感想『それでも夜は明ける』差別という歴史に

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アカデミー作品賞も受賞している映画です。

『それでも夜は明ける』

2013年にアメリカとイギリスで製作されたドラマ映画です。

原作は1853年発表された黒人奴隷ソロモン・ノーサップの奴隷体験記である『Twelve Years a Slave』という本です。


監督はスティーヴ・マックウィーン、脚本はジョン・リドリー。

主演はキウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ブラッド・ピットなどが出演しています。


アカデミー作品賞を始め、数多くの映画賞を受賞している作品です。

あらすじ

自由黒人であるソロモン・ノーサップはヴァイオリニストとしてニューヨークで妻と二人の子供と暮らしていた。


ある日、ノーサップは二人組の男に金儲けができる公演に参加しないかという話を持ちかけられる。

しかし、ノーサップは二人の男に誘拐されてしまい、昏睡状態のまま奴隷商人に売られてしまう。


自分は自由黒人だと主張するノーサップであったが、聞き入れられることもなくフォードという材木商の元に買い取られる。

フォードは温和な農園主であり、ノーサップはそこで奴隷として働くこととなるのだが・・・。

1800年代のアメリカの闇を描いた

『それでも夜は明ける』は黒人奴隷による本を原作とした映画作品です。

2013年に公開されていて、アカデミー賞では作品賞も受賞している作品です。


劇場では観ていないのですが、DVDで何度か観ました。

笑えるような面白さを持ってる作品ではありませんが、とても意義のある、世界の現実をしっかりと描いている映画だと思いました。

まさにアカデミー賞を取るべき作品だなと思います。


1800年代のアメリカでは、黒人に対する差別が依然として残っていました。

そして、劇中で描かれているように人を物のように扱い、売買されていました。


ノーサップは話を持ちかけられた二人組に薬を盛られ、そのまま奴隷として売られてしまうこととなります。

自分の身元を主張するのですが、聞き入れられることはなく家族と離れ離れにされてしまいます。

現代に生きる人からしたら、信じられないと思えることかもしれませんが、この映画で描かれていることは基本的にはノンフィクションなのです。

二人の農園主の元で

ノーサップは二人の農園主の元で奴隷労働をすることとなります。

二人の農園主は、表面的には異なる思想を持っている人物かのように描かれています。


しかし、彼らは本質的には違ってはいません。
黒人を劣っている存在だと差別し、労働者として便利使いしています。


映画を見ていると、彼らは本質的には弱いのかもしれないということが分かります。

自分たちが差別をしていること、過酷な労働を強いていることに自覚的だからこそ、彼らは「いつか報復されるのでは」ということを無自覚的に恐れています。

だからこそ、より一層差別を強めてしまうのかもしれません。

自分があの環境にいたら

もし自分があの環境にいたら、どうするのが正しいのかははっきりとは分かりません。


心情的には「黒人たちはかわいそう」「差別はいけないことだ」と思いますし、それが正しいのだということは分かります。

しかし、自分があの時代に生きていたとして、自分が白人だとしても、黒人だとしても、そんな正論を主張することができたでしょうか。


おそらく他の多くの人と同じように、差別の輪の中に入らざるを得ないと思います。


この問題が根深いのは、差別の問題は今となっても完全に解消されているとは言いがたいところです。

人種による差別ではないにしても、雇用者と労働者という関係性なんかはどこにでも普通に存在します。


劇中の黒人ほど過酷な環境を強いられることはないものの、どこかで労働者は搾取されているのが現実です。

知らない世界を知るということ

映画の持っている大切な役割の一つとして、自分の知らない世界の現実を知ることができるとうことです。

娯楽としての映画も好きですが、『それでも夜は明ける』のような映画はとても面白いです。


知らなかった世界を視覚的に物語として観ることができるからです。


そして、そこにある歴史的な背景なんかにもとても興味が湧きます。

関連した本や映画をいくつか読んだ気がします。

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