感想・解説『未来は予測するものではなく創造するものである』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

まんまと予測されて購入しました。

『未来は予測するものではなく創造するものである』

SF作家でもあり、ITコンサルタントでもある樋口恭介さんによる著作で、2021年7月9日に筑摩書房より刊行されました。

SF的な創造的な思考法をビジネスにおいて生かすという”SFプロトタイピング”ということに関し書かれている本となっています。

内容紹介

「ここではないどこか」への想像力を解放せよ。
意味や価値のわからない仕事を再生産し続ける「制約事項」を爆破し、
「本当のイノベーション」に向かって考える自由を取り戻すために。
気鋭のSF作家であり、ITコンサルタントである著者が贈る理論と実践の書!

「事例は? 」「エビデンスは? 」「効果は? 」
形骸化したルールや管理指標に絡めとられ、日本社会はいま停滞の中にある。
イノベーションの経験も、その記憶すらも失われつつある。
前例主義は過去を縮小再生産し、過去でできた現在を未来にすりかえる。
妄想を、理想を恐れないこと。イシューからはじめないこと。
「世界は変えられる」と本気で信じる想像力を持つこと。
物語の力とともに、出口の見えない退屈な現実を打破し、自由な思考と戯れるために。

https://aoyamabc.jp/products/miraihayosoku

SF的思考を

『未来は予測するものではなく創造するものである』を読みました。

Amazonのおすすめのところに出てきていて、タイトルからもう面白そうだなと思ってすぐに購入して読みました。



著者は樋口恭介さんという方で、SF作家でもありながら、コンサルタントとしても活動されている方です。

以前『すべて名もなき未来』という本を読んだことがあり、この本も結構頭を刺激されるような内容だったので、今回の本もきっと面白いのだろうなという感じで読み始めました。



Amazonのおすすめってなかなか凄くて、結構的確に自分の興味あるものを勧めてくれる気がします。

まんまとGAFAのテクノロジーに予測され、購入した形となります。

SFプロトタイピングとは

この本はどういった本なのかというと、”SFプロトタイピング”ということに関して書かれている本です。

あまり聞き馴染みのない言葉かもしれませんが(自分も初めて聞きました)、概念自体はそこまで難解なものではありません。



シンプルに言うと、”SF的なフィクショナルな考え方を現実に落とし込んでいくためにどうするべきか”というようなことでしょうか。



SF小説や映画というと、宇宙とか魔法とかいうようなものをイメージすることが多いかもしれません。

しかし、SFとはもっと広いもので、極端な話”人が思いつくことのできる事柄全て”がSFとも言えます。

この本ではいかにして、自分の思考を制約している何かを取り外し、自由に考えた上で、未来を創造していくためにどうすべきかということがかかれている本となっています。

物語を語るということ

SF作家の名前や作品名なんかも結構出てきますが、全体を通して凄く読みやすい本だなと思いました。

作家名や作品の内容は知っているに越したことはないですが、知らなくとも読めるようになっている気がします。



おそらく、どんな仕事をしている人でも自分のやっていることに引き寄せて、考えることのできる内容だなと思うからです。

表面的にやっていることは全く違ったとしても、”未来をより良くするためにどうするか”という部分は普遍的で、いろいろな事柄に生かせるような気がします。



この本では物語を語るということの重要性が書かれています。

人は不可避的に物語と関わっていて、未来を描くための物語の重要性が語られています。



興味深かったのはアメリカの有名企業や政府組織では、SF作家がコンサルタントという形で参加することがあると書かれている部分です。

SFとビジネスってなんとなく自分の中でも直結はしないもので、現実のある種の”逃避先”として存在しているものがSFなのかもしれないなというようなことも思ったりしてました。

でも、実際に企業の戦略を考える上での重要な外部からの視点としてSFを捉えているんだなということは、個人的にはなんか嬉しかったです。

日本でも同じような営みをしている企業もあったりして、面白いよなーとか思ったり。

希望も絶望も

この本はまず考え方の説明があり、実践するにはどうすべきかということが続き、最後には実例をいくつか取り上げるというような流れとなっています。

この”SFプロトタイピング”という考え方なのですが、いくつもの未来を創造しうるというところが個人的には面白いなと思いました。



例えばジョージ・オーウェルの『1984年』で描かれているような監視社会を想定するとして、同じ前提から希望の物語を描くこともできますし、絶望を描くこともできます。

そこは完全に自由でいくつもの可能性の物語を生み出しうることができます。



車の自動運転なんかを例に取っても、それが生み出す希望の物語を考えることもできますが、その裏側にある格差や搾取構造を描き出すこともできます。

効率的で自由で安全な移動手段となる可能性もあるけれど、そうはならない未来となる可能性もあります。



両面の可能性を考えることが意外と重要なんじゃないかなとか思ったり。

未来を描く

他にも色々と書かれていますが、僕はこの本を読んで凄く希望を感じてしまいました。

未来なんて誰も分からないし、予測することも困難です。



約2年前、新型のウイルスが世界的なパンデミックとなっていることなんて誰が予想できたでしょうか。

誰しもが無事にオリンピックを終えている未来を描いていたのではないでしょうか。



著者の樋口さんは一貫して”未来は分からないからこそ、創造することは完全に自由だ”ということを伝えようとしているような気がします。

それが良いことであっても、悪いことであっても、実現できることであっても、そうでなくても。

自由だからこそ考える価値があって、何より考えることは楽しく、希望となるんだなということだと思います。



これって本当に大切なことです。実現できるかどうかなんて別に良いんだよと。

(あくまで個人的な読んだ感想なので、言いたいこと全然違ったりしていたらすいません。笑)



  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*