感想・解説『夕凪の街 桜の国』

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優しいタッチなんだけど・・・。

『夕凪の街 桜の国』

こうの史代さんによる日本の漫画で、2003年から2004年にかけて『WEEKLY漫画アクション』『漫画アクション』に掲載されました。

その後書き下ろしを加え、双葉社アクションコミックスより2004年に刊行されています。

原爆投下後の広島を生きる人々を描いていて、テレビドラマ化、映画化もされている作品です。

内容紹介

昭和30年、灼熱の閃光が放たれた時から10年。ヒロシマを舞台に、一人の女性の小さな魂が大きく揺れる。

最もか弱き者たちにとって、戦争とは何だったのか……、原爆とは何だったのか……。漫画アクション掲載時に大反響を呼んだ気鋭、こうの史代が描く渾身の問題作。

第9回手塚治虫文化賞新生賞・第8回文化庁メディア芸術祭大賞を受賞。

https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/4-575-29744-5.html?c=20108&o=date&type=t&word=%25E5%25A4%2595%25E5%2587%25AA%25E3%2581%25AE%25E8%25A1%2597+%25E6%25A1%259C%25E3%2581%25AE%25E5%259B%25BD

戦争や原爆の影

『夕凪の街 桜の国』はこうの史代さんによる漫画です。

こうのさんといえば、『この世界の片隅に』という漫画の著者でもあり、他にもたくさん作品を発表しています。

『夕凪の街 桜の国』は『この世界の片隅に』より4年ほど前に書かれている作品なのですが、舞台が同じく広島ということもあり、結構通ずる部分がある作品です。



こうの史代さんの作品はこの二つしか読んだことがないのですが、基本的には優しいタッチの作品を描く人です。

しかし、そこにはしっかりと悲しみの影というか、不穏さのようなものが渦巻いています。



それは戦争であったり、原爆であったり、広島という地特有のものもある死の匂いが漂っています。

だからこそ生まれる儚さや、人の強さなどをとてもうまく描き出しています。

原爆投下後の

『夕凪の街 桜の国』は原爆投下後の広島と東京に生きる人々のことを描いています。

前半の『夕凪の街』は原爆病に苦しむ女性の姿を、後半の『桜の国』では時間が流れた彼女の弟の家族の様子が描かれます。



どちらかといえば前半の『夕凪の街』の方が悲しい感じというか、暗い話です。

少しずつ死へと向かっていく様子はなんとも言えないものがあります。



『桜の国』はそんな彼女たちの次の世代の子供たちが描かれています。

戦争や原爆とは直接的には関係がないような世代なのですが、少しずつ他人事ではないのだということを知っていきます。



そんな様子を決して誇張しすぎることなく、説教くさくなることなく、日常の生活を描くことで示しています。

よく読むと細いところに発見があったりと、この人の漫画はいろんな工夫がされていることが分かります。

『小さな物語』

描かれているのは『小さな物語』です。

戦争などの不可避的にたくさんの人が巻き込まれ、たくさんの人が死んでいく『大きな物語』の中に確かにある『小さな物語』を描いています。



戦争ではたくさんのひtが命を落とし、そこにはたくさんの匿名の死があります。

しかし、実際にはそうではありません。



そこには一人一人家族がいて、人生があって、たくさんの関係性があるはずなのです。

ここで描かれている物語が何千、何万とあるはずなのです。

だからこそ、こういう作品には重要な意味があり、たくさんの人が見るべきものなのだと思います。



読み手は示された物語からそれ以上の何かを想像し、補完することができます。

そうすることによって、戦争や原爆という悲しい現実を知ることにもつながっていくのです。



この人の作品は、本当にいい作品が多いなと改めて思いました。

全小中学校に配布して、義務教育の一環にしてもいいくらいの漫画な気がします。

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