感想・解説『冗談:ミラン・クンデラ』

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なかなか重い本でしたが・・。

『冗談』

チェコスロバキアの作家ミラン・クンデラによる著作で1967年に発表されました。

著者が38歳の時に初めて書いた小説で、一躍チェコスロバキアを代表する作家となりました。



日本語訳版としては1970年にみすず書房より、2014年には新訳として岩波文庫より刊行されています。

今回読んだのは岩波文庫版の西永良成さんによる訳のものです。

内容紹介

絵葉書に冗談で書いた文章が,前途有望な青年の人生を狂わせる.十数年後,苦しみに耐え抜いたすえ,男は復讐をもくろむが…….

政治によって歪められた1人の男の流転の人生と愛の悲喜劇を軸にして,4人の男女の独白が重層的に綾をなす,ミラン・クンデラ(1929-)の最高傑作.作家自らが全面的に改訂した決定版からの新訳.

https://www.iwanami.co.jp/book/b270844.html

ミラン・クンデラさんの傑作小説

『冗談』読みました。

少し前に購入していたのですが、なかなか読めずにいて・・・ようやく読了。



この本を知ったきっかけとしては、少し前に『よこがお 』という映画を見ました。

これは深田晃司さんという監督による日本の映画で、ちょっとマイナーかもしれませんがとても面白い映画でした。



監督がこの映画を作るにあたり、影響を受けたのがこのミラン・クンデラによる『冗談』という小説なのです。

『よこがお 』という映画は、ある真面目な女性がちょっとしたことをきっかけに事件の容疑者とされてしまい、次第に職場や社会からはじき出されてしまうという映画でした。



なかなかリアルな映画で、確かにこういうこと誰にでもありうるな・・・という少し怖い映画でもありました。

ちょっとした『冗談』で

そして、この『冗談』という小説も読んでみて、確かに『よこがお』に通づる部分があるなと思いました。(『冗談』の方が先ですけど)



この小説は1967年の共産党体制下のチェコスロバキアでの閉塞感が描かれている作品です。

結構当時の時代背景のようなものを強く感じる作品で、これぞ海外文学というような感じでもあります。



主人公はルドヴィークという青年です。

まさに閉塞感を抱えながら生きている彼なのですが、彼は自分が絵葉書に書いたちょっとした冗談をきっかけに社会からはじき出されていきます。

自業自得といえばそれまでなのですが、こんなことになってしまうの・・・?というような感じで話は進んでいきます。



そして、いろんな登場人物との交流などを複数の視点で描きながら進んでいくという作品となっています。

なかなか難しい

読み終えてみて・・・

500ページほどのなかなか重い小説でもあります。



文字数も多かったりして結構気合入れて読まないといけない作品かもしれません。

結構難しい部分もあり、果たして自分もどれだけ理解できているのか・・・という感じもあります。



現代の日本に生きる僕らにとっては、なかなかあるあると思える部分もないかもしれません。

それでも、当時の時代背景がしっかりと刻み込まれている作品でもあります。



それは時間を超えて残っているいい小説の条件だと思います。

そして、当時の閉塞感を描きながら、実は『愛と憎しみ』をテーマとしている作品ともなっています。



すごく普遍的なものを扱っている作品でもあるのです。

序盤はそれぞれの視点で物語が進んでいくのですが、終盤はそれらが収束するお祭りのような構成にもなっていたりして。

この辺りはなかなかのスピード感です。



クンデラさんの小説は『存在の耐えられない軽さ』に続いて読んだのは二つ目でした。

読み応えのある作品ばかりです・・・。

映画『よこがお 』も面白いですよ。

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