感想・解説『ルックバック』漫画愛に溢れた

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話題になっていた読み切り漫画です。
これは確かにすごい漫画。

『ルックバック』

『ファイアパンチ』、『チェンソーマン』などの著者である藤本タツキさんによる読み切り漫画で、2021年7月19日にジャンプ+で公開された作品です。

143ページの読み切り漫画となっていて、漫画を書く二人の様子を描いた作品となっています。

story

学生新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。クラスメートからは絶賛を受けていたが、ある日、不登校の同級生・京本の4コマを載せたいと先生から告げられるが…!?

https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496401369355

藤本タツキさん作の読み切り漫画

『ルックバック』読みました。

先週公開され、ネットやSNS上でやけに話題になっているなと思ってすぐに読みました。



Twitterなんかでは絶賛されているコメントがたくさんあって、どんな話なんだろう・・・と思いながら。

読み終えて思ったのは、評判通りというかこの作品すごいな・・・ということです。



たくさんの人が、特に漫画家さんや、映画監督など、何かものつくりに携わっている人が絶賛している理由が分かりました。

藤本タツキさんの漫画は知っていながらも、恥ずかしながらしっかりと読んだことがなかったので、これをきっかけに読んでみようかと思います。

漫画好きな二人の

この作品には、何かを好きであるという感情や、何かを表現するということの持っている意味や、力なんかを強く肯定するメッセージが込められています。



話は二人の子供を中心に進んでいきます。

一人は絵が上手いとされている普通の生徒である藤野。

もう一人は不登校となっている京本という生徒です。



学級新聞上で4コマを描いていた藤野さんだったのですが、ある日不登校の京本が自分も漫画を掲載したいと言ってきます。

最初は舐めていた藤野さんだったのですが、圧倒的に上手い京本の絵を見て驚きます。



負けるものかと自分も絵の練習を死ぬ気でやり、2年が経過するのですが、京本との間には圧倒的な差があるということに気がつきます。

それを感じ取った藤野さんは、絵を描くことをやめてしまうのですが、小学校の卒業証書を京本に届けることとなり、二人は出会うこととなります。



そこで、藤野さんは京本が自分の大ファンであったことを知ります。

学級新聞に載っている漫画を楽しみに待っていたというのです。

そこから二人の運命は動き始めていくというような話となっています。

印象的な背中のシーン

この話は漫画家さんにしか描くことのできない漫画家漫画です。

物凄く深い部分で漫画が本当に好きで、漫画の持っている力を信頼している人にしか書けないものなんじゃないかと思います。



『ルックバック』では最初から最後まで、絵を描いている様子を後ろから描いたシーンが繰り返し登場します。

これはなんなんだろうなーと思いながら見ていると、何度か読むとこれはすごく重要なシーンなのだと気がつきます。



ちょっとずつ絵が変わっているなーとは思っていましたが、何度か読めば読むほど本当に細かく描かれています。

ちょっとずつ本棚に本が増えていったり、絵をやめていてたあとなんかはそれがなくなっていたり。



細かいところまで書き込まれていて、全てに意味があるんじゃないかと思うような絵となっています。

セリフのないシーンとなってはいるのですが、漫画を書くってこういうものなんだろうなーというようなシーンです。

ルックバック

タイトルともなっている”ルックバック”にもいろんな意味がかけられているような気がします。

Look Backというのは過去を振り返ると意味や、回顧するというような意味なのですが、背中を見るという意味とも取れます。



これは漫画を書いている背中を繰り返し書いていることを表しているとともに、藤野と京本の、実はお互いがお互いの背中を見ているというところにもかかっているんじゃないかと思います。

藤野は負けたと思っている相手に憧れられていることを知り、絵を書くのを再開したりという様子もあったりします。



さらに、自分では全く気が付かなかったのですが、この漫画にはOasisの曲である『Do’nt Look Back In Anger』という曲が隠れています。

冒頭に”Do’nt”という文字があり、最後のコマには”In Anger”が隠れています。

漫画のタイトルともなっている”Look Back”と合わせるとこの曲名となるのです。



多分ですが、この漫画の起点となっているのはこの曲なんだろうなと思います。

曲の歌詞も、怒りで過去を振り返らないようにということや、ベッドから革命を始めるというような部分は、この作品に通づるものがあります。

ある仕掛けが

途中、初見では若干分かりづらくなっているような構成があります。

何度か読んだ今はその意味が分かったのですが、この書き方も上手いな・・・という感じです。



読んだ人なら分かると思うあるシーンなのですが、ここではもしあのタイミングで二人が出会わなかったら、という未来が描かれています。

ここでは変わったかもしれない運命と、そうそう簡単には変わらない運命とが描かれています。



京本は同じように背景画に感銘を受け、美大を志すというようなところは変えることのできない運命で、その後に起きることは変えることができたかもしれなかった運命です。

その後の二人のやりとりは「結局同じじゃないか!」というようなところもあったりして、この書き方上手いなーと思いました。



最後には藤野は立ち上がり、漫画を描くことを再開します。

具体的には示されていませんが、彼女は自分の漫画に何かしらの行き詰まりを感じていたんじゃないかと思います。



そんな時にあの出来事が起こり、立ち上がるというラストとなっています。

そして、最後はまた漫画を書いている後ろ姿のシーンで終わりと・・・。素晴らしすぎます。

本当にいい漫画

143ページと、読み切りとしては決して短くはありませんが、すごくいろんなことが凝縮された凄まじい作品です。

根底には深い部分での漫画愛に溢れていて、なぜ漫画を書くのか?というところに対する回答のようなシーンは本当に感動的です。



ああ、漫画ってこういうためにあって、こういう反応のために漫画家は漫画を描くんだなーっていう。

漫画だけでなく、何かを作ることや、何かに熱中したことのある人ならか必ず何か響くものがあるような名作だと思います。


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