
書店で気になって読んでみた本です。
『あなたと原爆 ジョージ・オーウェル論評集』
『1984年』や、『動物農場』などの小説で知られるイギリスの作家、ジョージ・オーウェルさんによる論評集です。
1900年代に書かれた論評をまとめたもので、秋元孝文さんによる翻訳で光文社古典新訳文庫より刊行されています。
内容紹介
『1984年』にとどまらない オーウェルの慧眼!
https://www.kotensinyaku.jp/books/book307/
作品
経験に裏打ちされ、そして自らへも批判的な視線を向けるのを厭わなかったオーウェルの洞察は、現代を生きる我々の目をも開いてみせる。
オーウェルが見通した未来は一九八四年ばかりではなかった。その思考はさらに射程を伸ばし、彼が鳴らした警鐘は、時を超えて二十一世紀の私たちの耳にも鳴り響く。(解説)
内容
原爆投下のわずかふた月後、その後の核をめぐる米ソの対立を予見し「冷戦」と名付けた表題の「あなたと原爆」、名エッセイ「象を撃つ」「絞首刑」など16篇を収録。
ファクトとフェイク、国家と個人、ナショナリズムとパトリオティズムなど、『一九八四年』に繋がる先見性に富む評論集。
時代を先行する
『あなたと原爆 オーウェル論評集』はジョージ・オーウェルさんによる論評を集めたものとなっています。
光文社古典新訳文庫から発売されているのですが、この出版社は絶妙なチョイスの本を結構出しているところです。
この古典新訳文庫シリーズも結構気になっている本がいくつかあり、その中の一つがこれでした。
何を買うか決めずに書店を歩いていて、なかなか買う本を決められずにいたのですが、この本に決めて買いました。
ジョージ・オーウェルさんと言えば、『1984年』という代表作があります。
これは世界的にも広く知られている小説でもあり、監視社会的ディストピアを描いている作品です。
科学技術の発展と、それがもたらす社会の向かう先を描いているような小説で、これも面白い本です。
結構別の本やテレビなんかでも時々名前を耳にするような作品でもあります。
16つの論評を
『あなたと原爆』には全部で16編の論評が収録されています。
1900年代に発表されているもので、1930年〜1950年くらいの戦前・戦中・戦後の時期となります
『あなたと原爆』や『科学とは?』という先見的な内容のものもあれば、『なぜ書くか?』という自分がなぜ物書きとなったのかについて書かれている個人的なものもあります。
『スペイン内戦回帰』などという、結構リアルな戦争について書かれているものもあったりして、内容は多岐に渡っています。
『あなたと原爆』
中でも一番最初に収録されている『あなたと原爆』は日本人にとっては決して人ごとではない話でした。
これは原爆のみならず、武器と文明というか、歴史的な武器論のようなものとなっています。
生産手法が限られていて、保有することが簡単ではないが非常に強い力を持っている兵器。まさにそれが原爆なのですが、そういった存在は反抗する力を奪い、ある種の均衡を生み出すというのです。
そして、生み出された軍事的均衡は、交戦することのない戦争。いわゆる『冷戦』状態を作り出すと書かれています。
この『冷戦』という言葉。今となっては歴史の教科書にも載るような言葉となっていますが、これはオーウェルがここで名付けた言葉だというのです。
そして、この論評が書かれたのは、原爆が投下された約2ヶ月後との事。
あの原爆によって起きた惨事を知り、先のことを彼はすぐに予見していたのです。
凄いなこの人・・・。
現実はまさに彼が予見していたかのように動いていき、それは今でも現在進行形な気もします。
人間的な部分も
そんなオーウェルさんの論評なのですが、読んでいると結構人間的な部分もよく現れている論評も結構あったりします。
それは、この人の作品の魅力にもつながっているのではないかと思いました。
『絞首刑』という話では、水溜りをふと避けようと歩いた死刑囚を見て、彼がいきたいと思っている事。そして、彼の命を奪うことがどういうことなのかを理解した。ということが書かれています。
『なぜ書くか?』という部分では、人が何かものを書くときには大きく4つの動機があると書かれています。
その四つの割合は人それぞれであり、さらに常に移り変わっていくものであると言い、自分はどうなのかということも書かれていたりします。
作家のエッセイとか論評は、その人の作品とはまた違う魅力があったりして、結構好きです。
こういう本もっと読みたいなと思いました。