感想・解説『劇場:又吉直樹』2020年には映画公開予定

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又吉さんの小説です。

『劇場』

お笑い芸人である又吉直樹さんによる長編小説で、2017年4月号の『新潮』に掲載され、5月に新潮社より単行本が刊行されました。

執筆自体は『火花』よりも先に始めていて、『火花』を完成させた後に書き上げたとのこと。


2019年9月には新潮文庫より文庫版も発売されています。

また、山崎賢人さんと松岡茉優さん主演、行定勲監督で映画化される予定となっていて、2020年に公開される予定です。

あらすじ

高校を卒業した永田は、学生時代からの友人である野原とともに大阪から上京し劇団を立ち上げる。

演劇で成功することを夢見ていたが、現実は甘くなかった。


そんな中、永田は東京の大学に進学すべく上京してきた沙希という女性と出会う。

二人は付き合うこととなり、一緒に住み始めるのだが時間の経過は二人と二人の関係性を少しずつ変えていく。

恋愛小説

『劇場』は又吉さんが芥川賞を受賞する前から執筆が始められていたという恋愛小説です。

文庫版の帯には、「恋愛というものの構造がほとんど理解できていない人間が書いた恋愛小説です。」ということが書かれていました。


『火花』は恋愛の要素も少しはあったような気がしますが、基本的には『お笑い』『漫才』の世界を描いた作品でした。

『劇場』も似たように演劇で成功することを夢見る若い男が主人公ではあるのですが、主軸となっているのは沙希という女性との恋愛の話です。

二人の関係性を描く

又吉さんは『ある特定の二人』の関係性を描くのが上手いなと思います。


『火花』であれば、主人公と尊敬する先輩との関係性もあり、主人公と漫才の相方との関係性です。

この『劇場』は沙希という恋人との関係性がそうです。

芸人として、常に相方との関係性を考えざるを得なかったから?かは分かりませんが、そういった『二人』の世界を描くのが上手いです。


そして、登場する人物はどこか生き辛さを抱えている不器用な人物が多い気がします。

素直に人に気持ちを伝えられない。素直に人と、世界と関わることのできないような不器用な人物を描いています。

そして、その不器用さはどこか自分にも通ずるものがあると思ってしまいます。

感情を爆発させる

クライマックスでは『火花』と少し似たような部分があるなと思いました。


それは、『火花』であれば漫才を、この『劇場』であれば演劇という、『あるフィルター』を通して今まで言えなかった本音を爆発させるという部分です。

今までなかなか本音でぶつかり合うことができなかった二人が、舞台の上で始めて感情を爆発させるというようなシーンがあります。


おそらく本人たちも無意識的に自覚していた『夢の終わり』をついに受け入れる瞬間のようにも見えます。

このシーンは悲しいシーンでありながらも、とても美しく描かれていると思います。

最後に二人で

ここも『火花』と似ているのですが、『夢の終わり』を迎えた後に最後に二人で会話をするシーンがあります。


『火花』では先輩芸人である神谷という人物と居酒屋で話をするシーンがあります。(ここでの会話は本当に凄いなと思いました。まさに芸人だからこそかけるような『お笑い』に関するとても本質的なことが書かれています。)


『劇場』では、永田と別れ実家へ帰ることとなった沙希と、住んでいた家を片付けるシーンがあります。

ここでの会話は本当に切ないです。

もう終わっている二人が、昔のように笑うことができないかとなんとかしようとしているのが伝わってきます。

映画化される予定

『劇場』は映画化されることが決まっています。

山崎賢人さんと松岡茉優さん主演で2020年公開予定とのこと。


『火花』も『劇場』もそうですが、又吉さんの小説の腕は確かなものなんだなと思いました。

芥川賞の受賞も話題性なんかでは絶対にありません。

確かな小説の力で受賞しているはずです。


先日、3作目となる『人間』という小説が発売されました。

これも読んでみます。

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