感想『君の名前で僕を呼んで』静かで美しい青春映画

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少し難しかったですが、いい映画でした。

『君の名前で僕を呼んで』

2017年にイギリス・フランス・ブラジル・アメリカによる合作として制作された映画です。

監督はルカ・グァダニーノで、主演はティモシー・シャラメとアーミー・ハマーが務めました。


原題は『Call Me By Your Name』で、アンドレ・アシマンによる同名小説を原作としています。

第90回アカデミー賞では脚色賞を受賞しています。

あらすじ

1983年。17歳のエリオは両親とともに北イタリアの別荘で一夏を過ごしていた。

アメリカの名門大学で考古学を教える父と、数カ国語を話すことのできる母親をもつエリオは、たくさんの文学や古典を読み、翻訳や音楽の編曲を趣味とするアカデミックな青年だった。


父親であるパールマン教授は、毎年博士課程の学生を一人アシスタントとして別荘に招待していた。

その年にやってきたのは博士論文を執筆中のオリヴァーという青年であった。

エリオは自信満々で、知性み溢れるオリヴァーのことを最初は嫌悪するのだが、次第に彼に対して不思議な感情を抱くようになっていく。

とても美しい映画

『君の名前で僕を呼んで』は2017年(日本では2018年)に公開された映画です。

公開されて映画館で観ました。

時間があればもう一度じっくりと見返したいと思っているのですが、なかなか見ることができずにいる映画です。


この映画では、北イタリアの別荘を舞台とするとても静かで、美しい映画です。

しかし、男性同士の同性愛という結構センシティブなテーマを扱っている作品でもあります。


主人公とも言えるエリオという青年はとても賢く、とても繊細そうな男の子です。

社会的に高い地位にいる父と母の元に育ったとても恵まれている青年です。


そんなエリオの元に一人の年上の男性が現れます。

オリヴァーという博士課程のその学生は、エリオの父親の教え子であり、恵まれた容姿と高い知性を持っている青年です。


最初はオリヴァーのことを嫌悪していたエリオだったのですが、次第にオリヴァーに惹かれていきます。

それは『人として惹かれる』という以上の感情に次第になっていくのです。

何もないように思えるようで

この映画は、そんな二人が過ごす一つの夏を描いています。

それは本当に静かに、何も起きていないかと思えるように進んでいきます。


しかし、よくよく観てみると細かい描写までとても細かく作られています。

そして、エリオという青年の感情の機微をとても繊細に表現していると思いました。


主演の二人は、本当に役そのものと思えるほどです。


エリオを演じているのはティモシー・シャラメという俳優で、最近たくさんの映画にも出ています。

彼は、少し脆さのある繊細な男性を演じるのが本当にうまいです。


そして、オリヴァーを演じているのはアーミー・ハマーという俳優さんです。

この人は『ソーシャルネットワーク』という映画にも出演していた俳優です。


身長190センチ以上のイケメンで、さらに父親は会社の経営者、曾祖父は石油王という、本当にこんな人いるんだ・・・と思えるほど恵まれている人です。

そんな彼はこのオリヴァーという役に本当にぴったりです。


自信家でありながらも知性的でもある。

それでいて物腰も柔らかく、同性にも異性にも不快感を与えないような人物として描かれています。

学者である父親

主人公のエリオの父親は大学で考古学を教えている学者です。

彼もこの映画には欠かせない人物であると思います。


彼はエリオの変化に気がついています。

しかし、深く干渉することは決してせずに成長することを見守っているのです。


そして、彼が終盤にエリオに言った言葉がとても印象的でした。

一言一句とまでは覚えていないのですが、彼はこのようなことを言うのです。


「普通の父親であれば、お前のような息子を矯正施設へ入れようとするかもしれないだろう。しかし、私はそのような父親ではない。お前が今抱いている感情は、少なくとも私は経験したことのない感情だ。そのことを私は羨ましく思う。苦痛があるなら癒せばいい。炎があるなら吹き消すな、乱暴に扱うな。炎によって夜に起きていられるなら、それを消すのはひどいことだ。」


なんと言う知性に溢れた、理解ある父親の言葉なんだろう・・・。

実際はもっと長いセリフとなっているのですが、おそらくこのセリフにこの映画の全てが込められているのではないかと思いました。

全体を通して

全体を通して、とてもアカデミックで、文学的な映画だなと思いました。


いい意味での余白がたくさん残っている映画でもあり、そこに観ている側は入り込む余地があります。

個人的にはそのような映画の方が好きです。

ある一つの物語、一つの価値観を押し付けてくるような映画ではなく、最終的に何を受け取るのかは観客に委ねてくれているような。そんな映画です。

おそらく年を重ねて再び観れば、また違うことを感じる映画です。

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