
文庫版が発売されていたので読んでみました。
内容紹介
西加奈子初期名短編を乃木坂46でドラマ化
https://www.shogakukan.co.jp/books/09406755
午後から雨になった。東海道五十三次の絵なんかに出てきそうな、斜めに降る、細い細い雨だ--そんな書き出しから始まるそぼふる雨のなか。様々なことが定まらない、二十代男女5人が、突然の死を迎えた仲間の通夜に向かう「サムのこと」。
二十代半ばの、少し端っこを生きている仲良し女子3人組が温泉旅行で、「あるもの」にたどり着くまでを描いた「猿に会う」。
小説家志望の野球部の友人と、なぜか太宰治の生家を訪ねることになった高校生男子が、そのまま足を伸ばした竜飛岬で、静かに佇む女性に出会う「泣く女」。
人生の踊り場のようなふとした隙間に訪れる、「何かが動く」ような瞬間を捉えた初期3作を新たに編んだ短編集。
ドラマ化されているので気になって・・・
西加奈子さんの短編集である『サムのこと 猿に会う』読みました。
この二つの短編は乃木坂46の4期生たちによって実写ドラマ化されていて、それで気になって読みました。
この本にはさらにもう一つ『泣く女』という短編も収録されていて、全部で3つの話が収録されています。
実写版は『サムのこと』の方はすべてが配信済みで、『猿に会う』の方は1話が配信されたばかりです。
どちらも第1話は見たのですが、その先はまだ見れていません。
原作はどんな感じなんだろうなーと思いながら読みました。
『サムのこと』
まずは1つ目の短編である『サムのこと』。
これは実写版では女子アイドルたちの話となっているのですが、原作は全く違っていました。
驚いたのは、アイドルの設定じゃないというだけでなく、性別も男性の話となっています。
実写版のイメージを持ったまま読み始め、読み進めていたのですが、全然違うじゃないか!っていう感じでした。
実写版はアイドルである乃木坂のメンバーが出演しているので、大きくアレンジされていたんだなーと思いました。
それでもこの話はやっぱり共通している部分もあり、これは『不在の中心』を描いている話です。
話の中心となり、推進力となっているのはサムという人物です。
しかし、サムは交通事故で死んでいて、描かれるのはサムの葬式のシーンです。
中心となっている人物は登場することはなく、その周りの様子が描かれているのです。
他で言うならば『桐島、部活辞めるってよ』や『ゴドーを待ちながら』なんかにに似ている作品かもしれません。
『猿に会う』
そして二つ目の短編が『猿に会う』と言う作品です。
この小説は仲良し3人組の女子が25歳(26歳目の年)を迎え、人生的にも女性としても微妙な時期に差し掛かっている様子を描いています。
これもドラマ版第1話だけ見ましたがこちらは結構原作通りなのかなーと言う印象。
舞台が大阪だったりと微妙な違いはありそうですが、結構原作に沿ってそうな感じです。
この短編は、すごーく微妙な女性たちの瞬間を捉えている小説だと思います。
大きな事件も無ければ、彼女たちの境遇が大きく変わるようなこともありません。
それでも確かに何かが起こり、少しだけ前へ進んだかのような。そんな瞬間を捉えています。
個人的にはこちらの方がドラマ版を最後まで見てみたいなーと思いました。
でもこれはdTVというサービスでしか見れないそうで、なんとか見る方法ないのかな・・・・。
『泣く女』
そして最後に収録されている短い話が『泣く女』という話です。
これは高校球児の二人が太宰治に縁のある地に旅行するという話です。
なんでも知っていて、同じ時間を流れていたと思っていた友人が、自分の知らないどこかで自分の知らない何かに感銘を受けていて、
自分の知らない決心をしている。そのことを知り、少し寂しくも思いながらも、二人で旅をしていて・・・というような話です。
これも人生を先へ進めようとしている男子二人の、微妙な時期の微妙な関係性を描いている作品です。
最後はなんだか切なくもありながら、希望もあるような終わり方となっていて・・・。
いろんなことを書いてみようと
この三つの作品は西加奈子さんがいろんなことを試している作品たちでもあるのかなーとか思いながら読んでいました。
野球に打ち込んできた男子高校生はどんなことを思うだろうなーとか。
ゲイの男性はどんなことを考えているんだろうなーとか。
自分の想像力を使った挑戦というか、実験というか、いろんなことをやってみよーと書いている作品のような気がしました。
乃木坂46の4期生によるドラマ版も初々しくていい感じ・・・。
なんとかして全部見る方法ないのかな・・・。