感想・解説『ラッシュライフ:伊坂幸太郎』映画化もされている2作目長編

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伊坂さんの2作目となる小説です。

『ラッシュライフ』

日本の小説家伊坂幸太郎さんによる書き下ろし小説で、2002年に新潮ミステリー倶楽部より単行本が、2005年には新潮文庫より文庫版が刊行されています。

『オーデュボンの祈り』に続く、伊坂幸太郎さんの2作目となる作品で、作家として注目されることとなった作品となっています。



2009年には東京藝術大学の学生たちによって映画化されたものが公開されています。

堺雅人さんや寺島しのぶさん、柄本佑さん、板尾創路さんなどが出演しています。

story

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。

並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

https://www.shinchosha.co.jp/book/125022/

2作目となる長編小説

『ラッシュライフ』は伊坂幸太郎さんの2作目となる長編小説となっています。

初出は2002年となっていて、僕が読んだのは2005年に刊行されている新潮文庫版でした。



初めて読んだのは中学生だった頃で、当時伊坂幸太郎さんの小説にハマっていて、片っ端から作品を読み漁っていました。

伊坂幸太郎さんの小説といえば、いくつかの物語が並行して語られていき、次第にある一点に向けて収束していくというような話が多いです。(最近は必ずしもそうではない気もします)



特に初期の作品はそのような作品が多く、当初から作家性のようなものがほぼ固まっていたのかと思うと、流石だな・・・という感じです。

4つの物語が

『ラッシュライフ』では4つの物語が並行して語られていきます。

そして、中心となる出来事はあるバラバラ殺人事件です。



並行して進んでいく話がちょっとずつ関わっていき、次第に収束していきラストへと繋がっていくという、伊坂さんの真骨頂のような小説です。

伏線というか、それぞれの話の関わりが少しずつ示されていき、あるところで気がついた時って何であんなに気持ちいいんだろうなーと思うような小説な気がします。



そして、それってまさに小説でしか生み出すことのできない快楽でもあるような気もしています。

読者は自分の頭の中で、与えられた情報だけを頼りに絵を描いていくのですが、それがある地点でつながっていきます。

それは、頭の中で起こるアハ体験のようなものです。



映画でも似たようなことはできるかもしれませんが、映画ではやっぱり絵が固定化されてしまいます。

登場人物の顔は一つしかありませんし、さらに時間的な支配権も作り手側にあるのが映画です。



小説はそこも自分でコントロールすることができて、自分のペースで読み進めることができますし、分からないところがあれば振り返ることもできます。

いい作家さんはそこを上手く使っている人が多いです。



他の媒体で語り直した時に、著しく魅力が損なわれてしまう感じというか、小説でしかできないことをしっかりとやっているのです。

他の作品との

そして、伊坂さんの作品の特徴といえば、作品の登場人物が別の作品にも出てきたりします。

『ラッシュライフ』に登場する黒澤という人物は他の作品にも登場しますし、『オーデュボンの祈り』に登場した喋る案山子の話も途中出てきたりして。



この辺りもファンとしては嬉しいところだったりもします。

それでいて、その作品の中心的な部分は決して犯さない登場の仕方でもあるので、クスッと微笑んでしまうような感じです。



伊坂さんの本はこの先の作品もほとんど読んでいるのですが、やっぱりどれもクオリティ高いな・・・という小説が多いです。

いわゆる”普通の読者”が楽しめるような娯楽小説というような感じでありながら、読み終えた後は不思議な爽快感?のような読後感を持ったりします。

さすが第一線で長いこと人気を獲得している作家さんだなーという感じです。



『ラッシュライフ』は映画も観ました。

観たのは結構前のことで、どんな雰囲気だったかはうろ覚えなのですが、なかなかいい味の映画だった気がします。



映画は東京藝術大学の人たちが制作したそうなのですが、映画監督である真利子哲也さんも参加していたとは・・・

この方は『ディストラクション・ベイビーズ』という映画など、注目されている映画監督さんでもあります。

この人の映画も結構好きで、いろいろと観ていきたいなと思っています・・・。

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