが、いい映画であることは間違いありません。