
なんだかもの凄く納得、共感してしまいました。
そして、シンプルに読み物としてとても面白かったです。
『遅いインターネット』
評論家である宇野常寛さんによる著作で、2020年2月20日に幻冬社より刊行されました。
インターネットによって失った未来をインターネットによって取り戻す
インターネットは世の中の「速度」を決定的に上げた。しかしその弊害がさまざまな場面で現出している。
世界の分断、排外主義の台頭、そしてポピュリズムによる民主主義の暴走は、「速すぎるインターネット」がもたらすそれの典型例だ。
インターネットによって本来辿り着くべきだった未来を取り戻すには、今何が必要なのか。気鋭の評論家が提言する。
https://note.com/wakusei2nduno/n/n5e4c5cb6ce95
序章+全4章からなる200ページほどの本です。
2020年に控えている東京オリンピックに関する話から始まり、トランプ大統領の誕生、ポケモンGOや吉本隆明さんの思想なども引き合いに出し、著者の考える『遅いインターネット』について書かれている本。
いつからかファンになっています・・・
大学の時に『リトルピープルの時代』と『ゼロ年代の想像力』という2冊の本を授業で使って以降、その考え方と書く文章のファンになっている宇野常寛さんの本。
宇野さんの書く本は、シンプルに読み物として面白いだけでなく、僕らゼロ年代の人たちであれば誰しもが通ってくるような身近な題材を扱っていることが多いです。
村上春樹の小説や、DEATH NOTE、エヴァンゲリヲンなど、誰しもが知っているような作品を引き合いに出すことも多く、文章もとても読みやすいです。
そして、その周辺知識を知っていればいるほど、より深く理解することもできるものともなっていて、なるほどな・・・と思えるような文章が結構あります。
宇野さんの本は書店やAmazonで見つければすぐに買って読んでいます。
凄く前向きな本です
そして、先日発売されたこの『遅いインターネット』という本。
これも早速買って読んでみました。
読んでみて、これもさすがという感じでとても面白く読めました。
本書は、『オリンピック破壊計画』というなかなか衝撃的な序章から始まります。
なぜ東京オリンピックにどこか空疎感を覚えてしまうのか・・・ということが書かれているのです。
しかし、この本は本質的には何かを批判するようなものでは決してありません。
序章でこのようなことが書かれています。
そう、この本は一緒に走りながら考えてもらうための一冊だ。
あらかじめ分かっていることを確認して安心するための本ではなく、手探りで、迷いながら考える本だ。
そして、この国を、いやこの世界を覆う目に見えない壁を破壊する言葉を手に入れること。それがこの本の目的だ。
『遅いインターネット』序章より
この本は何か読んですぐに何かを得られるような即効性のあるものではありません。
すぐに何かを得たり、安心感を与えてくれるものではないのです。
しかし、世界と日本の現実をしっかりと、正確に捉えた上で、どうすべきかを考えていくというとても前向きな本です。
『・・・ではない』ではなく『・・・である』という言葉で
世の中には、特にインターネットやテレビなどのマスコミには『・・・ではない』というような批判の言葉を伴う言説で溢れています。
そんな中で本書では『・・・ではない』ではなく、『・・・である』という言葉で戦うことの重要性が書かれています。
批評と批判は言葉的にも意味的にも結構似ているように思えます。
僕もそう思っていたのですが、この本を読んでその二つは本質的には大きく異っているのだということが分かったような気がしました。
「報道」が伝えることができるのは、ある事実の一側面だ。
そして「批評」はその事実の一側面と、自己との関係性を考える行為だ。
距離感と進入角度を試行錯誤し続ける行為だ。
『遅いインターネット』第4章より
この本の第4章にはこのようなことが書かれています。
批評とは自分以外の何かについて考える行為だというのです。
それは何かを『・・・ではない』とこき下ろす批判的な行為とは全く違っています。
正直、何かをやらかした誰かを吊し上げ、みんなで批判的な言葉をあげつらう。
そして、自分は間違っていないと安心する。というようなメンタリティがこの国には蔓延していて、疲れている人は多いのではないでしょうか。
そんな批判は人々を疲れさせるだけです。でも批評は違うのです。
『遅いインターネット』とは
本書では今こそ『遅いインターネット』が必要なのだと述べられています。
インターネット上で行われている「速い」やりとり。
「速い」スピードで行われる発信と受信は結果的に人を愚かにしているのではないか。
それに対ししっかりと価値のある情報を発信し、受信する「遅い」インターネットが必要なのだと。
しっかり価値のある情報を「読み」「書く」ことのできる人と場が今こそ必要だというのです。
なるほどな・・・と思ってしまいました。
著者である宇野さんは実際にそのような場を作っています。
自身が編集長を務める『PLANET CLUB 』というものを作っています。
改めて
改めて、やっぱりこの人の考えていること面白いな・・・
と思うともに、この人の書く文章好きだなーと思いました。
ジョギングが好きだとうことで、勝手にシンパシーを感じていたりもして。
これからもこの人の書く本はかかさずチェックしていきたいです。