
静かな映画だけれど・・・。
『歩いても歩いても』
是枝裕和さん監督の日本映画で、2008年6月28日に公開されました。
主演は阿部寛さん。他、夏川結衣さん、YOUさん、樹木希林さん、原田芳雄さんなどが出演しています。
story
夏の終わりに、横山良多は妻と息子を連れて実家を訪れた。開業医だった父とそりのあわない良多は失業中のこともあり、ひさびさの帰郷も気が重い。明るい姉の一家も来て、横山家には久しぶりに笑い声が響く。得意料理をつぎつぎにこしらえる母と、相変わらず家長としての威厳にこだわる父。ありふれた家族に風景だが、今日は、15年前に亡くなった横山家の長男の命日だった。
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跡継ぎにと期待値た長男に先立たれた父の無念、母の痛み。優秀だった兄といつも比べられてきた良多の、父への反発心。姉は、持ち前の明るさで器用に家族のあいだをとりもつが、子連れで再婚して日の浅い良多の妻は、緊張で気疲れする。
そんな中、良多はささいなきっかけから親の老いを実感する。ふと口にした約束は果たされず、小さな胸騒ぎは見過ごされる。人生は、いつもちょっとだけ間にあわないことに満ちているのだ。
2008年の是枝さん監督作品
『歩いても歩いても』見ました。
コロナによる自粛のために時間があって、最近は過去の映画をたくさん見ようかなーという感じになっています。
是枝裕和さんは、日本人の監督で世界的に最も名が知られ、評価されている監督さんと言っても過言ではないはずです。
『歩いても歩いても』はそんな是枝裕和さんの監督による映画で、2008年に公開された映画です。
静かながらも・・・
『歩いても歩いても』はどんな作品なのかというと、そこまで大きな出来事が起こるわけでもなく、実家に帰省した家族が送った数日間の様子を描いている作品です。
静かな家族の時間が流れていくようにも見える内容ではあるのですが、実は本当に細かいところまで作り込まれているな・・・というような内容でもあります。
作中で語られていることとと、明確には語られていないこととが絶妙なバランスで、しかし確かに伝わる人には伝わるように描かれています。
そして、この映画は少し怖い映画でもあります。
それは幽霊とか怪物とかいうような怖さではなく、人間が確かに持っていて実は近くに存在しているような”人の怖さ”みたいなものです。
表面上、家族というものを継続していくためにそれぞれが役割を演じている部分があって、裏では人間の黒い部分みたいなものがあったりして。
しかも、それは多くの人が自分にもこういうところあるな・・・と思ったり、こういう部分持っている人確かにいるよな・・・と思ってしまうようなことでもあったりするのです。
分かりやすい部分とそうでない部分と
樹木希林さんが子供を助けて命を落とした長男の命日に、その助けられた子供を毎年呼んでいることをなぜやめないのかが語られる部分があります。
それは、息子の死を忘れさせないためだということを言っていて、ここはかなり分かりやすくゾッとするような部分でした。
でも、親となってみるとそうなってしまうのかな・・・と思ってしまいますし、部屋に紛れ込んでいた蝶々を亡くなった息子と間違えるというようなシーンもあったりして、息子の死がいかに彼女にとって重要なことだったのかが伝わってきます。
さらに明るく振る舞っている姉家族たちが帰りの車で話している内容や、阿部寛さんの結婚相手の連れ子に対するシーンなど、よーく見るとうわあ・・・と思うようなシーンはいくつかあったりします。
序盤に歯磨きが映るシーンがあって、これなんなんだろうな・・・と思っていると、途中語られるTシャツの話と繋がっていて、歯磨きは人数分買ってたのに、Tシャツは買ってないんかい・・・って。
分かってやってるの?みたいなこともあったりして。
それが人間
でも、この映画も他の是枝さんの作品のように人間の姿をしっかりと描きながらも、それを本当の悪としては描いていないなと思いました。
というよりは、人間のリアルを他の映画よりも突き詰めて描いているんじゃないかと思います。
こういう部分もあるけれど、人間ってこういうもんだよね・・・と。
この映画には誰しもが自分と重ね合わせることのできる誰かや、その一部分があります。
自分もこういうところあるな・・・というような部分を意識させられる映画でもあるのです。
次男である阿部寛さんと父親の関係とかも、ちょっと分かるな・・・と思いながらも、子供に対しては優しく接していたりするシーンもあったりして。
どこか懐かしい
個人的にはこの映画は、ずっとどこか懐かしさを感じながら見てしまいました。
確かに、夏休みに帰省した時ってこんな感じだったよなーとか思い出す部分もあったりして、舞台となっている家もちょっと自分のおばあちゃん家と重なる部分がありました。
タイトルの『歩いても歩いても』というのは、誰しもが人生を歩き続けていくんだけど、うまく行かない部分はいつまで経っても変わらなかったりするけど、それでも歩くしかないというようなメッセージではないかと思いました。
基本的には静かなシーンが多い、大人の映画という感じです。
でも、見た人は必ず何かしら響くシーンがあるのではないでしょうか。
少なくとも僕はそうでした。