感想・解説『竜とそばかすの姫』あの作品の現代版

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めっちゃ好きな映画でした。

『竜とそばかすの姫』

細田守さんによる監督・脚本、スタジオ地図による制作の日本のアニメーション映画です。

2021年7月16日に公開されました。

細田監督の6作目となるオリジナルの長編アニメとなっていて、カンヌ国際映画祭にてワールドプレミア公開されている作品です。

story

自然豊かな高知の田舎に住む17歳の女子高校生・内藤鈴(すず)は、幼い頃に母を事故で亡くし、父と二人暮らし。
母と一緒に歌うことが何よりも大好きだったすずは、その死をきっかけに歌うことができなくなっていた。

曲を作ることだけが生きる糧となっていたある日、親友に誘われ、全世界で50億人以上が集うインターネット上の仮想世界<U(ユー)>に参加することに。<U>では、「As(アズ)」と呼ばれる自分の分身を作り、まったく別の人生を生きることができる。歌えないはずのすずだったが、「ベル」と名付けたAsとしては自然と歌うことができた。ベルの歌は瞬く間に話題となり、歌姫として世界中の人気者になっていく。

数億のAsが集うベルの大規模コンサートの日。突如、轟音とともにベルの前に現れたのは、「竜」と呼ばれる謎の存在だった。乱暴で傲慢な竜によりコンサートは無茶苦茶に。そんな竜が抱える大きな傷の秘密を知りたいと近づくベル。一方、竜もまた、ベルの優しい歌声に少しずつ心を開いていく。

やがて世界中で巻き起こる、竜の正体探しアンベイル

<U>の秩序を乱すものとして、正義を名乗るAsたちは竜を執拗に追いかけ始める。<U>と現実世界の双方で誹謗中傷があふれ、竜を二つの世界から排除しようという動きが加速する中、ベルは竜を探し出しその心を救いたいと願うが――。

現実世界の片隅に生きるすずの声は、たった一人の「誰か」に届くのか。
二つの世界がひとつになる時、奇跡が生まれる。

https://ryu-to-sobakasu-no-hime.jp/story/

細田守さん最新長編

『竜とそばかすの姫』見ました。

日比谷のTOHOシネマにて見たのですが、公開二日目とあってたくさんのお客さんが来ていました。

細田守さん監督のアニメーションということで注目度も高く、すぐにでも見たいなと自分もその中の一人へ。



細田さんのアニメといえば、『サマーウォーズ』や『バケモノの子』など、オリジナルとしては5作品があり、6作目となるのがこの『竜とそばかすの姫』となります。

この人の作品は好きなものもあれば、そうでないものもあったりするんですが、今回の映画は個人的にはすごく好きな作品でした。

というか、シンプルにこの作品、大傑作なんじゃないかって個人的には思ってます。

仮想世界を描く

この作品では<U>という仮想空間が登場します。

アプリの一つとなっていて、生体情報を元に<As>と呼ばれる分身を作ります。

その仮想世界での様子と、現実世界との様子を描いている物語となっています。



映画を見始めて、もう序盤からかなり引き込まれてしまいました。

煌びやかな仮想世界が描かれ、行進曲のような音楽とともに歌う主人公のベルが登場するシーンから始まるんですが、いきなりもう「うわぁ・・・」という感じで圧倒されます。



これからどんな話が始まるんだろうと思うとともに、描こうとしている世界の構造なんかを手際良く説明してくれます。

この冒頭のシーンからして、仮想世界の様子や、音楽というアニメーションでしかできないことをやっていて、もうなんか凄いです。

現実世界との

主人公となるのは鈴という名前の一人の少女です。

彼女の生い立ちや、母親に何があったのかということが序盤で説明され、歌うことができなくなった理由も示されます。



そして、彼女が<U>の世界で分身を作り、有名になっていくこととなるのですが、この感じは結構共感できる人もいるんじゃないでしょうか。

それが良いことなのか悪いことなのかは分かりませんが、別のどこかで別の自分として存在して、それが救いとなっているということは決して悪いことではないと個人的には思っています。



仮想世界は現実の延長線上にあるのではなく(そうである場合もあります)、ある種の別世界として存在しているからこその希望ともいえます。

それは嘘ともまた違っていて、実は本質的な意味ではスゴく本来の自分に近い本当の姿だったりすることもあるからです。

匿名性があるからこそ、鈴も歌うということの喜びを取り戻すこととなり、結果多くの人に届く音楽を歌うこととなっています。

現代版

途中、物語上重要な意味を持つ”竜”という名前の人物が登場します。

タイトルともなっている重要な存在で、彼が何を抱えているのか、彼の正体は誰なのかということが物語の肝となってきます。



ベルはそんな竜と接近することとなるのですが、その様子は明らかにある作品をモチーフとしています。

それは数年前に実写化もされている『美女と野獣』というディズニー映画です。



城で踊るシーンなんかはもう明らかにまんまじゃん!という感じです。

考えてみれば”ベル”っていう名前がそもそも『美女と野獣』のヒロインと同じ名前じゃないかということで、明確に意識しているんだなという感じです。(公式にインタビューなんかでも言ってます)



でも、この映画ではただそれを描き直すという訳ではなく現代版にアップデートしているような気もします。

というか、そこを出発点として作り始めた作品なんじゃないかって思ったりもしました。

終盤

終盤、物語はある方向へと進んでいくのですが、やはり最大の山は鈴が自分自身の姿で仮想世界の中で歌うというシーンだと思います。

この作品では音楽や、歌ということに色々な意味を持たせている気がします。



もっといえば、さらに広い意味で”何かを表現すること”に対して、肯定的な何かを示そうとしているように思えました。

鈴が歌うシーンはスゴく感動的でもあり、いろんな感情が溢れてくるシーンです。

このシーンもアニメでしか、さらに映画でしか生み出すことのできない映像となっていて、すげえな・・・という感じです。

最高傑作?

ラストに向けても色々あって、若干力技だったりするようなところもあったりしましたが、良いラストとなっています。



細田さんの映画は一通り見ていて、好きなものもあったり、あまりハマってないものもあったりするんですが、クオリティが高いことは間違いありません。

今回の『竜とそばかすの姫』は作品群の中でもかなりの完成度なんじゃないでしょうか・・・。

個人的にはスゴく好きな作品でした。



あと、ちょっと面白かったのが鈴の地元のおばさん五人組の声優がやたらと豪華です・・・w

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