感想『(映画)マチネの終わりに』戻せない時間とともに

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

平野啓一郎さん原作小説が実写映画化されました。

『マチネの終わりに』

日本の小説家・平野啓一郎さんによる同名小説を原作とした映画で、2019年11月1日に公開されました。

監督は『容疑者Xの献身』などでも福山雅治さんとともに映画を撮っている西谷弘さんです。


主演は福山雅治さんと、石田ゆり子さん。

そして、伊勢谷祐介さんや、桜井ユキさん、板谷由夏さん、古谷一行さんなどが出演しています。

原作は毎日新聞で2015年から2016年にかけて連載され、単行本、文庫版とが発売されています。

あらすじ

クラシックギタリストとして活躍する薪野聡史は、あるコンサートの後の食事会でパリの通信社でジャーナリストをしてる女性、小峰洋子と出会う。

ギタリストとしての未来に不安を抱えていた薪野と洋子は次第に惹かれ合うのだが、洋子には婚約者がいた。


婚約者がいることを知りながらも、薪野は洋子のことを強く思い、マドリードで愛を告げる。

それぞれが現実と向き合いがなら次第に距離を縮めていく2人だったが、あることがきっかけで東京での再会はすれ違ってしまう。


そして、2人は会うことなく時は流れていき・・・。

大人の恋愛の物語

気になっていた映画『マチネの終わりに』見てきました。

これは予告の段階からいい映画そうだな・・・・と思っていて、原作も好きだったので早速見てきました。


たまたま映画館でのポイントがたまっていて、フリーパスみたいなのをもらうことができ、無料で見ることができました笑


原作は2016年に発売され、テレビなどでも紹介されたりしていた小説です。

さすがは平野啓一郎さんというような見事な小説でした・・・。


平野さんは京大出身というだけあって、本当に文化レベルの高い小説が多いです。


しかし、今まで意外となかったのが純粋な恋愛小説かもしれません。

『マチネの終わりに』は40手前の大人の恋愛を描いた作品とです。

時間というテーマ

映画を観る前に原作を読み直すことはしていなかったのですが、話の大筋は覚えていました。

映画版もとてもいい作品でした。


音楽も映像もとても綺麗で、福山雅治さんが実際に演奏しているのでコンサートのシーンなんかもとても自然です。


そして、パリ、東京、ニューヨークと、街の風景が本当に綺麗です。

この映画を観るときっと海外へ行きたくなると思います。


この作品のテーマの一つとして扱われているのが「時間」ではないかと思います。

途中、過去と未来の話もありますし、福山さん演じる薪野は若い時とは違っている自分のことを口にするシーンがあります。


そもそも『マチネ』とは朝や午前中のことを表すフランス語の言葉です。

『マチネの終わりに』とは朝、午前中の終わりにという意味なのです。


映画を見てこのタイトルの意味がとてもよく分かったような気がします。


薪野と洋子の2人は40歳近い大人の男女です。

そして、2人とも社会的には比較的高い位置にいる人であり、自分の職業や生き方もだいたい決まってきている2人です。


そんな2人が運命的に出会うのです。

『マチネ』とは人生の前半のことを表しているのではないかと思います。


なんとなく人生の先が見えてきて、もう直ぐ折り返しを迎えようかとしている2人が、運命的に出会い恋に落ちる。

『マチネの終わりに』あった運命の出会いを表しているのではないかと思いました。

ある出来事をきっかけに

そんな2人ですが、ある出来事をきっかけにすれ違い、会わなくなってしまいます。

これは原作でもよく覚えていたのですがなかなかに衝撃な展開・・・。


そして、ある出来事を起こす側の気持ちも決して分からなくはないです。

それだけにとても悲しい展開となっています。


それでも最終的に2人は再開します。

4年の時が流れ、それぞれの人生も先へと進んでいます。


再開した2人のその後は決して描かれることはありません。

しかし、2人は再開した後もそれぞれの生活へと戻っていくのだろうなと思いました。


この辺りは本当に大人の恋愛なんだなと・・・という感じでした。


それを表しているのが薪野が真実を知った後の部屋での描写です。

手に持っているグラスを割って、手が血だらけになってしまった・・・と思いきやグラスは割れておらず冷静な姿があるのです。


『花の形を知ってしまった後、蕾はもう同じような蕾には見えない』というようなセリフが終盤あります。

まさにその通りなんだな・・・と。

基本的には

とてもいい映画でした。


基本的には高い位置にいる2人の男女の恋愛の話です。

『万引き家族』や『岬の兄弟』という映画なんかを観ると、彼らがいかに恵まれているかが分かります・・・。


誰にもできる仕事ではないことを仕事にしていて、外部からの評価もともなっている。

そして、語学力も高く、高い文化資本を持っている2人なんだということが分かります。


しかし、そんな彼らの姿を限りなく嫌味なく、共感できるように描かれていると思いました。

40歳近くの不安感はおそらくギタリストでなくても誰しもが経験するものです。


そして、ふとしたところで運命的に女性と出会い、不思議ととても惹かれてしまう。

婚約者がいようともその気持ちを抑えられない。


実はとても普遍的なはないではないかと思います。


『僕らはもう出会ってしまったのだから』といセリフはとてもいいなと思いました。

人と人とは誰しも出会うことで少しずつお互いの運命を変えています。

その人と出会っていない人生に戻ることはできないのです。


見終て、僕はなぜかとても勇気をもらいました。

そして『頑張れ自分』と思いました。

そう思えるのはいい映画だという証拠です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*