感想・要約『人はなぜ他人を許せないのか:中野信子』客観的に自分を知れる手がかりとなります

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面白そうだなと思い購入。
さらっと読めて面白い内容でした。

『人はなぜ他人を許せないのか』

日本の脳科学者であり、医学博士でもある中野信子さんによる著作で、アスコムより2020年1月に刊行されました。

人々が他人に対して抱く『許せない』という感情に焦点を当て、なぜそう思うってしまうのかということに関して書かれている本となっています。

内容紹介

人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人など、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。

この快楽にはまってしまうと、簡単には抜け出せなくなり、罰する対象を常に探し求め、決して人を許せないようになってしまいます。

著者は、この状態を正義に溺れてしまった中毒状態、「正義中毒」と呼んでいます。
これは、脳に備わっている仕組みであるため、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです。

他人の過ちを糾弾し、ひとときの快楽を得られたとしても、日々誰かの言動にイライラし、必要以上の怒りや憎しみを感じながら生きるのは、苦しいことです。

本書では、「人を許せない」という感情がどのように生まれるのか、その発露の仕組みを脳科学の観点から解き明かしていきます。

「なぜ私は、私の脳は、許せないと思ってしまうのか」を知ることにより、自分や自分と異なる他者を理解し、心穏やかに生きるヒントを探っていきます。

https://www.ascom-inc.jp/books/detail/978-4-7762-1026-9.html

客観的で説得力ある

『人はなぜ他人を許せないのか』読みました。

テレビにもよく出ている脳科学者の中野信子さんによる著作で、半年ほど前に発売されたものです。



本屋をぶらぶら歩いていて、面白そうだなと思って手に取って買いました。

この人の本は結構好きで、本当は結構難しいことを、分かりやすく噛み砕いて読みやすい文章で書かれている気がします。

きっとそれって簡単なことではなくて、自分と異なる人に何かを伝えることに長けている人だなーと思います。



そして、この本を読んでいて思ったのですが、中野さんの文章には主観的な善悪の判断みたいなものがほとんどないような気がします。

例えば、「日本人はこうである」という部分がこの本の中にもありますが、そこには「だから悪い」「だから良い」というジャッジするという姿勢がありません。



すごく客観的に歴史的な事実も交えながら、あくまで「なぜそうなのか」という部分に焦点を当てています。

だからこそ、この人の本にはすごく説得力があるのかもしれないなと思いました。

なぜ人を許せないか

この本はタイトルの通り、人が他人に対して抱く感情について書かれている本です。

それは近い人だけでなく、有名人のスキャンダルなど広い意味での他者に対してなぜ人は怒りの感情を抱くのかということが書かれています。



特に日本人は内と外とを分けて考えてしまいがちで、内の人には甘くなる一方で、外の人には排他的な態度を取りがちです。

これは社会人として働き始めてから本当に実感してきたことでもありました。



内と外を分けてしまうことは、ある意味では組織の存続と平穏のために必要なことでもあるのです。

これは本当に日本人的な特性でもあって、島国だという地理的な条件から育まれたものでもあるのです。

どうするべきか

本文にもあるように、この本はどうするべきかという解決法を示してくれているわけではありません。



でも、世の中において、根本的に解決ができる事柄が一体どれだけあるでしょうか。

難しく、複雑なことを扱っていればいるほど、解決は難しくなっていきます。



中野さんが扱っている脳なんて、その際たるものではないかと思います。

脳なんて未だ誰も解明できていない部分がたくさんあるはずで、だからこそ面白いものでもあるのだと思います。



この本で扱われていることに関しても、完璧や絶対ということは決してあり得ません。

しかし、最善を尽くした上でよりよく生きていくことはできるはずです。



本文にあるように、異なっていることはどうすることもできないことです。

だからといって異なっていることを否定するのはまた違うことです。

異なっていることを当然のものとして、少しでも理解しようと歩み寄ることこそが重要なのだと思います。



今リアルタイムで世界的に黒人差別のデモが行われています。

これもまさになぜ人は他人を許せないのか。だと思います。



このデモがどのような方向性へ向かっていくのかは分かりません。

言葉だけで、やめた方がいいということは簡単かもしれませんが、これもまた歴史的な文脈の上に怒っていることでもあります。

それこそシンプルではなく、すごーく複雑なものなのです・・・。

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