感想・紹介『哲学の誤配:東浩紀』

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先日発売されていたこの本です。

『哲学の誤配』

東浩紀さんによる著作で、2020年5月1日にゲンロンより発売されました。

様々な人との対談集である『新対話篇』との同時発売で、こちらは韓国の読者に向けたインタビューが二つと、中国で行われた講演一つが収録されています。

日本と韓国での並行出版ともなっていて、200ページほどの本となっています。

内容紹介

誤配とは自由のことである――
近くて遠い読者に向けたインタビュー&講演録


韓国の読者に向けて語った2つのインタビューと、
中国・杭州での最新講演を収録。

誤配から観光へ展開した東思想を解き明かす必読のテキスト。
韓国の若手論客パク・カブンによる解説も掲載。
日韓並行出版。

https://genron.co.jp/shop/products/detail/273

はじめに、にとても大切な・・・

東浩紀さんの本である『哲学の誤配』読みました。

この本は5月1日に『新対話篇』と同時にゲンロンより刊行された本で、早く読みたいと気になっていた本でした。

Amazonで注文していて、数日前に到着。一気に読みました。



この本ではまず、韓国の読者に向けた二つのインタビューが書かれています。

これはちょっと特殊な経緯があるインタビューとなっていて、韓国での出版が前提とされていながらも元々は日本語で行われたインタビューです。



それを日本語から韓国語に翻訳された上で出版されたのです。

これはその日本語版という、いわばオリジナル版となっている本です。



『はじめに』の部分では、東さんは『日本において』、自分の本や言説がどのような読者に好かれ、受容されているかをほぼ正確に分かっていると言います。

しかし、翻訳はそこから自由にしてくれます。



別の言語に訳されるということは、全てに完全に対応する言葉があるわけでなく、さらに著者に対する読者のイメージも固定化されていないことがほとんどです。

そのため、自分の本が思いもよらない人のところへ届きうるのだと言います。



それがこの本のタイトルともなっている『誤配』であり、つまり自由だとことが書かれています・・・。



本の序章や、はじめにの部分は結構重要なことが書かれていることがよくありますが、この本もまさにそうだなと思いました。

数ページの『はじめに』の部分にとても重要なことが、この本の全てが書かれているなと思いました。

ゲンロンという場

そして、この本では東浩紀さんがなぜゲンロンを立ち上げたのか、そしてゲンロンカフェという場を作ったのかということも書かれています。

個人的にはこれを読んで、凄くしっくりきたというか、なぜ東さんが大学などの学術的な場から離れ、自分で会社を立ち上げ運営しているのかが凄く伝わってきました。



ゲンロンカフェで行われている対談には、時間的な制限がなかったりと、自由であることに重きが置かれています。

それは一見、哲学とは関係がないように思えますが、実はとても重要なことであると言います。



さらに、ゲンロンカフェでの対話はニコニコ動画で中継されていて、会場の外からもヤジが飛んでくるようになっています。

この二つを実現していることが、実は本質的に哲学的な対話を引き出す鍵ともなっていて、ゲンロンカフェ成功の要因にもなっているとの事・・・。



なるほどな・・・と凄く思ってしまって、確かにこのような実感はおそらく大学に属していてはおそらく持つことができないことのようにも思えます。



”各人が用意してきた内容が尽きてこそ、はじめて対話が始まると・・・”

数週前のフリースタイルダンジョンでも同じようなこと言っていた気もするぞ・・・笑

誤配の生まれうる場所を作る

本書のタイトルともなっている『誤配』という言葉。

あまり聴き慣れない言葉かもしれませんが、文字の通り、”意図していないところへ何かが届く”というような意味の言葉です。



それが哲学においていかに重要で、それを生み出すためにどういう場を作っているのかということが書かれていました。

インターネットの普及によって誤配が起きづらい環境となってきているので、誤配うを産むためにはある種意図的な何かが必要とのことです。



確かにインターネットは自分が必要としている情報を、自分から取りにいくツールとも言えます。

そこには偶然性はあまりなく、誤配が起こる余地は少なくなってしまいます。

だからこそゲンロンカフェのようば場所が必要なのだと・・・。



なるほど・・・

面白い本でした。

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