感想・要約『シャーデンフロイデ 人の不幸を喜ぶ私たちの闇』不幸は蜜の味とはこういうことです・・・

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

すごーく面白い本でした。

『シャーデンフロイデ 人の不幸を喜ぶ私たちの闇』

ケンタッキー大学教授であるリチャード・H・スミスさんによる著作です。

澤田匡人さんによる翻訳で勁草書房より2018年1月に刊行されました。

ドイツ語である『シャーデンフロイデ』は害と喜びという意味で、人が他者に対して抱く嫉妬や喜び、安堵などという感情をテーマとした本となっています。

内容紹介

害と喜びを意味するドイツ語からなる「シャーデンフロイデ」は、「人の不幸は蜜の味」という表現で私たちにも馴染み深い感情である。

成功者や有名人の失敗に歓喜し、自分を虐げる者の不幸に快哉を叫ぶ、その心理に迫る。

うらやみ、焦がれ、あざ笑い、安堵する――シャーデンフロイデがはびこる時代を生きる私たち人間の闇を照らし出す。

http://www.keisoshobo.co.jp/book/b341345.html

比較し、抱く自然な感情

『シャーデンフロイデ 人の不幸を喜ぶ私たちの闇』という本読みました。

最初に全て読んだ感想から言うと、難しいテーマを極めて客観的に、冷静に扱っているすごくいい本です。



そして、単純に読み物としてめっちゃ面白い本でした。

この本では『シャーデンフロイデ』と言う、他人の不幸に対して嬉しいと感じたり、安心感を感じたりする感情のことを扱っています。



それは決して良い感情ではないかもしれないのですが、人が自然に抱いてしまう感情でもあります。

こ本ではそんなテーマのことを良い悪いと言う決めつけるような判断はすることなく、一定の距離を取りながら冷静に見据えています。



新しい視点を授けてくれるようなそんな本です。

他人の不幸は蜜の味

シャーデンフロイデには日本語には適した直訳がないと言います。

あてはめるのであれば、他人の不幸を喜ぶという意味で『他人の不幸は蜜の味』ということわざが適しているかもしれません。



どのような感情なのかは本を読めば詳しく書かれているのですが、シャーデンフロイデは他人に対する妬むなどの感情に起因する憎しみなどのことです。



例えば同じ大学を目指しているライバルがいるとします。

二人とも必死に勉強したにも関わらず、一人は合格し、一人は不合格となってしまいました。

一人は努力により目指していたものが手に入り、もう一人は手に入りませんでした。



こういう時、不合格だった人は、合格した人に対して羨ましく思うとともに、憎しみに近い感情を抱いてしまうでしょう。

しかし、合格した方が大学に馴染むことができず、病気にかかり半年で中退したことを知ったとします。

不合格だった方は、それが友人であれば心配するかもしれませんが、喜びに近い感情を抱きます。



自分が手にできなかったものを手にしている人が直面している不幸を知った時、安堵感を感じるのです。

それこそがシャーデンフロイデです。

他者の不幸に対して抱く喜びや安堵感がそれなのです。

どう向き合うべき?

決していい感情ではないように思えるシャーデンフロイデなのですが、著者はそこに対しては決して批判的なジャッジをしてはいません。

このような感情は極めて自然なものであり、無くすことは難しい感情でもあるからです。



無理に消そうとしたり、目を背け続けたりする努力は逆にどこかで歪みを生んでしまいかねないのです。

私たちにできることは、まずこういう感情があるのだということを知ること、そして、適切な距離感を取りながらうまく付き合うことです。



この『適切な』という部分が重要で、本書の中には明らかに『適切ではない』ナチスの例も挙げられていて、行き過ぎたシャーデンフロイデが人をおかしくしてしまう様子も書かれていたりもします。

だからこそ、この『適切な』という部分がとても重要なのです。

この現代果たしてどうなんだろう・・・

世の中を見ていると、果たしてその『適切な』距離感を保つことができているのだろうか・・・と思う事もあります。

実際に、有名人や成功者が何かしらの失敗をしたり、スキャンダルが出ると、世間は一気にそこに食いつきます。

それは、そういうニュースを欲している需要があるからだということでもあります。



そして普及したネットやSNSがそれを加速させます。

自分の持っている黒い感情を持っている人がたくさんいる事も知ることができます。

そこにはある種の結束感のようなものも生まれてしまうのです。



その辺りも、『適度な』ものであればいいと思うのですが、それがきっかけとなって自殺してしまったりしている人もいるのかと思うと、どうなのかな・・・と思ってしまう部分もあります。

難しいところですけどね。



それでも、そういう感情があるのだということを知り、なぜそう感じるのかを知っているということは、すごく重要なことのような気もします。

そういう意味でこの本はたくさんの人が読むべき本なのかなと思いました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*