感想・要約『他者を感じる社会学 差別から考える:好井裕明』誰しもが当事者になりうる

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差別とは・・・。

『他者を感じる社会学 差別から考える』

日本の社会学者である好井裕明さんによる著作で、ちくまプリマー新書より2020年11月5日に刊行されました。

日常に無意識的にも存在してしまう『差別』という事象において、大学での授業や実体験も交えながら書かれた本です。

2020年に入ってからの新型コロナウイルスに関する言及もあり、さまざまな角度から差別につて論いられている内容となっています。

内容紹介

この本の内容
誰かを気にいらないと感じるのはなぜ?他者を理解しよう、つながろうとするときに生じる摩擦熱の正体。

この本の目次
第1章 差別とはどんな行為か
第2章 差別を考える二つの基本
第3章 カテゴリー化という問題―他者理解の「歪み」を考える
第4章 人間に序列はつけられるのだろうか
第5章 ジェンダーと多様な性
第6章 障害から日常を見直す
第7章 異なる人種・民族という存在
第8章 外見がもつ“危うさ”
第9章 差別を考えることの“魅力”

https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480683878/

差別について書かれた本

『他者を感じる社会学 差別から考える』読みました。

この本の著者である好井さんは、僕の大学の社会学の教授をやっていたこともあり、授業をいくつか受けたこともあり、内容も興味があったので購入して読みました。

大学の授業でも、差別に関することをやっていて、その頃から通底している問題意識のようなものが感じられる本です。



この本は、さまざまな角度から『差別』というものに対して書かれています。

いかにして差別が生まれてしまうのか。そして、それをどのように理解し、どのように対応していくべきなのかということまで色々なことが書かれています。

難しい用語などはほとんど登場せず、本文で出てくる映画などの作品も割と知っている人も多いようなものも多く、読みやすい本となっています。

差別を理解するとは

この本では、差別というものを本質的に理解することがいかに難しいかということが書かれています。

本書を読んだとしても差別を理解したということには決してならず、いかにそれが難しいかということを知ることとなると思います。



それは差別がいかに複雑でありながら日常的に存在しているものなのかということでもあると思います。

黒人に対する人種差別などという大きな問題としてではなく、差別は実はすごく日常的なところにも存在しています。



そして、それは必ず人との関係性の中に存在しています。

人との関係はどうしても避けることはできないものでもあるが故に、差別は生まれてしまうものでもあるのです。

誰でも差別をしてしまう可能性

本書では、誰しもが差別をする当事者になってしまう可能性があるということが書かれています。

これは本当にそうだなと納得してしまう部分でした。



性別による差別や、人種による差別。障害者に対する差別や、古くから残る身分に対する差別など、さまざまなところに差別は存在します。

性別や人種なんかは個々人の努力ではどうすることもできず誰しもが持っている属性です。

そうである限り、誰しも差別の加害者もしくは被害者となる可能性があるのです。



そして、差別の問題は、加害者の側からは分からないことも多いです。

差別をしていないと思っていたとしても、そう思うこと自体が差別だというようなこともあるのです。

『普通』とは何か

好井さんは『「あたりまえ」を疑う社会学』いう本も書かれています。

2006年に刊行されている本で、この本は大学時代に授業で使うこともあり読んだ本でした。

これは社会学に対する質的調査について書かれている本であり、題名の通り「あたりまえ」とは何かということについての本です。

『他者を感じる社会学 差別から考える』でもそのようなことが繰り返し書かれていて、『普通』とは何かということ、そしてそれを理解することがいかに難しいかが書かれています。



『普通』とは何なのでしょうか?

それは本当に定義することの難しい問題で、不可能なのではないかとも思えることでもあります。

自分の持っている『普通』という感覚も他者からしたら決してそうではないこともあり、そこに差別の火種は存在しています。

それぞれの持っている『普通』と『普通』の間に差別は生まれてしまうものでもあるのです。

『フリークス』

非常に読みやすいながらも、扱っている問題はとても深く、センシティブな問題です。

劇中では『ズートピア』や『聲の形』なんかの映画の話もいくつか出てきていて、『フリークス』という映画についても語られています。



この映画は大学の時授業で見たはずだったのですが、詳しい内容は覚えておらず近いうちに見直そうかと思っています。

古い映画ではあるのですが、今にも通ずる話となっている映画で、差別という問題に対する知見を得られるような内容となっている作品です。



そして、本書ではまさに今世界中が渦中となっている新型コロナウイルスに対する記述もありました。

アジア人だというだけで感染者と思われてしまったり、人は不安を感じてる時に誰かを差別することで安心したいと思う。ということが書かれていて、まさにそうだなと思いました。

誰もどうなるか分からない不安感や弱さの中で差別は生まれてしまうのです。

だからこそ、そういうことを人間はしてしまうのだということを『知っている』ことは、差別をするしないということとは別のところで重要なことでもあるなと思いました。


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