
気になって読んでみた本です。
『ヒーローを待っていても世界は変わらない』
社会活動家であり、元法政大学教授でもある湯浅誠さんによる著作です。
2012年に朝日新聞出版より単行本が刊行され、さらに補論を追記した文庫版が2015年に刊行されています。
民主主義について書かれた本で、自身の体験も交えながら日本の様々な問題について書かれている本です。
内容紹介
「反貧困」を掲げ、格差社会に異議を申し立てた著者渾身の民主主義論。議会政治とは非効率的なシステムでありつつも擁護すべきとの立場から「おまかせ民主主義」「強いリーダーシップ待望論」に警鐘を鳴らす。
https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=16710
文庫化にあたり補章を追加。なぜ私たちは政治家に失望するのか。そして、なぜ私たちは主権者なのに主権者でないように振る舞うのか。「一強」「暴走」という言葉が目立つ現在の政治状況だからこそ、読みたい一冊。
民主主義とは
湯浅誠さんによる著作である『ヒーローを待っていても世界は変わらない』という本読みました。
湯浅さんは元大学教授でもある社会活動家として活動されている方です。
そして、数年前に話題となった年越し派遣村の村長でもあるとのことです。
湯浅さんは、格差や貧困などという問題意識を強く持っている方で、そんな著者による民主主義論が書かれているのが本書となります。
数年前に
タイトルが気になって読んでみたのですが、当初の発売は2012年と、今となっては8年前のこととなります。
補論を加えた文庫版が刊行されたのも2015年と、5年前のこととなります。
この本が刊行されてから、結構な時間が流れているのですが、読んでいて内容は今にも重要なことがたくさんあるような気がしました。
むしろ、今こそ読むべき本かもしれないなとも思いました。
2020年の今、世界的にコロナウイルスの蔓延が続いています。
いまだワクチンは開発されず、接触を避けることによる押さえ込みしかできていないのが現状です。
そして、働き方や、生活様式などを根本的に見直さなければならない状況ともなっています。
テレワークを推奨したり、人との距離を取るようにししたりということをやらざるを得ないこととなっているのです。
避けてきたこと
それは、ある部分においてはいつかやらなければと感じながらも直面することを避けてきたことでもあるかもしれません。
働き方改革と言いながら、実際にどれだけの企業がそれに取り組み、何かを変えるということをしたでしょうか。
多くの人がどこか向き合うことを避けてきたのではないでしょうか。
コロナウイルスによって、今まで見えていなかった様々な問題が表面化している部分があります。
世界的なパンデミックという大きな物語は、人々の小さな物語に大きな影響を与えています。
問題について考える余裕がない
この本においてすごく印象的だったのは、本当に問題を抱えている人たちは、その問題について考える余裕がないということが書かれている部分です。
貧困という問題を取り上げてみても、それは全てが個人の努力不足に起因するものではありません。
構造的な不備や、システム的な問題を抱えていることもあります。
しかし、貧困に喘ぎ、今日明日の生活をどうするかを考えざるを得ない人たちがそのような問題と向き合うことは極めて難しいと言います。
言われてみればその通りで、明日の生活がまなならない人がシステムのことを考える余裕が果たしてあるでしょうか?
他にも色々と
この本では他にも様々なことを取り上げ、貧困や民主主義について書かれています。
自殺に関することも書かれていて、自殺者遺族の罪の意識のことを『サバイバーズ・ギルト』といういうんだなということも知りませんでした。
一貫している言われていることは、タイトルにもある通り、ヒーローを待っていても世界は変わらない。一人一人が当事者意識を持つことが民主主義の本質だということです。
民主主義というシステムを取っていながらも、ほとんどの人は自分はその当事者ではないかのような振る舞いをします。
そして、代表として選ばれた人の不祥事などを糾弾したりしているのが現状なのです。
言葉で言っても実際は難しいことでもあると思いました。
しかし、一人一人が少しずつでも意識を変えることで、世の中は確実に変わるはずだとも思います。
それこそが民主主義の力でもあるからです。
刊行から時間が経っている本でしたが読み応えのある本だなと思いました。
作家のあさのあつこさんによる解説も熱いです。