
少し変な本かもしれません。
『街場の親子論 父と娘の困難なものがたり』
思想家であり、武道家である内田樹さんと、詩人である娘の内田るんによる著作です。
親子二人の往復書簡という形式で書かれている本で、手紙による22のやりとりが掲載されています。
内容紹介
わが子への怯え、親への嫌悪。誰もが感じたことがある「親子の困難」に対し、名文家・内田樹さんが原因を解きほぐし、解決のヒントを提示します。
https://www.chuko.co.jp/laclef/2020/06/150690.html
それにしても、親子はむずかしい。その謎に答えるため、1年かけて内田親子は往復書簡を交わします。
「お父さん自身の“家族”への愛憎や思い出を文字に残したい」「るんちゃんに、心の奥に秘めていたことを語ります」。
微妙に噛み合っていないが、ところどころで弾ける父娘が往復書簡をとおして、見つけた「もの」とは? 笑みがこぼれ、胸にしみるファミリーヒストリー。
絶妙に噛み合っていない
『街場の親子論』という本を読みました。
内田樹さんは『街場の〇〇論』という本を他にもいくつか出版されています。
それぞれに直接的なシリーズ性はないのですが、同じ著者というだけあって内容において関連する部分や、重なっている部分は多々あります。
そんな街場のシリーズの一つとして出版されたのがこの『街場の親子論』となります。
読むまではどんな本か分からず買ったのですが、これはそれまでのシリーズとは異なる本でした。
そして、ちょっと特殊な本でもありました。
娘のるんさん
この本にはもう一人の著者がいます。
表紙にも名前が書かれていて、内田るんさんって誰なんだろう?と思っていましたが、その謎はすぐに解けました。
内田るんさんは内田樹さんの実の娘さんです。
彼女自身は詩人やバンドをやっていたりと活動をしている方です。
この本はそんな娘と父親とのやりとりの本なのです。
実際に親子で手紙のやり取りを行い、それを書籍としてまとめたのがこの『街場の親子論』なのです。
主観的な
親子でどれだけの時間しっかりと話をしたことがあるでしょうか。
自分自身振り返ってみても、そこまで深い話をしたことはないような気がします。
親と子という関係性は、絶対に切り離すことができないものです。
物理的に縁を切ることはできるかもしれませんが、自分を産んでくれた二人の親との関係性は絶対に切れないものです。
だからこそ良いこともあれば、だからこそ厄介なこともあるのが人間というものなのです。
家族だから言えること、知っていることもあれば、家族だから言えないこと、知られたくないことがあるのです。
この本ではそんな親娘二人の主観的な語りが交互に書かれています。
中には二人しか知らないようなこともあったりして、これをなぜ本として出版する必要があったんだ・・・?ともちょっと思ったりもしました。
不器用な二人
おそらく、内田樹さんと内田るんさんの二人は、結構不器用でシャイな人なのかもしれません。
仕事として人と関わったりすることや、本質的に深くない人とは上手く接することができても、身内だからこそ難しい何かがあるのだろうと思いました。
だからこそ、こういう出版を前提とされた手紙による往復書簡という形になったのかもしれません。
本来二人だけでやればいいことを、二人だけでもできることをあえてそうしたのかもしれないなと思いました。
第三者に見せることが前提となっているからこそ言える本音というのがあるのかもしれません。
内田樹さんの文章は個人的にとても好きです。
世の中にある難しい事柄を分かりやすく説明することが本当にうまいなと何度思ったことか・・・。
でも、『街場の親子論』はちょっと違っています。
個人的な主観的なことが書かれていて、凄く人間的な文章でもあります。
あまり読んだことのない内田樹さんの文章で、凄く新鮮だな〜という感じでした。
読みやすく、自分を振り返ることに
文章は読みやすく、そこまで分量も多くない本でした。
多くの人は内田さん親子とは無関係の他人であることがほとんどだと思います。
しかし、こういう本は自分自身のことや、自分の親子関係を振り返るきっかけにもなったりします。
この現代に手紙でのやり取りという形式を取ることも、ある意味では凄く重要なことなのかもしれません。