感想・解説『リアル 15』それぞれのぶつかる壁が

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ついに発売となった最新刊です。

『リアル15』

週刊ヤングジャンプにて不定期連載されている井上雄彦さんによる漫画作品。

2014年11月より連載休載となっていたのですが、2019年に4年半ぶりに連載が再開。

2020年11月24日に発売されたのが最新15巻となります。

内容紹介

親友の山内からの嬉しい知らせにヤル気MAXでジャパンオープンにのぞんだ戸川だったが全国ベスト4のウォリアーズに完敗してしまう。そのウォリアーズに勝ったのは、なんとタイガースの宿敵ドリームス。やはりというかチームに不協和音が生じてしまう。また野宮は会場で久しぶりに再会した高橋に「太りすぎだ」と揶揄され、その悔しさから公園でケンカ騒ぎ。ついには警察に捕まってしまう。一方、順調に見えた高橋だったが得意だったシュートが入らず、自信を失っていた…。

https://www.s-manga.net/items/contents.html?jdcn=08891618876143315501

数年の時を経て

『リアル』15巻発売されました。

この作品は連載が開始したのはもう20年ほど前のことで、不定期での連載となってる漫画なのですが、2016年よりしばらく休載となっていました。



どうなるのかな・・・と心待ちにしていたのですが、2019年の冬に連載が再開となり、2020年に発売された最新刊がこの15巻となります。



この作品はバスケを扱っている作品であるのですが、その中でもさらに車椅子バスケのことを扱っている漫画です。

メインとなる三人の人物が登場するのですが、一人は骨肉腫という怪我で、一人は交通事故で車椅子生活を余儀なくされ、色々ありながら競技としての車椅子バスケを始めることとなります。

もう一人の野宮というキャラは、高校を退学となりバスケのプロを目指すこととなるのですが、そこにも色々と壁があり・・・というような話です。

忘れかけていたと思っていましたが・・・

正直、全巻から間が空きすぎていて、話どうなっていたっけ・・・と忘れいているかなと思っていたのですが、全然そんなことはありませんでした。

読み直すことしなくても、読んできた人であればしっかりと内容が入ってくるはずです。



戸川、高橋、野宮の三人はそれぞれの道を進み始めているのですが、それぞれがそれぞれの壁にぶつかっています。

戸川は車椅子バスケの選手として、さらに高い存在がいるという壁に。

高橋は障害者としての自分を受け入れ、競技としての車椅子バスケを始めるにあたっての壁に。

野宮はプロを目指すと言ったものの、そこには高すぎる壁があるという現実に直面しています。



この巻でもそれぞれの様子が描かれ、それぞれが絶妙に関わっていくような話にもなっています。

努力の描き方

『SLAM DUNK』の時もそうだったのですが、井上雄彦さんという方は、『努力』というものの描き方が本当にうまいな・・・と思います。

努力によって変えることのできる部分と、どうすることもできない部分とで絶妙な線引きをしているような気がしていて、そこにはまさにそれぞれのリアルがあります。



今作では、さらに身体的な『障害』をいうことを扱っているということもあり、努力すればできるようになることと、どうすることもできないこととが物凄くリアルに描かれています。

だからこそ作品全体に深みが生まれていて、単純に面白い作品となっているのです。



結果、読者が受け取るメッセージは『努力すれば夢は叶う』という単純なものでもなくなっている気がします。

熱いシーンが多い

この15巻も相当熱いシーンが多いです。

野宮が自分の夢に対して『やりきったのか?』と自問するシーンは、何かしら夢を抱いたことのある人であれば誰しもが共感することができるのではないでしょうか。



この『やりきった』という感覚はすごく大切なことだと個人的には思います。

夢を抱いたとしてもそれが必ず叶うとは限りません。

というより、多くの人は夢を叶えることができずに終える方が多いはずです。



しかし、その時に『やりきった』と思うことができるかどうかでその人の人生は大きく変わってきます。

『やりきった』と思えていれば、次の人生へ進みさらに別の夢を見つけることができます。



つまり、夢を修正していくことができるのです。

『やりきった』上で夢を諦めるということは、人生を先へ進めることでもあるからです。

高橋が泣くシーン

本巻の最後の方にある高橋が泣くシーンも本当に熱いです。

白鳥さんという、高橋とともにリハビリを受けていた人が語りかけ、高橋が思わず涙してしまうシーンがあります。



これは、彼の苦悩と努力をそれこそ本質的に理解している人だからこそ言える言葉であり、だからこそ響く言葉となっています。

この語りかけは、彼だからこそ響かせることのできるものです。

おそらく、障害のない普通の人が同じことを言ったとしても、『お前が言うな。何も分からないくせに。』と思ってしまうはずだからです。



この辺りの描き方は流石だな・・・という感じです。

次巻は・・・

話的にはまだまだ続きそうだなーというような内容で、次巻はいつになるんだろうと楽しみです。

コロナの影響もあり、オリンピック・パラリンピックは延期となってしまったのですが、この車椅子バスケというスポーツを一度見てみたいなとも思っていました。

競技としての盛り上がりにも一役買っている漫画となっていて、『SLAM DUNK』を読んだことのある人であれば、響くものある作品でもあると思います。



もう一つの『バガボンド』も2015年より休載となっていて、これも本当に楽しみにしている作品の一つです。

こちらもずっと待ち続けてます・・・。



  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*