感想・解説『いちばんここに似合う人:ミランダ・ジュライ』現代の海外文学として

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気になってネットで購入。読んでみました。

『いちばんここに似合う人』

アメリカのミュージシャンでもあり、映画監督でもある女性ミランダ・ジュライによる短編集です。

原題は『No One Belongs Here More Than You: Stories』で2007年に刊行されました。


日本語版は岸本佐知子さんによる翻訳で、新潮クレスト・ブックより2010年に刊行されています。


ミランダ・ジュライさんの初めての小説集で、出版後、多くの作家や書評家から絶賛され、フランク・オコナー国際短編賞という賞を受賞しています。

全16編の短編が収録されていて、270ページほどの本です。

現代の海外文学

ふと、読んだことのないジャンルの本を読んでみたいなーと思って、それってどんな本だろうと考えていました。

そして、たどり着いたのが『現代の海外文学』というジャンル。


ジャンルと言えるかは分かりませんが、海外文学はちょこちょこ読んでいたものの、それはいわゆる歴史的に、世界的に名著とされているような本ばかりでした。

ドストエフスキーやカフカ、ヘミングウェイというような、世界文学を語るにおいて外すことのできない人たちの本は結構読んではいたのですが、意外と読んでいなかったのが、現代の海外文学です。


正直、どこから手を出していいか全く分からず、とりあえずAmazonのおすすめを見ながらたどり着いたのがミランダ・ジュライという人でした。

あらすじのようなところを少し読んでみて、面白そうな気配を感じる本だったのですぐに購入し読んでみました。

16編の短編

『いちばんここに似合う人(No One Belongs Here More Than You: Stories)』はミランダ・ジュライさんがいろんな雑誌で発表した短編を16編収録したものとなっています。

それぞれの話は決して長くはなく、いちばん短いものは3ページほどで終わります。


文量的にはとても読みやすいのですが、話は分かりやすいものもあれば少し難解なものもありました。


しかし、どの話にも共通している部分もあるような気がします。


それは訳者のあとがきにもあるように『孤独で不器用な人』達を描いているということです。

どこか生きづらさを抱えていて、世界との距離をうまく見つけることができないような人たちを描いているのです。


作者はアメリカの人で、イメージしている風景はおそらく僕らの見たことのない風景です。

遠いどこかの土地にいる全く知る由もない人たちです。


しかし、ここに出てくる登場人物たちは本当に人間的な人たちばかりです。

どこか不器用でありながらも、懸命に他者との接点を見つけようとしています。


おそらく読んだ人の多くは、自分に通ずる何かを誰かに見つけてしまうのではないでしょうか。

女性作家による

ミランダ・ジュライさんは様々な分野で活躍している女性です。

監督・脚本・主演を務めた初の長編映画作品『君とボクの虹色の世界』ではカンヌ国際映画祭で新人監督賞を受賞しています。


そして、小説家としての実力も確かなものなのだなと読んでいて思いました。


彼女の小説には彼女しか書けない何かが確実に含まれているような気がします。

それでいて、誰しもが持っているような普遍的な何かへともしっかりと繋がっています。


パーソナルな部分と、普遍的な世界の真実のようなものを繋げるということは、
きっと誰にでもできることではありません。


そして、女性作家だからこそかける表現にも溢れていました。


悔やまれるのが翻訳版としてしか読むことができなかったということです。

翻訳された本は決して翻訳者の腕が悪いというわけではなく、どうしても原著とは少し違うものとなってしまいます。

おそらく、原著では英語でもっと絶妙な表現がなされているような気がします。

もっと細かい絶妙な描写がされているに違いありません。


強いて言えばそこが悔やまれるところですが、翻訳版でもしっかりと作者の言いたい事は伝わってきました。

他の作品も読んでみたい

本を読み終えてみて、この人の他の作品も読んでみたいなとすごく思いました。

とても独特な感性を持っているような気がしていて、表現の仕方もとても独特です。


それでいて普遍的な話となっているのは凄いところです。

一つ一つの話の感想を書きたいところですが、今日はこの辺で・・・。

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