感想・要約『服従の心理』

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面白い本です。

『服従の心理』

アメリカの心理学者であるスタンレー・ミルグラムさんによる著作で、河出書房新社より刊行されています。

権威に対する服従を扱ったミルグラム実験(アイヒマン実験とも言われます)について書かれている本で、権威に対する服従の心理を科学的に検証したものとなっています。



様々な角度から権威と服従について考察がなされており、現代に至るまで社会心理学の模範となる実験ともされています。

内容紹介

ナチスのユダヤ人虐殺を筆頭に、組織に属する人はその組織の命令とあらば、通常は考えられない残酷なことをやってしまう。

権威に服従する際の人間の心理を科学的に検証するために、前代未聞の実験が行われた。通称、アイヒマン実験―本書は世界を震撼させたその衝撃の実験報告である。心理学史上に輝く名著、新訳決定版。

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784309463698

どんな実験?

『服従の心理』はミルグラム実験(アイヒマン実験)という心理実験について書かれた本です。

実験の内容は以下の通りとなっています。



①『記憶に関する実験』という名のもと、報酬を約束された上で新聞広告により参加者が集められた。

②参加者は『教師役』と『生徒役』に分けられ、実験を行うとされくじを引く。
※実際にはくじは全てが『教師役』となっていて、生徒役は実験者側のサクラ。

③部屋を分けられ、『教師』は『生徒』に対し二つの対になる単語リストを読み上げる。

④『教師』はそのうち一つの単語を読み上げ、『生徒』はその対となる単語を答える。

⑤『生徒』が正解すると次の問題へと移るが、間違えた場合は電気ショックが加えられる。そして、電流は間違えるたびに強くなる。(実際は電流は流れておらず、サクラが演技をしているだけ)



実際にはもっと細かい部分があるのですが、大まかにはこのような内容となっています。

そして、その状況下に置かれた被験者がどのような行動を取るのかを観察する実験となっています。

恐ろしくも決して他人事ではない

『服従の心理』は一つの心理実験について書かれている本です。



それは『ミルグラム実験』と呼ばれているもので、権威に対する服従の心理を見るために行われた実験です。

この実験はユダヤ人虐殺に関わったアドルフ・アイヒマンという人物からとられ、アイヒマン実験と呼ばれることもあります。



実験の内容と結果はこの本を読むと隅々まで詳しく書かれています。

実験は様々な角度からなされ、細かい変更なんかもしながら別のことを確認したりと、様々な考察がなされています。



この実験の過程を見ていくだけでも、ある意味ではすごく勉強になると思います。

こうやって一つの実験は進んでいくんだということが良く分かると思います。

実験の結果は

実験には様々な人が参加しています。

性別や年齢、職業、社会的な地位までいろんな人が集められています。



そして、様々な結果が実験から得られています。

どんどん強くなっていく電流に対し、どこまで『教師役』を徹底できるかというのが、この実験の肝なのですが、その結果はすごく興味深いものでした。



ある人は役割を最後まで真っ当し、ある人は途中で中止を申し出たりと様々な反応をします。

そんな中で、権威の下における人間の性質が見えてくるのですが、それは『普通の人もある状況下では残虐なことをしてしまう』というものです。



参加者はごく普通の人たちばかりです。

電流による痛みや、それを他人へ加えることが決して良いことではないことも知っているはずです。



しかし、実験という体を取り、報酬を受け取ることにより、『実験のために・・・』『報酬を受け取っている限りは最後まで・・・』と、

参加者の一定数は一番強い電流まで(実験の最後まで)やり切ってしまうのです。

エージェント状態

この結果を見て、怖いことだな・・・と思う反面、決して他人事ではないとも強く思いました。



本の終盤には『エージェント状態』という言葉が出てきます。

これは、権威下に置かれた個人が、それまでの人格とは異なる行動を平気で取るようになっている状態のことを言います。



これって、自分も含めまさに日本のサラリーマン的状態なんじゃないかって思います。



会社組織には大なり小なり必ず権威が存在しています。

権威の上の方にいるように見える人でも、さらに上からの権威下にあることがほとんどです。

そして、組織を潤滑に動かすために、この『エージェント状態』は好ましい状況とも言えるのです。



しかし、それは同時に恐ろしいことでもあります。

責任は自分の外にあると思ってしまっている状態は、普通の人にあり得ないことをさせてしまうことがあるのです。



正直、まさにその状態での怖っ・・・ていう人結構見たことある気がします。

そして自分もそういう部分あるな・・・とも思います。



この本に書かれているこの実験は、今を生きている僕らにも決して他人事ではないのです。

面白い本

そんな本ですが、シンプルに読んでいて凄く面白い本だとも思いました。

人の確かに持っている一側面を描き出している本だと思います。

こんな感じの本、他にも読んでみたいなと思いました。

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