
タイトルからして面白そうだな・・・と思いネットで購入。
読んでみました。
この本はチームラボの代表である猪子寿之さんと、批評家である宇野常寛さんとの4年にわたる対談をまとめたものとなっています。
初版は2019年の11月21日。
全ページフルカラーで、たくさんの写真を交えながらCHAPTER1〜14までの本論に加え、補論やあとがきを加えた250ページほどの本となっています。
対照的に見える二人
この本は猪子寿之さんと宇野常寛さんとの対談をまとめた本となっています。
二人のことは以前から知っていて、猪子さんは主にテレビで、宇野さんは主に書籍で何度か目にしたことがありました。
二人ともがとても面白い視点や考えを持っていて、二人ともそれぞれの分野において先を走る人物であることは間違いありません。
この二人は一見とても対照的な人に見えます。
猪子さんを『火』とするなら、宇野さんは『水』という感じというか・・・
猪子さんは本能的な人で、宇野さんは理性的な人というか。
猪子さんは多分クラスの中心にいたようなタイプで、宇野さんはきっと静かに本を読んでいたりするようなタイプ。
そんな二人なのですが、この本を読むととても息が合っていることが分かります。
方向性は違えど、同じような視点で世界を見ていて、何をしているのか、何をしようとしているのかということがとても分かりやすく書かれています。
タイプが違うからこそ、補い合うことができるものだということを本能的にわかっているような感じもして、個人的にはそのことがとても嬉しく思いました・・・。
チームラボの目指すところは
猪子さんが代表を務めているチームラボのことについて様々なことが書かれています。
チームラボのことはその全てを知っている訳ではないのですが、テレビなどで何度か見たことがありました。
今となっては普通に暮らしていればどこかしらで耳にすることのある名前でもあると思います。
彼らはデジタル技術を使ったアートやエンターテインメントを作っている人たちです。
実際にこの目でそれを見てみたいと思いながらも、なかなか機会がなく残念なのですが、クリエイティビティに富んだことを世界中でやっています。
この本を読んで、想像以上に世界の様々な地で様々なことをやっていることに驚きました。
パリやロンドン、ニューヨークなど世界の都市でイベントを開催しています。
そうかと思えば、日本の田舎に焦点を当てるようなこともやっています。
都市化されていない日本の田舎にこそ残る美しさに焦点を当てるようなこともやっているのです。
宇野さんの解説によって
そんなチームラボのやっていることに対して猪子さんと宇野さんとが語り合っているのですが、この宇野さんの解説というか、分析が本当に的確で面白いです・・・。
宇野さんの本は大学の授業でも使ったりしていて、『リトル・ピープルの時代』や『ゼロ年代の想像力』なんかは、扱われている題材もとても分かりやすく、本当に面白い本です。
そして、チームラボの行いに関しても、『歴史的な文脈においてどのような意味を持つか』というような視点も持ちながら語られています。
これはきっととても重要なことで、これこそが批評家の役割とも言えるような気がしています。
以前ある本で『映画や文学などの芸術文化において、その分野が自然に発展し続けていくかというとそうではない。それ自体では立ち行かなくなったときに批評を必要とする。』というようなことを読んだことがあります。
なるほどな・・・と妙に納得してしまったことを覚えています。
それは現代に溢れている何かをした人達に対する、後出しでの心ない批評とは本質的に異なるものです。
この本を読んでみても、宇野さんの批評は決して相手を貶めるための行いでは全くありません。
相手に対するこれでもかというリスペクトを持った上で、分析をし、さらに先へ進めることを助けるかのような批評です。
おそらく、それはとても高度なことな気がします・・・。
とても読みやすく、面白い本・・・。
本文を通じて、『境界』という言葉と、『デジタイズド ネイチャー』という言葉がキーワードになっています。
この本を読んでみれば、その二つの言葉がどのように使われているかが分かるはずです。
猪子さんと宇野さんのような組み合わせは、実はとても相性がいいような気がしていて、大きなことをなす人たちはこのような組み合わせの人たちって意外と多い気がします。
明るく社交的で情熱的な人と、静かで理知的で、少しオタク気質な人と。
きっとお互いがいい部分を引き出し合うことができるのです。
そして、単純にこのような人に出会えた二人はとても幸福なんだろうなとも思いました・・・。