
是枝裕和さんの監督作品です。
『真実』
是枝裕和監督による、『万引き家族』に続く監督作品。
日本とフランスの合作映画で、2019年10月11日に日本公開されました。
第76回ヴェネツィア国際映画祭にてオープニング作品として選出されています。
フランスの女優であるカトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュが親子役として出演。他、イーサン・ホークなどが出演しています。
日本語吹き替え版は宮本信子さんや宮崎あおいさん、佐川和正さんなどが担当しています。
あらすじ
フランスの映画スターである女優、ファビエンヌが自伝本を出版することとなった。
そんなファビエンヌの元をニューヨークで暮らしている娘夫婦が訪れる。
母の自伝本のお祝いのために来たという娘のリュミールであったが、彼女ら親子には何か秘密がありそうであった。
そんなファビエンヌの元に新しい映画のオファーが来る。
その映画には『サラ』という人物の面影を持っている新人、マノン・ルノワールという女優が出演することとなっていた。
ファビエンヌは周りの人たちに毒舌を吐きながらも、撮影は進んでいき・・・。
是枝監督のフランス映画
『万引き家族』で一躍世界的に有名な映画監督となった是枝裕和さん。
是枝さんの映画は本当にどれもいい作品ばかりで、今回も新作が公開されていると聞きました。
しかし、今回は『万引き家族』の時のような大きな話題性はなく、静かに公開が始まっている作品でした。
『真実』はフランスが舞台となっているドラマ映画です。
日本人は全く登場することはなく、日本語も全く出てきません。
日本人の監督が撮ったものとは思えないような映画でした。
最初は
最初の方は、話がどのように進んでいくのかが分かりにくくなっているような気がしました。
『何を見ているんだろう』と思いながら見ていると、途中少しずつ事実が姿を現してきます。
そして、最後まで見るとなるほどな・・・と思えるような話になっていました。
この映画においてとても大切なセリフが二つあると思いました。
一つ目は中盤で登場する『修理しているんだ』というセリフ。
そして、終盤に娘が口にする『ねえ、これって真実?』というセリフです。
この二つのセリフを軸として、他の要素を思い出して肉ずけしていくと、僕はこの映画のことがよく分かったような気がしました。
『修理しているんだ』
途中、娘の旦那であるハンクが家の形をしたおもちゃを修理しながら、ふと口にするセリフが『修理しているんだ』という言葉です。
そして、そのセリフの後には明るい音楽が流れ始め、話も少しずついい方向へ向かっていきます。
『そうか。この映画は家族を修理している映画なんだ』とここでようやく分かりました。
このような細かいセリフに、別の意味合いを持たせるのが是枝さんは本当にスマートです。
他にも『ソファ、汚さないようにね』というようなセリフには、過去に自分が母親にソファを汚して地下室に閉じ込められた時の話が効いていますし、マノンがアドリブで付け足した『服汚さなようにね』というセリフとも呼応しています。
見る側のリテラシーが求められるのが是枝さんの映画の特徴です。
表面的な物語の裏には、たくさんの情報とメッセージが込められています。
言うなれば、見る側のリテラシー次第で作品の見え方が大きく変わるのです。
『これって真実?』
そして、終盤に娘が口にする『ねえ、これって真実?』というセリフです。
このセリフは本当に多重的な意味を持っているとても重要なセリフだなと思いました。
実は娘は母親との関係をなんとかするために、台本を作り、そのように娘にも動いてもらっていることが分かります。
『これって真実?』というセリフは、そのことを言っているセリフであると同時に、映画というものそのものに対するセリフとも取れます。
そして、普段の自分たちの発言ややりとりだって、実際はその中にどれだけの真実があるでしょうか。
家族や恋人とのやりとり、友人や同僚とのやりとり。
その中にどれだけの真実があるのでしょうか。
そんなことを観ている側に問いかけるようなとても意味深いセリフです。
最終的には
最終的には是枝さんの映画らしく、全ては語らないながらも、いい方向へ少しだけ変化したことが示されて終わっていきます。
途中何を観ているんだ?という思いを抱きながらも、最終的には「良かった・・・」と思いました。
さらに何度か見ればもっと細かい部分がより分かってくるような気もします。
セリフにはいちいち意味があるようで、その全ての意味は一度観ただけでは理解しきれませんでした。