感想・要約『ゲンロン10』大量死と探偵小説

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東浩紀さんが編集長を務めるゲンロンの最新号となります。

『ゲンロン10』

株式会社ゲンロンより出版されているゲンロンの最新号で、2019年9月26日に発売されました。

東浩紀さんによる論考から始まり、対談や特集、新しく始まる連載などが収録されています。

目次

[特別企画]投資から寄付へ、そして祈りへ――SOLIOの挑戦と哲学 家入一真+桂大介 聞き手=東浩紀
[論考]悪の愚かさについて、あるいは収容所と団地の問題 東浩紀

◆小特集 平成から令和へ
[対談]歴史は家である 高橋源一郎+東浩紀
[対談]国体、ジェンダー、令和以後 原武史+東浩紀

◆小特集: AIと人文知
[座談会]AI研究の現在とSFの想像力 長谷敏司+三宅陽一郎+大森望
[論考]メタ床――コミュニケーションと思考の発酵モデル ドミニク・チェン
[ブックガイド]人工知能と人文知を結ぶ15の必読書 山本貴光+吉川浩満
[ゲンロンセミナー]宗教建築と観光――ツーリズムとナショナリズムから見るロシアの現在 高橋沙奈美+本田晃子 司会=上田洋子

◆連載
[新連載]迂回路開発紀行 第1回 高山明
[新連載]芸術と宇宙技芸 第1回 ポストヨーロッパ哲学のために ユク・ホイ 仲山ひふみ訳
[新連載]理論と冷戦 第1回 右翼的なサルトル? イ・アレックス・テックァン 鍵谷怜訳
[論考]他の平面論 第8回 〈神話〉のなかの七〇年代美術史 黒瀬陽平
[論考]独立国家論 第9回 アメリカの夢、ソ連の夢 速水健朗

■創作
ディスクロニアの鳩時計 午後の部IX 海猫沢めろん

■コラム
イスラームななめ読み #1 イスラミック・ポップとヨーロッパ 松山洋平
国威発揚の回顧と展望 #1 政治の記号化に歯止めはあるか? 辻田真佐憲
ロシア語で旅する世界 #9 アートは地方都市を変えるか 上田洋子

ゲンロン最新刊

3年ほど前から会員となっているゲンロン。

最新刊となる『ゲンロン10』が先日発売されました。


会員ということですぐに手元には届いていたのですが、今回もなかなかに内容が厚く、最近になってようやく読み終えることができました。

表紙などの装丁のデザインは新しく一新されていて、背表紙に様々な著者の名前が書かれているようになっていました。


ゲンロンに書かれてる文章は、ぼんやりと分かるようなものもあれば、本当に全く分からないようなこともあります。

全くついていけずにちんぷんかんぷんなこともあったりもするのですが必ず一通り読むようにはしています。


トータルとしては分からないような話も、部分部分では「ここは分かる」というようなところもあったりして、それだけでも十分な気がするからです。

大量死とミステリー

ゲンロン10はいきなり東浩紀さんの『悪の愚かさについて、あるいは収容所と団地の問題』というなかなかに重い論考から始まります。


村上春樹さんの小説なんかも出しながら書かれているこの論考はとても面白かったです。


個人的に妙に納得してしまった部分が、『大量死』に関する記述です。

戦争や機関銃、特ガスなどによる名前のない『大量死』という歴史に抵抗する形として生まれたジャンルが探偵小説だというのです。


戦争などではそれこそゴミのようにたくさんの人の命が奪われます。


しかし、探偵小説のようなジャンルの物語ではそうではありません。

探偵小説は『ある特定の誰かの死』を描いているものが多いです。

それは大量死とは対極にある『お膳立てされた死』とも言えます。

1人の人物の死をめぐり、たくさんの考察がなされ、たくさんの人が動かされるからです。


この『大量死』に抵抗する形としての探偵小説という指摘・・・
なるほどな・・・と思わずにはいられませんでした。

他にもたくさんの

この他にもたくさん面白い文章がいくつも掲載されていました。


AIに関することもあれば、ネットの世界をぬか床に例えているようなものもありました。(これはとても面白いです。)


そして、今回も全く分からないようなものもいくつかありました。

予備知識がないからというのもありますが、根本的な教養のようなものが足りていないなと思うような部分もありました。


しかし、それでも僕はこの本を読み続けたいと思っています。

会員特典として付いてきた『ゲンロン10.5』も続けて読んでいきます。

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