感想・解説『劇場』表現というものの可能性

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又吉直樹さん原作の映画です。

『劇場』

お笑い芸人ピースの又吉直樹さんによる同名小説を原作とする映画で、2020年7月17日に劇場公開されるとともに、同日Amazonプライム・ビデオでの配信も開始されました。



監督は行定勲さんで、主演は山崎賢人さんと松岡茉優さん。

他、寛一郎さん、伊藤沙莉さん、King Gnuの井口理さんなどが出演しています。



当初2020年4月に公開が予定されていたのですが、新型コロナウイルス の感染拡大に伴い公開が延期されました。

公開時期は未定となっていたのですが、配給も吉本興業に変わり公開日が決定。

実写映画が劇場公開とともに配信もされるのは初めてのこととなっています。

story

高校からの友人と立ち上げた劇団「おろか」で脚本家兼演出家を担う永田(山﨑)。しかし、前衛的な作風は上演ごとに酷評され、客足も伸びず、劇団員も永田を見放してしまう。

解散状態の劇団という現実と、演劇に対する理想のはざまで悩む永田は、言いようのない孤独を感じていた。

そんなある日、永田は街で、自分と同じスニーカーを履いている沙希(松岡)を見かけ声をかける。

自分でも驚くほどの積極性で初めて見知らぬ人に声をかける永田。
突然の出来事に沙希は戸惑うが、様子がおかしい永田が放っておけなく一緒に喫茶店に入る。

女優になる夢を抱き上京し、服飾の学校に通っている学生・沙希と永田の恋はこうして始まった。

https://gekijyo-movie.com/story/

又吉さん原作の

映画『劇場』観ました。

映画館でも公開されているのですが、同時にAmazonプライム・ビデオでも配信がされていて、そちらで観ました。



『劇場』は又吉さんの小説を原作とした映画で、原作も半年前くらいに読んでいました。

この小説は、発売されたのは『火花』より遅かったものの、執筆されたのは先だそうで、実質1作目となる作品とも言える作品でもあります。



主演は山崎賢人さんと松岡茉優さんとなっていて、二人とも相当実力と人気のある俳優さんです。

夢を追いながら

山崎賢人さんが演じている永田という人物は、劇団を立ち上げながらもなかなか日の目を見ずにいる男です。

そんな彼は偶然沙希という女性と出会います。



靴が同じということがきっかけで声をかけ、コーヒーを奢ってもらったことをきっかけに交流が始まります。

そして二人は一緒に暮らし始めていくのですが、時が流れ次第に二人の関係性が変わっていきます。



この映画は夢と現実、そして時間の不可逆性を描いている作品だなと思います。

そして最後には演劇を通して、表現するということが持っている可能性のようなものを提示するような形にもなっていて、ラストは結構ズシンとくるものがありました・・・。



原作とは少し異なるラストともなってはいるのですが、これぞ映画でしかできないようなラストとも言えるものとなっていて、泣いてしまいました・・・。

時間とともに変わったのは自分

時間の経過とともに二人の関係性は少しずつ変わっていきます。

映画の終盤、沙希はこんなことを口にします。



『あなたは変わっていない。私が歳をとって変わっただけ。』

そして、沙希は時間とともに変わっていく自分のことが嫌いになっていく。というようなことを口にするのです。



これってすごく繊細でありながら、リアルな感じだな・・・というようなシーンです。

見ていても、永田は最初から変わっていません。



永田は最初から不安定で、ちょっとクズのようなところもあるような男です。

それでも演劇と向き合おうとしていて、なんとか自分の才能を信じている男です。



本当は才能がないのだという現実を本当は知りながらも、沙希の前ではそれを見せずに取り繕うとしているのです。

演劇の可能性

『火花』でもそうでしたが又吉さんの小説には、世界とか社会とかにどこか居場所を見出せずにいる不器用な人物が登場します。

そして、その人物は自己表現を伴う何かと向き合っていて、ラストにその表現媒体を通して本音を吐露する場面が描かれます。



『火花』であればそれが漫才、『劇場』ではそれが演劇となっています。

ラストに永田と沙希が二人で話をするシーンがあるのですが、そこで永田が演劇の可能性について話す長台詞があります。



これこそまさに永田が信じ続けて来たものでもあり、又吉さんが信じているものでもあるのではないでしょうか。

『漫才』と『演劇』と『小説』とそれぞれ違いはありますが、何かを表現するものであるという点では共通しています。



そういうものが持っている無限の可能性について語るシーンで、ここはいいシーンです。

ラストの演出は・・・

そこから場面は変わり、ラストは永田が演じている舞台のシーンへと移ります。

おそらくですが、永田は過去の自分のことを演劇にして、それを演じているのです。



そして、そこに沙希も見に来ています。

客席に沙希がいることに気がついた永田は、脚本を変えたのかは分かりませんが、あることをして舞台を終えます。



このラストシーン何かに似ているなーと思っていたら、『LALALAND』のラストにちょっと似ています。

あの映画も夢を追いかけていた二人に別れが訪れ、最後に不意に再開するという映画でした。



このラストはどちらも感動的で、舞台にいる側は内心動揺しながらも、普通通りに舞台を続けます。

そして、最後には笑顔があって、めっちゃ感動的で、個人的にも大好きなラストです・・・。

いい映画だなーと。

人によってはあんないい彼女がいながら、ずっとだらだらしている永田に共感できないという人もいるかもしれません・・・。

個人的には夢を追う気持ちもわかりますし、すごくいい映画だなーと思いました。



何かを創作することを志したことのある人であれば、結構ズシンとくる作品だなと思いました。

演劇チックに描かれるラストもめっちゃい感じです。

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