
久々に新書読みました。
『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2』
立命館大学の教授であり、医療少年院で勤務されていたこともある宮口幸治さんによる著作で2021年4月に刊行されました。
少年院を訪れる子供達の認知の部分にスポットを当てた『ケーキの切れない非行少年たち』の続編となる本で、著者自身の体験を元に書かれています。
内容紹介
「頑張る人を応援します」。世間ではそんなメッセージがよく流されるが、実は「どうしても頑張れない人たち」が一定数存在していることは、あまり知られていない。彼らはサボっているわけではない。頑張り方がわからず、苦しんでいるのだ。大ベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』に続き、困っている人たちを適切な支援につなげるための知識とメソッドを、児童精神科医が説く。
https://www.shinchosha.co.jp/book/610903/
続編となる
久しぶりに新書をしっかりと読みました。
『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2』ということで、タイトルの通り『ケーキの切れない非行少年たち』という本の続編となる本です。
『ケーキの切れない非行少年たち』は確か半年ほど前に読んでいて、少年院にいる子供達の認知の部分を取り上げることで書かれている本でした。
少年たちは物事を見るときの認知機能がしっかりと機能しておらず、だからこそこういうことをしてしまうのか、どうすれば良いのかということが書かれている本でした。
凄く読み応えがあるというか、変な意味ではなく”面白い”本だったなーという感じです。
『ケーキの切れない非行少年たち』は80万部ほど売り上げているそうで、こういう本がたくさんの人に読まれていることはちょっと嬉しかったりもします。
自身の体験をもとに
そんな本の続編となる今回の本なのですが、これもまた精神科病院や医療少年院に勤めていたことのある著者自身の経験をもとに書かれている本です。
こういう体験をもとにした本というのは結構あるかもしれませんが、やはりこういう本を読むと体験を書いた本は貴重な丈夫なんだなと痛感させられます。
”自分の知らないことを追体験する”という本の持っている凄く重要な側面を具現化しているかのような本は、後世の人が呼んでも意味を持つ重要な存在でもあるからです。
宮口さんの勤めていた医療少年院というような場所は、世の中に確かに存在していることは知っていながらも、その実態を知っている人がどれだけいるでしょうか。
少なくとも自分は、そこにどのような世界が広がっているのかということに関しては全く無知で、そういう人の方が多いんじゃないでしょうか。
だからこそ、こういった本の存在は凄く重要で、多くの人が読むべきなんだなーと思います。
なぜ頑張れないか
今回のテーマとなっているのはタイトルにもある”なぜ頑張ることができないか”という部分です。
この”できない”という言葉を使っているところが凄く絶妙で、”やる、やらない”ではなく、”できる、できない”で考えているという著者の考えが汲み取れる気がします。
”やる、やらない”という言葉は本人の意思の強弱で、なぜやれるのか、やれないのかというニュアンスです。
しかし、”できる、できない”という言い方は違います。
これは本人の意思や努力ではどうすることもできない要因が関わっているという意味が含まれています。
それは生まれ持ったものであったり、自分では選ぶことのできなかった環境要因であったりします。
この本はさまざまな角度から”なぜできないか”について書かれている本なのです。
自己啓発本とは異なる
こう考えると、なぜこの本が注目されるのかがなんとなく分かる気がしました。
この現代、書店を訪れればいわゆる”自己啓発本”というものが溢れています。
それはいかにやる気を高めるかや、いかに戦略的に努力するかについて書かれている本です。
こういった本の多くは、著者の成功体験をもとに書かれています。
書かれているメソッドなんかは確かに正しく、説得力のあるものもありますが、それをただ真似るだけでは多くの人は同じ結果を得ることができません。
現実にはそういった本の著者の成功の裏には、本に書かれていること以外の部分が多大にあるからです。
そういう部分を無視して、同じような考えを持ち、同じような行動様式だけを真似たところで同じ成功を得ることは難しいのです。(必ずしも全員がそうとは限りませんが)
今回読んだこの本は、逆とまでは言いませんがそういう自己啓発的なものとは全く違っています。
頑張れないのはなぜかというところに着目して書かれている本で、凄く優しい内容となっている本です。
頑張ったら何かを得られる
この本では、頑張ったら支援するというような言い方や、支援の仕方は適切ではないと書かれています。
頑張った人に何かを与えるという考え方は、その逆にいる頑張らなかった人には与えないということになります。
改めて言われてみると、世の中にはそのような考えで溢れているんじゃないかと思います。
自己啓発本で語られているような成功論はまさにそのような世界で勝ち抜くために手段であり、そのステージにすら立つことのできない人がいるんだということを知らないければなりません。
『どうしても頑張れない人たちー』で語られる話は、まさにそのようなステージに立つ前の人たちの話です。
そういうった人たちに対してどうすべきなのかを、凄く本質的な部分まで話している本だなと思います。
読みやすい文章と分量で
『ケーキの切れない非行少年たち』もと今回の2冊の本は、どちらも凄く読みやすい本でした。
とてもわかりやすい文章で書かれていますし、分量もそこまで多くはありません。
それでいて、誰しもが決して関係のない話でもなく、なるほどなと思える部分がたくさんあります。
実際にたくさんの人が手に取り、読んでいる本でもあるのは間違いありません。
知らないことを知るという意味でも、見ぬふりしてきたことを気づかせるという意味でも凄く良い本なんじゃないかと思いました。