
『FACTFULNESS』の著者であるスウェーデン生まれの医者、ハンス・ロスリングによる著作で、2019年9月25日に青土社より刊行されました。
『FACTFULNESS』はビル・ゲイツやオバマ前大統領などから絶賛を受け、全界で100万部以上を売り上げる大ヒットとなっている本です。
そして、ロスリングが末期ガンと診断され、余命宣告を受けてから書いたもう1冊がこの本となります。
『FACTFULNESS』は知らず知らずのうちに陥ってしまうバイアスから、いかに解放され正しく世界を見るかという本でしたが、
『私はこうして世界を理解できるようになった』は著者自身がいかにして、世界のことを正しく見ることができるようになったかを書いた本となっています。
『個人から見た世界』に対し、『世界から見た個人』というようなニュアンスの本です。
そう考えると対になっている2冊とも言えそうです。
自伝的な本
『私はこうして世界を理解できるようになった』は、作者のロスリングの生まれからを語っている自伝的な本となっています。
『FACTFULNESS』のように、世界で起きていること、『事実』をベースに書かれている本とは少し違っていて、この本では著者自身の感情や、思い、会話など、とてもパーソナルな人間的な部分が多くなっています。
『私は』という語り口で語られている本なので、結構読みやすい本かもしれません。
『私は』というとても『個人』に寄り添った目線で書かれている本です。
人との出会い
この本は、初めにのところに書かれているように、著者の人との出会いの歴史を描いている本とも言えます。
数字はほとんど登場せず、人との出会いによって自分自身がどう考え、開眼し、世界を正しく見ることにつながっていったかが書かれているのです。
読んでいると、途中『FACTFULNESS』へと繋がる考え方も登場してきます。
『FACTFULNESS』で書かれていた『世界はだんだん良くなっている』という記述は目から鱗でした。
僕たちが情報を入手するテレビや新聞、ネットなどでは『起こった何か』のことばかりが発信されます。
そして、その多くは良くないことだからこそ報道されているのです。
そうなると僕たちが触れる情報の多くは『悪いことに関する情報』ばかりとなってしまうのです。
結果、私たちは世界のことを間違って認識してしまいます。
世界の貧困が改善していることはなく、貧しい人は教育も医療も受けられないと思ってしまいがちなのです。
しかし、実際はそうではありません。
そのことが書かれているのが『FACYFULNESS』という本です。
世界を股にかけた
著者であるハンス・ロスリングは、スウェーデン出身の医師であり、公共衛生学者でもあります。
タイム誌の『世界で影響力のある100人』にも選ばれている人だったのですが、2017年に癌で世を去っています。
癌で余命宣告されてから書かれたこの二つの本には、著者の思いの全てが込められていると思います。
著者は、なんとかして世界を良い場所へしようとしていることが分かります。
しかし、個人としてできることが限られていることも誰よりも分かっています。
本書では、ロスリング自身の経験を交えながら、発展途上国での医療行為がいかに難しいかが書かれています。
物資の限界、人的な限界、時間的な限界と様々な側面でできないことだらけなのです。
そんな世界でどう生きるか
僕はこの2冊の本を読んで、そんな世界をどう生きていくべきかということを考えました。
世界は完璧な場所ではありません。完璧な人もいません。
しかし、そんな中でも世界を良くしていこうと努力している人もいるし、少しでもそんな考えを広げようとしている人もいます。
世界は複雑な場所です。
本を書き、出すことができることも突き詰めていくと、何処かの誰かの犠牲の上に成り立っているとも言えます。
ごく普通に食事をとることができるのも、たくさんの誰かの力があるからこそなのです。
それでも、綺麗事的かもしれなくても、何もしないよりは何かをした方が良いことは間違いありません。
そうすることでしか世界は変わっていかないからです。
この人が書いたこの2冊の本を読んで、僕は世界の見え方が少しかもしれませんが変わったような気がします。
そして、少しでも行動に繋げていかなければならないなとも思いました。