
原作を読んだ当時は大学生で、リアルすぎました・・・
『何者』
小説家である朝井リョウさんの直木賞受賞作である同名小説を原作とする日本映画です。
2016年10月15日に公開されました。
主演は佐藤健さんと有村架純さんで、二階堂ふみさん、岡田将生さん、菅田将暉さん、山田孝之さんなどが出演しています。
監督・脚本は三浦大輔さんが担当しています。
音楽は中田ヤスタカさんで、主題歌は『NANIMONO(feat.米津玄師)』となっています。
あらすじ
演劇サークルに属し、人を分析するのが得意な二宮拓人は就職活動を迎えていた。
拓人と一緒に暮らしている光太郎や、拓人の想いを寄せている瑞月。
留学経験があり、意識の高い理香。理科と同棲している隆良の5人は就活対策ということで定期的に集まるようになる。
それぞれの強みを分析し、協力し合っている「ように見えた」5人だったが、1人2人と内定が出ていくことでバランスが崩れていく。
そして、SNS上ではそれぞれの本音が溢れていた・・・。
小説現原作の
『何者』は朝井リョウさんの長編小説を原作とする映画です。
原作は直木賞を受賞している小説で、話題になっていました。
原作が発売された当時、僕は大学生でした。
そして、まさに就職活動をしている最中だった気がします。
正直、あまりにもリアルすぎて、ところどころ耳が痛いような部分も結構あったことを覚えています・・・。
朝井リョウさんの小説は、本当は誰しもが気がついていながらも、なかなか言語化して自覚することを嫌がるような部分を物語にしているものが多いです。
デビュー作である『桐島、部活やめるってよ』なんかもまさにそのような作品です。
どの学校にも確かに存在して、誰しもが経験している『スクールカースト』というものを、絶妙な視点と、切り取り方で表現しているような作品です。
この『何者』もまさにそのような作品となっています。
就職活動を舞台とした
『何者』で描かれているのは就職活動をする大学生たちです。
主に5人の大学生を中心として話は進んでいきます。
5人それぞれ個性のある人物となっているのですが、正直見ていて「あーいるいる。こういう人・・・」と何度思ったことか・・・笑。
おそらく近年の大学生であれば、誰しもが既視感を感じてしまうような人物ばかりとなっています。
そして、細かい設定や表現に至るまでいちいち細かいです。
何も考えていないように見える光太郎が、実は押さえることろは押さえていて、いち早く内定を獲得するようなところや、留学経験がありいろんな経験を積んでいるように見える理香がなかなか内定を取れないところも。
本当にいちいちリアルすぎました。
SNS表現
そして、本当に現代的で、本当にリアルだな・・・と思ったのがSNSの扱い方です。
登場人物たちはそれぞれSNSのアカウントを持っていて、SNS上でのつぶやきが描かれます。
そこには、登場人物たちが何を思い、何を感じているのかが表現されています。
そして小説版では文章による内面描写があるので、さらにいい効果を持っているなと思いました。
SNS上での「非匿名で見せる自分」と「匿名でのみ見せる自分」。そして、小説だからこその内面描写と、3重で登場人物か形作られているのです。
このような表現は、少なくともネットの普及していなかった時代の小説には絶対になかったものです。
内定を経て
登場人物たちが内定を取ることによって、話は別の展開を見せていくこととなります。
みんなが内定を獲得していない状況では、みんなが同じ立場で協力しあっているように見えていたのですが、内定を取った人と、そうでない人が出てくることによって、それぞれの抱えている黒い部分が表出していくこととなるのです・・・。
これは小説も映画も共通ですが、このあたりは本当に恐ろしいです。
ある種のホラーと思えるほどでした・・・。
特に、主人公的な立ち回りとなっている拓人君。
彼はある秘密を抱えていて、終盤それが明らかになります。
実は最初から違和感のようなものは少しずつあったのですが、秘密が明らかになった後は「うわぁぁぁ・・・」と思ってしまいました。
映画版では
映画版では、終盤に拓人君がやっていた演劇をうまく使っている表現があります。
ここは本当に上手いなと思いました。
演劇をさらに客観的な視点で切り取っている映画的表現で、凄いなと思いました。
途中、目を背けたくなるような部分もありながらも最終的には希望を感じられる結末にもなっているとも思いました。
最終的に登場人物たちはそれぞれ自分自身と向き合うこととなり、少し成長します。
そして、次のステージへと駒を進めていくのです。
最後に佐藤健さん演じる拓人君が扉を開くシーンは良かったです。
これはカッコ悪い自分を受け入れる『自己受容』の話なんだな・・・と。
人生の若い時期に見ていて損はない作品だと思います・・・。