感想・要約『ケーキの切れない非行少年たち:宮口幸治』認知という視点から非行を見る

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本屋で気になったので買って読んでみました。

『ケーキの切れない非行少年たち』

立命館大学教授であり、児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務する宮口幸治さんによる著作です。

2019年7月20日に新潮文庫より刊行されました。


その後徐々に話題ともなり10万部以上を売り上げています。

200ページ弱の本で、全部で7つの章からなっています。

認知の問題

『ケーキの切れない非行少年たち』は少し前に発売された新書です。

書店のランキング的なところで上位となっていたので、面白そうだと思い買ってみました。


新書なので、あまり文章が多すぎることもなく、とても読みやすい本でした。

そして、おそらく誰しもが完全に他人事とは言えないようなことを扱っている本でもありました。


この本の面白いところは、少年犯罪に対して動機や更生という部分に焦点を当てるのではなく、『認知』という部分にスポットを当てているところです。

少年たちは『認知』という部分に問題を抱えていて、『世界そのものが歪んで見えている』というのです。


それが非行の原因にもなりうるし、更生することの難しさもそこにあるというのです。


著者は少年院にて『反省以前』の子供達とたくさん出会ったそうです。

非行を犯した子供たちが更生していくステップとして、自分の犯した罪と向き合い、被害者のことを考えるというような『自己洞察』が不可欠です。


罪の重さを理解し、被害者の苦しみを理解しなければなりません。

しかし、この本ではそんな「反省」とかいう話以前の子供達が一定数いるというのです。

ケーキを等分に切ること

タイトルともなっていて、帯にも図が乗っているケーキを等分するという話があります。


著者が非行少年たちと接していて驚いたことの一つに、ケーキを均等に切ることができないということが挙げられています。

丸い図を与えられ、このケーキを3人で平等に分けるとなった時、どうするかという問いを与えられた時、少年たちは驚くべき回答をするのです。


実際にどんな図を書くのかは本を見てもらうしかないのですが、このような簡単に思えることもできない子供もいるというのです。

このような子供達に対する矯正教育がいかに難しいかは容易に想像がつきます。


そして、このような子供達が、学校において、社会において、いかに生き辛さを抱えてきたかも分かるような気がします。


これはどのような矯正教育を行うかという以前の問題です。

まさに『反省以前』の話であり、そもそもの認知機能に異常があるとするならば、どんな矯正教育も意味をなさないでしょう。

内側にしか取っ手のないドア

本筋とは若干違うのかもしれませんが、この本に描かれていたとても新鮮だった指摘が「受刑者を納税者に変えれば国力が上がる」というものです。


刑務所にる受刑者一人を養うのには年間約300万円ほどかかっていて、勤労者は平均で100万円ほど税金を納めている。

つまり受刑者を健全な納税者に変えることができれば年間一人当たり400万円ほどの経済効果になるというのです。


なるほど・・・。


経済的な視点で受刑者のことを考えてみたことはなかったのですが、確かに言われてみれば確かにその通りです。

被害者の数が減り、経済効果もあるとなれば、回り回って国力が上がることにもつながるでしょう。


そして、妙に印象に残ったのが「子どもの心に扉があるとすれば、その取手は内側にしかついてない」という言葉です。

最後の章である第7章は、ではどうするべきか?という章となっています。


そこでこの言葉が登場します。

あくまで子どもが自分自身を見つめ直すスイッチは子どもの内側にしかなく、それをいかに手助けするかが重要だというのです。

手に取ってみて欲しい本です

読んでみて、読んでよかった本だなと思いました。

新しい視点を示してくれたような気がしました。

たくさんの人にぜひ手に取って欲しいです。

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