
読みやすく、面白い本でした。
『哲学の先生と人生の話をしよう』
日本の哲学者であり、東京大学准教授でもある國分功一郎さんによる著作です。
2012年から2013年にかけて『メルマガ・プラネッツ』にて連載されていた人生相談をまとめて、加筆・修正したものとなっています。
2013年に朝日新聞出版より単行本が発売。その後、朝日文庫より2020年4月に刊行されています。
全部で3つの章に分かれていて、全34の相談と、著者によるアドバイスが書かれています。
内容紹介
自分に嘘をつくってどういうこと? 悪人のレッテルを貼られて困っている。先が見えず不安。自信を持つにはどうしたらいい?……ささやかな悩みから深刻な問題まで、「哲学は人生論である」が持論の気鋭の哲学者が34の相談に答える。《解説・千葉雅也》
https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=21867
哲学者による人生相談
『哲学の先生と人生の話をしよう』読みました。
この本はもともとは2013年に発売されていた本を文庫として刊行されたものです。
著者は現在は東京大学の准教授である國分功一郎さんという方で、哲学を専門としている方です。
この人のことはなんとなく知ってはいたのですが、著作を読むこと初めてでした。
これはタイトルの通り哲学者である國分さんが、たくさんの人たちの人生相談に答えているものをまとめたものとなっています。
テーマは様々で・・・
寄せられている相談は様々なものがあります。
学生によるものもあれば、離婚をした後の中年の大人のものもあったりします。
そして、内容は結構重いものが多いな・・・という印象でした。
もともとはメルマガで連載されていたもので、宇野常寛さんが編集していたメルマガです。
おそらく、このメルマガを読んでいる人であればある程度の知性を備えている人であるのだろうと思います。
そして、國分さんのことも知っている上でガチの相談を寄せているな・・・という印象です。
少し背伸びしているというか、自分を頭よく見せようというような相談もあるような気がしましたが、その辺りも回答も含めて読んでいて面白かったです。
回答は一つ上から
この本は相談者の相談内容と、それに対する回答というかアドバイスが書かれているのですが、國分さんの回答すごいな・・・と思うところがかなりありました。
あとがきにも書かれているように、國分さんは相談者の書いた文章に『書かれていないことにこそ本音が宿っている』と言っています。
人が文章を書けば、そこには必ず書いた人の自意識や、人間性が多かれ少なかれ出てきてしまいます。
そして、意図的に『何かを書いていない』ということもあります。
そこにこそ書き手の本音は表われるというのです。
書かれていないことこそが重要で、そこに宿る本音を突き止めるところから始めているのです。
國分さんの回答は相談者たちのガチの相談に対して、ガチの回答がされています。
相談者の人生に影響を与えうることを自覚した上で言葉を選び、ガチのアドバイスをしているなという印象を受けました。
相談者たちのその後を知る術はありませんが、絶対に何かしらの影響を与えているような気がするような内容となっていました。
信頼できる誰かと話すこと
そして、いくつかの相談の回答に繰り返し言われていたのが、相談できる誰かと話をしてみてくださいということです。
一人で考えていると、ロクなところへは行き着かず、絶対に誰かと話をすることを勧めています。
本質的な意味での『自立』とは人に頼ることなく一人で生きていけるということではなく、適切に誰かを頼り、依存し合うことだというのです。
これは一貫して思っている國分さんの思想なんだろうなと思いながら読んでいました。
そして、これは僕が最近よく考えていたことでもありました。
別の本でも読みましたが、他人に迷惑をかけないようにというという決意や生き方は危険で、本質的に脆かったりもします。
そうではなく、人は生きているだけで人に迷惑を掛け合っているとも言えるので、お互い適度に迷惑をかけ合い、頼りながら生きていくことの方がよっぽど大切だったりするのです。
簡単にできることではないかもしれませんけどね。
この本で扱われている相談は、自分と重なるリアルなものもあれば、そうではないものもありました。
でも、どれもその回答となっているアドバイスには考えさせられるものがありました。
面白い本でした。