感想・要約『おれは無関心なあなたを傷つけたい:村本大輔』熱い言葉ばかりの良書です。

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めちゃくちゃいい本です。
ここまで響く言葉の書かれた本に久しぶりに会った気がしました。

『おれは無関心なあなたを傷つけたい』

お笑いコンビ、ウーマンラッシュアワーの村本さんによるエッセイ集で、2020年12月にダイヤモンド社より刊行された本です。

自身の行っている様々な活動に関して書かれたノンフィクション本となっています。

内容紹介

見て見ぬふりをするすべての日本人へ。ウーマンラッシュアワー村本大輔が贈る、最初で最後の“劇薬”エッセイ! 社会に存在する偏見、差別、葛藤など、多くの問題を読者の眼前に突き付け、問題の是非ではなく、われわれの無関心な姿勢そのものに疑問を投げかける一冊。

https://www.diamond.co.jp/book/9784478111444.html

村本さんのノンフィクションエッセイ

『おれは無関心なあなたを傷つけたい』読みました。

Amazonで偶然見つけて読んだ本だったのですが、これがめちゃくちゃ良い本でした。



誰の本なんだろう?と最初は分からなかったのですが、著者はウーマンラッシュアワーの村本大輔さんです。

THE MANZAIという漫才の大会で優勝されているコンビで、お笑いを好きな人であればおそらく皆知っている人かと思います。

本にも書かれているように、最近はテレビの世界から少し離れている村本さんなのですが、この本には彼が何を考え、何をしているのかが書かれています。

日本人が見ようとしないこと

この本は村本さんが日本のテレビに抱く疑問から始まります。



日本では、日本のテレビではしっかりとそこに『ある』ものが『ない』ものとされていたりすることがよくあると。

アメリカのコメディでは人種差別をネタにすることがよくあるのだが、日本の笑いにはそれを持ち込むことは許されない。

だからと言って、日本にそれが『ない』のかというとそんなことはない。



アメリカのような歴史的な人種差別のようなものは存在しないかもしれないが、他にも様々な差別と呼べるものが存在しています。

そんな日本で、それを疑問に思い、声にすると日本人は強烈な拒否反応を示します。



嫌いな芸人だの、空気を読めないだの言われ、次第にそんなことを口にする人は消えていったりしてしまいます。

そこに確かに存在しているのにも関わらず、それに疑問を感じ、口にすることが許されないのです。



僕はテレビの世界というものを外側から見ているだけのただの一視聴者ではあるのですが、正直この感じ凄く分かります。

日本のエンタメは、誰も傷つけないことに重きを置きすぎていて、それが異常なことだと思わないようにもなっているような気がして、そこに気持ち悪さがあります。



アメリカという国では、自分たちの抱えている問題をエンタメや芸術として昇華することのできる強さがあります。

人種差別を扱った映画なんかは山ほどありますし、歴史の汚点と言えるような部分を表現したものはたくさんあります。

日本にはなぜそれがないのか

日本ではそのようなものは決して多くはありません。

全くないとは思いませんが、そういうものは大衆の支持を得られず、結果お金を生み出すことができず廃れていってしまいます。



それもある種の正しさではあると思うのですが、そこがこの国の弱さだなとも思います。

どういう想いがあってそれを作ったかという部分よりも、受け手がどう思うかにばかり重点が置かれ、無難なものばかりとなっている気がするのです。



村本さんは確かに最近テレビで見ないな、と思っていたのですが、この本を読むと彼が何をしているのかがしっかりと書かれています。

アメリカに1ヶ月ほど滞在し、語学学校に行き、スタンドアップコメディをやったりしていることや、朝鮮学校の人たちと交流をしていたり。

いろんなところで独演会をしていたりと様々な活動をしています。

分からないと言い、行動に移すということ

この本を読み終えて凄く思ったことは、村本さんという方は凄くピュアで、凄くまともな人なんだなということです。

自分に分からないことは分からないと言い、それを知るために行動に移すことができて、弱者の痛みを本質的な部分で知っている方です。

多くの人が見て見ぬふりをしているようなことにも立ち止まり、現場を訪れてしっかり理解しようとしています。



それは決して簡単なことではありません。

テレビで見たり、ネットで見たり、多くの人はそれで知ったつもりになっています。

たくさん流れてくる情報の一つとして自分の中に取り込み、分かったつもりになっているのです。



しかし、それは本当の意味で知っているとは言えません。

テレビやネットに切り取られている部分の先にはたくさんの世界が広がっていて、それはその場所に行くことでしか理解することはできません。

村本さんは、あれ?と思った時に可能な限りその場を訪れることとしています。

時間的、経済的な制約もあるので全ての人がそうすることはできないかもしれませんが、彼のような姿勢は何かを知るということにおいて凄く大切なことだと思います。

自分を疑え

世間の人が彼に対しどういうイメージを持っているかは分かりませんが、僕はこの本を読んで彼のことを心から尊敬しましたし、単純に凄いなと思いました。

表層的な部分だけ見て批判している人がいたら、そのような人ほど、自分は浅はかなこと言っていないかを自問したほうがいいと思います。



この本には村本さんの小さい頃の経験や、芸人として売れてないころの屈辱的な経験なんかも書かれています。

だからこそ彼は弱者の気持ちなんかも理解できるのかなと思ったりもして、その辺りも凄くいいです。



今、世間は村本さんに対してどのようなイメージを持っているんだろう・・・。

否定的な思いを持っている人もいるかもしれませんが、次第に彼のやっていることは理解者を増やしていくような気もします。

少なくとも自分はこの本を読んで彼のことを正しいと思いましたし、疑問を投げかけるということが必要だなとも思いました。

疑問を持たないことや、言わないことは平和でもありますが、その平和が実は誰かの犠牲の上に成り立っているんだなということでもあるのです。



とりあえず、村本さんのことを知っている人も知らない人も、肯定的な人も否定的な人も、まずは読んでみてほしい一冊だなと思いました。

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