感想・解説『アウシュビッツ収容所:ルドルフ・ヘス』歴史的な事実を記した

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興味あって読んだ本です。
結構衝撃的な内容でもありました。

『アウシュビッツ収容所』

アウシュビッツ強制収容所の所長であったルドルフ・ヘスによる手記で、1999年に講談社学術文庫より刊行された本です。

翻訳は片岡啓治さんによるものとなっています。

内容紹介

祖国ドイツを愛する忠実な軍人であり、「心をもつ1人の人間」であったアウシュヴィッツ強制収容所所長ルドルフ・ヘスが、抑留者大量虐殺に至ったその全貌を淡々とした筆致で記述した驚くべき告白遺録。人間への尊厳を見失ったとき、人は人に対してどのようなこともできるのだろうか?

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000150991

アウシュビッツ所長による

『アウシュビッツ収容所』という本読みました。

特に個人的な深い意味はないんですが、このアウシュビッツという場所と、そこで起こった歴史的な事実に興味があっていくつか本を読んでいて、それで見つけた本の一つがこの本です。



この本は、実際にアウシュビッツの収容所で所長として勤めていたルドルフ・ヘスという人によって書かれている手記となっていて、彼がどのような人生を歩み、その場所で何が起こり、何を見たのかが記されています。

内容としては、正直結構ハードめです・・・。

文量自体も多いですし、そこで語られていることの一つ一つがハードなものばかりとなっています。

情報として凄く貴重な

最近、書籍の持っている『情報としての価値』というものを凄く意識して選書をするようになりました。

それは読んだことによって自分が何を感じ、何を考えるかという部分とは少し違った『世界における情報としてのその書籍の価値』という部分です。



例えば、50年後、100年後を生きる人がその本を手に取ったとして、過去の世界を生きていた人の考えていることや、当時の風景を知ることのできる本は、情報としての価値が極めて高いものです。

過去のある時期にしか生まれることのなかった当時の情報を後世へ残す役割を持っているからです。



そのような本は決して多くはないかもしれません。

でも、よくよく探してみると結構あるのかなというような気もしてきています。

世界各国で翻訳されていたり、時間が流れても再販が何度もされていたりする本はそんな本が多いです。



この『アウシュビッツ収容所』という本は、間違いなくそのような情報としての高い価値を持っている本の一つです。

実際に所長を勤めていた人が書いたということで既に唯一無二の情報ですし、それは時間の経過とともに薄れていってしまうものでもあるからです。

このような本は決してたくさんの人が読むということはないかもしれませんが、確実に必要としている人はいて、今後も残っていくものとなっていくものです。

ごく普通の人が

内容に関する言及はその全てに触れることは難しいのですが、全体を通して思ったことを書いておこうかと思います。



読んでいて個人的に怖いなと思ったのは、著者であるルドルフ・ヘスという人物は凄く『普通の人』だったということです。

家族愛などの人間的な感情をしっかりと持ち合わせた人物でもあった人が、環境からの影響や役割を全うすることによって、無感覚に非常なことをやってしまうのだということがこの本には書かれています。



少し前に『服従の心理』という本を読んだことがあったのですが、この本にも似たようなことが書かれていて、自分以外の人からの指示や責任だということが明確な時、人は自分の意思とは異なることも平気でできてしまうのだということです。

これは確かに怖いことではあるのですが、自分も確かに持っている一面でもあるんだろうなと思ったりもします。



組織に属していると自分以外の人からの指示で動くことがほとんどです。

それは不自由なことでもあるかもしれませんが、生きていく上では楽なことでもあったりします。

自分で考えることはせずともやるべきことが降ってきて、それが正しかろうが間違っていようが責任は自分にはないのだと分かっていれば気分的には楽なのは間違いありません。



アウシュビッツという場所で起こったことは歴史的にみると間違いであったと考える人が多いでしょうし、自分もそう思います。

しかし、それは事後であり、他人事だからそういえている部分があることは間違いありません。

仮に当時自分がそこに生きていたとして、その立場だったとしてその間違いを指摘することができたのかは怪しいものなのです。



おそらくそんなことはほとんどの人が不可能で、流れに逆らうことなく同じことをしてしまうのではないだろうかと思ったりもしました。

難しい本だけど

凄くハードな内容であり、難しい本であることは間違いありません。

しかし、前述したように情報としての価値の高い良い本であることもまた間違いありません。

他人事だからこその一つの事実と情報としては、個人的にはとても興味深く読むことができました。

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