
面白い本です。
個人的には読んで救われた気がしました。
『いい子に育てると犯罪者になります』
元立命館大学教授である岡本茂樹さんによる著作で、2016年3月17日に新潮新書より刊行されました。
大学での研究や教育活動の傍らで、刑務所での受刑者更生にも関わる著者による『いい子』である事の本当の意味と、危険性に関する本です。
内容紹介
意外なことに、刑務所への出入りを繰り返す累犯受刑者には「いい子」だった者が多い。
https://www.shinchosha.co.jp/book/610659/
自分の感情を素直に出さず、幼少期から無理を重ね、親の期待する役割を演じることに耐えられなくなった時、積もり積もった否定的感情が「犯罪」という形で爆発するのだ。
健全な子育ては、「いい子」を強いるのではなく「ありのままの姿」を認めることから始まる──。矯正教育の知見で「子育ての常識」をひっくり返す。
気になっていた本。
『いい子に育てると犯罪者になります』読みました。
この本の存在は書店で何度か目にしていたので知っていて、そのうち読みたいなーと思っている本の一つでした。
タイトルは結構衝撃というか、興味をそそるもので、人の思考に一石を投じるようなタイトルとなっています。
著者は元立命館大学の教授である岡本茂樹さんという人です。
岡本さんは、大学の教授としての職をこなしながら、刑務所での受刑者更生にも関わっていた方です。
ある意味で一番驚いたかもしれないのが、岡本さんはこの本が出版される前に56歳で亡くなっています。
亡くなられた後に遺族の依頼を受けて原稿を本としてまとめたものを出版したのがこの本となっています。
臨場感のある深い考察が
読み終えてみて、シンプルにすごく面白い本でした。
著者の経験と、実際にあった人物と、その手紙などが例として挙げられていて、その一つ一つがすごくリアリティがあり臨場感があります。
文章自体はとても読みやすく、200ページほどでそこまで文量も重くありません。
扱われている内容も結構身近というか、実際に犯罪者と関わった事のある人は少ないかもしれませんが、近しい感情は抱いたことあるよな・・・というようなことも結構あったりして。
すごく考えさせられる本です。
『抑圧』ではなく『感情表現』へ
本書で語られていることは、『いい子』である事の危険性についてです。
『いい子』にも様々な形があり、本書で言及される危険な『いい子』とは、幼少期に起因する何かがあり、『いい子』にならざるを得ない状況となっているケースだと言います。
そこには本当の自分の感情を『抑圧』している部分があり、それが大人になってから危険な形で噴出してしまうことがあるのです。
『いい子』であることは必ずしもいい事ではない場合があるのです。
そして、本書で本当に重要であることは正しい感情表現をしてきていて、その方法を知っていることだと言います。
それは他者に『正しく甘える』ということでもあります。
抑圧された『いい子』ではなく、正しく甘えるという『感情表現』の中にこそ健全な人間関係は宿るのです。
決して他人事ではない
この本を読み終えて、決して他人事ではないな・・・と思いました。
犯罪を犯したりということは決してないのですが、誰しも多かれ少なかれ人間関係の軋轢を抱えているものだと思います。
それが何故なのか?一体どこに真因があるのか?という事を考えさせられる本です。
本書では表層的な『固い決意』がいかに弱く、再発を防ぐ力が弱いかが繰り返し語られています。
そのような決意で終わっているような受刑者は本質的な内省ができていないことが多く、再発へと繋がってしまうことが多いと言います。
読んでいくと、確かにな・・・なるほどな・・・と思うようなことばかりが書かれていて、とてもいい本だなーと思いながら読んでいました。
実際の受刑者が書いた手紙なんかを例に出してされている深い考察は、きっとほとんどの人が何かしら思うことがあるような内容でもあると思います。
甘える事の重要性
この本を読んでみて、『正しく甘える事』がすごく重要である事を再確認させられたような気がしました。
『自分の家庭環境に問題はなかった』『自分は大丈夫だ』という認識や言葉こそが実は本質的には問題を孕んでいる可能性があるんだなーという事です。
逆に本文中にもあるように、不安を抱えていたりして、それをしっかりと自覚した上で他社と共有する事のできる人は、本当の意味で大丈夫なんだなということも書かれています。
これも本当にその通りだと思います。
本当に深いレベルでその通りだな・・・と思ってしまいました。
きっと誰しも感じることや考えさせられる事のある本だと思います。
そして、シンプルに面白い本です。