感想『限りなく透明に近いブルー:村上龍』デビュー作であり代表作

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村上龍さんのデビュー作で、芥川賞受賞作です。

『限りなく透明に近いブルー』

村上龍さんによる小説で、初出は『群像』1976年6月号に掲載されました。

その後、同年7月5日に第75回芥川賞を受賞。


講談社より単行本が刊行されました。(その後講談社文庫でも刊行)

単行本は130万部以上、単行本・文庫合わせると360万部以上とかなりの部数を売り上げている作品です。

あらすじ

舞台は東京の基地の街である福生市。

主人公であるリュウは、通称ハウスというアパートの一室でクスリ、セックス、暴力などに明け暮れていた。


ハウスにはたくさんの男女が行き交い、退廃的な生活を送ってるリュウ。


何かが突然大きく変わることもなく、明日に期待することもなく日々を送っている男女をリュウはどこか冷めた目線で見続けていた。

次第にハウスを訪れる男女は減っていき、それでも残されたリュウは・・・。

デビュー作であり代表作

『限りなく透明に近いブルー』は村上龍さんのデビュー作となる小説です。

書かれたのは1976年と今となっては44年も前のこととなります。


村上龍さんはこの作品で芥川賞を受賞し、小説も爆発的に売れ、一躍時の人となったと言います。

当時僕はまだ生まれておらず、リアルタイムでその様子を見ることはしていないのですが、作品は残っていて初めて読んだのは大学生の頃でした。


大学生の時、僕はまだ社会に出て働くこともしておらず、親元から離れ一人暮らしをしていました。

この作品の主人公であるリュウと少し似ているような状況だったと思います。


僕はこの作品を読んで衝撃を受けました。

そして、それはこの作品が発表された1976年に読んだ人が受けた衝撃と同じものではないかと思いました。

『現実的なものが非現実感を与え、非現実的なものが現実感を与える』

この作品の解説としてこのようなことが書かれています。


”小説『限りなく透明に近いブルー』には、きわめて興味深い逆説が潜んでいるといわなければならない。ここでは現実的なものが非現実感を与え、非現実的なものが現実感を与えるのだ。この逆説こそがじつはこの小説の隠された主題なのである。”


これは本当に的確に、この小説の本質を捉えているものだと思いました。


この小説ではたくさんの人物が登場します。

そして、その登場人物のほとんどがいつの間にか物語に登場し、いつの間にか退場していっています。


その様子を主人公であり、実質的な語り手ともなっているリュウはとてもドライな視線で見ています。

まるで自分はそこにいないかのような視線で見ているのです。


それはある種、小説を読んでいる読者と同じ目線で見ているということでもあります。


リュウは物語の内側にいながら、まるで外側からの視線のように世界を見ているのです。

それはとても新しいというか、こんな小説は他に読んだことはありませんでした。

デビュー作には全てが含まれている

小説家のデビュー作にはその作家の全てが既に含まれている。

というようなことをよく聞きます。


いろんな作家の小説を読んでいて、確かにな・・・とすごく思います。


この『限りなく透明に近いブルー』もまさにそのような小説です。

村上龍さんの作品はとても好きで、他の作品もほぼ全てを読んでいるのですが、その全てが『限りなく透明に近いブルー』にどこかで通じているように思えます。


この世界に対する少し冷めた視線もそうですし、快楽主義的な思想も他の作品においても随所で感じることがあります。

内側を描いた数少ない

村上龍さんは『外の世界』を描くのがとてもうまい作家だと思っています。

その少し冷めた視点で、日本や世界をとてもドライに、かつ的確に描くことが本当に上手いです。


しかし、この『限りなく透明に近いブルー』は唯一と言ってもいいほど少し特殊な作品でもあると思っています。


それは村上龍さんが『内側の世界』を描いていると思うからです。

主人公のリュウは同じ名前でもあるようにおそらく自分自身のことを描いているのではないかと思われます。

冷めた視線を持ちながらも、この小説は内側を描いているものなのだろうと思いました。


龍さんの作品でこのような作品はとても珍しいです。

おそらくある時期からはほとんどなくなった気がしています。


その対極にいる作家だと思うのが同じ村上である村上春樹さんです。

村上春樹さんは人間の内側を深く深く掘っていくことで、人間の本質にたどり着こうとしている作家です。


このような作家が同時期に出てきたことって本当にすごいな・・・と思います。

作家として

村上龍さんは今となっては小説も書きながら、テレビの仕事など様々なことをやっていますが、本業はあくまで小説家です。


個人的な好き嫌いを差っ引いても、超一流の書き手であることは間違い無いと思います。


そして、このデビューの仕方とデビュー作・・・。
めちゃくちゃかっこいいな・・・と思います。

衝撃的なデビュー作で一躍有名になり、多額の印税も得て・・・

カッコ良すぎます・・・笑

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