感想・解説『怒り』吉田修一さん原作の

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2016年に公開された映画です。

『怒り』

2014年に刊行された吉田修一さんによる同名小説を原作とする日本映画です。

2016年9月17日に公開されました。


監督は李相日さんで、主演は渡辺謙さん。

他、宮崎あおいさん、松山ケンイチさん、妻夫木聡さん、綾野剛さん、森山未来さん、広瀬すずさんなどが出演しています。


李監督は『悪人』に続く2作目の吉田修一さん原作作品の監督となっています。

日本アカデミー賞では数多くの賞にノミネート、受賞しています。

あらすじ

八王子の郊外で若い夫婦が殺害される事件が起きる。

犯人は警察から捕まることはなく、逃亡していた。


そんな時、房総、東京、沖縄とそれぞれの地で身元不明の3名の男が現れる。

男たちは最初訝しがられながらも次第にその地に溶け込んでいった。


そんな中警察は追っている殺人犯のモンタージュ写真を公開する。

写真はどこかそれぞれの地に現れた3人の男に似ている面影があり、少しずつ人間関係に変化が起き始めることとなり・・・。

吉田修一さん原作の

『怒り』は吉田修一さんの小説を原作とする映画です。

2016年に公開され、映画館で見ました。


原作も読んでいて、とても面白い小説でした。(笑える面白さではないけどね)

そんな作品が映画化されると知り、他の映画の予告とかでも何度か見ていました。


監督は『悪人』と同じ人で、出演者もとても豪華な顔ぶれとなっていて、これは見るしかないと思ってすぐに見に行きました。

3つの土地での話が並行して

この物語は、房総、東京、沖縄という三つの土地での話が並行して進んでいきます。

それぞれの話は『ある一つの点』を除いて直接的に関わることはありません。


その一つの点が八王子で起こった殺人事件です。

3つの土地の現れた謎の男。

それぞれが犯人なのではないかと匂わせるように進んでいきながらも、最後まで誰が犯人なのかは分からなくなっています。


これは小説でも映画でもとても上手く表現されていました。

見ている側は誰が犯人なのだろう?ということが分からないまま映画を続きを見ることとなるのです。


そして、それぞれの土地では核となっている殺人事件とは違う物語も進んでいきます。


松山ケンイチさんと宮崎あおいさんとの話もそうですし、妻夫木さんと綾野さんの話なんかは結構衝撃的でもあります・・・。

沖縄でもとても根深い話を扱っているような気もしていていて、目をそらしたくなるようなシーンもありました。

絶妙なモンタージュ写真

この殺人事件の容疑者となるのが、松山ケンイチさん、綾野剛さん、森山未来さんの演じている人物なのですが、この全員を犯人を思わせるようなモンタージュ写真が出てきます。

これは見ていて本当に驚きました・・・笑


本当に絶妙で、3人ともに似ているけれど、微妙に違うような・・・という本当に絶妙なバランスとなっています。

そして、この『モンタージュ』というもの。


これは実はこの作品そのものの作りのメタファーにもなっているような気もします。

それぞれの小さな話を組み合わせ、いろんな要素を合わせることで一つの物語が立ち上がってくるような。まさにそんな作品です。

『怒り』とは

この作品のタイトルともなっている『怒り』という言葉。

これが直接的に意味することは決して示されていないような気もします。


それでも、作品を見終えた後にはその言葉の意味するものがなんとなく分かるはずです。


そして、犯人が分かった後にはある『神々しいシーン』があります。

そこで壁に彫られている言葉はなかなかの衝撃を受けます。


さらに、事件のきっかけはとても小さなことだったことが分かるのですが、そこに至るまでのたくさんの『怒り』があったのだろうなということも示されたりして・・・。

とても考えることとなる作品

映画としては、少しややこしい作りをしているかもしれません。

明確な『答え』のようなものは決してありませんし、笑える話でもありません。


でも、個人的にはとても考えさせられることの多い作品で決して嫌いではない作品です。


同じ原作者、同じ監督の『悪人』という作品も見たのですが、これもそんな作品です。

誰が悪なのか。悪を取り締まったり、罰することで本当に解決するのか?


というようなことを考えさせられる作品です。


それにしても吉田修一さん、本当に腕のある作家さんだな・・・と改めて。

映画化された『楽園』なんかも名作です・・・。

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