
イーストウッド監督映画の原作本です。
『アメリカン・スナイパー』
アメリカ軍の狙撃手として名を馳せたクリス・カイルさんによる自伝本で、2012年に刊行されました。
日本語訳版としては2015年に早川書房より刊行されており、今回はそれを読みました。
原題は『American Sniper: The Autobiography of the Most Lethal Sniper in U.S. Military History』。
2014年には本書を原作としてクリント・イーストウッド監督にて映画化されています。
アカデミー賞にもノミネートされている作品で、アメリカの戦争映画としては歴代最高となる興行収入となっている映画です。
内容紹介
アメリカ海軍特殊部隊SEAL所属の狙撃手クリス・カイル。彼はイラク戦争に四度にわたり従軍して、160人の敵を仕留めた。これは米軍史上、狙撃成功の最高記録である。守られた味方からは「伝説(レジェンド)」と尊敬され、敵軍からは「悪魔」と恐れられたカイルは、はたして英雄なのか? 殺人者なのか? 本書は、そのカイルが、みずからの歩みと戦争や家族に対する想いを綴る真実の記録である。クリント・イーストウッド監督映画原作
https://booklive.jp/product/index/title_id/302848/vol_no/001
映画の原作本
『アメリカン・スナイパー』を読みました。
この本は、クリント・イーストウッドさんによる監督作である同名映画の原作となっている本です。
映画で描かれていたアメリカの伝説的スナイパー、クリス・カイルさんによる自伝となる本となっています。
発売当初アメリカでは結構話題となった本でもあるそうで、日本でも2015年早川書房より翻訳版が刊行されています。
イーストウッド監督の映画では、彼がスナイパーとして活躍しながらも、家族との関係や、自分の正しさなどに苦悩するという部分が描かれていました。
この本でもまさにその部分が主題となっていて、映画をより詳しく知りたいという人にはうってつけの本だと思います。(自分もそうでした)
主観的な
この本はクリス・カイルさんが自ら書いた本ということもあり、かなり主観的な内容となっています。
戦争に対する考え方や、スナイパーとして人を殺すということに関しても”ある意味”では偏った言葉が書かれていたりもします。
そこに対し、否定的なことを感じる人もいるかもしれません。
しかし、僕はそうは思いませんでした。
むしろそういう部分こそが本として書かれるべきであり、読まれるべき部分でもあると思うからです。
クリスさんは『戦争を愛している』、『人を殺すことによって仲間の命が助かる』というようなことを本書の中で言っています。
客観的に見て、戦争はいけないことだ、人殺しはいけないことだということは簡単ですが、果たしてその言葉にどれだけの意味とリアリティがあるでしょうか。
正論とリアル
クリスさんの行いに対して、善悪の判断をすることや、正しさを主張することもできるでしょう。
しかし、それは戦争を知らない人間の言うことなのだということがこの本を読むと分かります。
戦争は常に自分や仲間がいつ死んでもおかしくない状況が続きます。
ちょっとした判断の間違いや、事故によって簡単に命を落としてしまうのです。
そういう場所で自分や仲間の命を守るための殺人を全面的に否定することは、極めて浅はかなことでもあるようにも思えてくるのです。
クリスさんの言葉は、アメリカの兵士としての視点で語られるものです。
戦争には相手がいて、その相手が読むと全く別のことを思うのでしょうが、アメリカ軍の兵士としての正しさとは何かをすごく考えさせられる気がしました。
家族との関係
そして、映画でも描かれていましたが、この本でも重要な意味を持っているのがクリスと家族との関係です。
クリスにはタヤという妻がいて子供がいます。
タヤは彼が戦地へは行かないことを願いながらも、結局は行ってしまうことに苛立っています。
生まれたばかりの子供を置いて、死ぬかもしれない場所へ行くなんて、奥さんからしたら信じられないことでしょう。
その心情も、彼女の言葉としてこの本には掲載されています。
所々文字のフォントを変えて登場する彼女の言葉はとても深く、重く、それでも戦地へと赴くクリスとは・・・と。
映画とセットで読むと
読んでいて素直に楽しめるような本ではありませんでした。
しかし、このような本こそ残しておくべき本でもあり、多くの人が読むべきものでもあるのかもしれないなとも思いました。
戦争というものは、日本で普通に暮らしていればあまりリアリティのないものかもしれません。
しかし、イラク戦争が起きていたのは2000年代のことです。
そう考えると決して遠く離れている出来事ではないのではないでしょうか。
戦争は決してと追うないところに影を潜めている現実でもあるのです。
この本は映画とセットで読むことをお勧めします。
二つの媒体から受け取る色々な情報は、少し異なる世界の見え方を提供してくれるはずです。