感想・解説『トラペジウム:高山一実』アイドルの描くアイドルの世界

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気になっていながらも、なかなか時間が取れなかったのですが、ようやく読めました。

『トラペジウム』

アイドルグループ乃木坂46の初期からのメンバーである高山一実さんの小説デビュー作。

2016年4月より雑誌『ダ・ヴィンチ』にて連載が開始され、2018年11月にKADOKAWAより単行本が出版されました。

20万部以上を売り上げているヒット小説となっています。

あらすじ

アイドルになることを夢見ている高校1年生の東ゆうは東西南北の美少女を仲間にすべく、とある私立の学校を訪れていた。

ゆうはそこで、一人の美少女と出会い連絡先を交換する。


そして、工業に通っているロボット好きの女の子と、施設でボランティアをしている女の子とも出会い、『南』『北』『西』を仲間にしたゆうはアイドルとなるべく動き始める。

とある番組の企画を任され、事務所にも所属しアイドルとして活動していく4人だったのだが・・・。

アイドルによるアイドル小説

『トラペジウム』は乃木坂46の高山一実さんによる小説です。

なかなか読む時間を確保できずにいたのですが、ようやく読むことができました。


読み始めてみるととても読みやすく、あっという間に読むことができました。


最近は多ジャンルで活躍している人が書いた小説が出版されることが多々あります。

お笑い芸人の又吉直樹さんの『火花』などもそうです。


『火花』が芥川賞を受賞していることからもわかるように、それらの小説は決してクオリティの低いものではないものも多いです。

そして、「その人だからこそ書ける」ような本を書いている場合も多く、面白いものも多いです。

お笑い芸人やアイドルには彼ら、彼女らでしか見ることのできない世界があり、それを書くだけでも一般人からしたら新鮮なのです。

アイドルを目指す高校生

『トラペジウム』もまさにそのような小説でした。


『トラペジウム』とは不等辺四角形という意味です。

主人公である東ゆうは自分を含めた東西南北の美少女を集めてアイドルを目指そうとするのです。


最初はうまくいっているかのように見えた4人だったのですが、次第にアイドルという職業の厳しさを知っていくこととなります・・・

4人のアイドルに対する情熱はまさに不等辺四角形のように同じではなく、ゆう以外はアイドルを辞めることとなります。


それでも主人公のゆうはアイドルを諦めることができないのです。

この小説ではアイドルという仕事の大変さや、辛い部分をしっかりと描きながらも、それを諦めることのできない主人公の気持ちもしっかりと描かれています。


誰に何を言われようとも嫌いになれない何かが誰しもあるものです。

そんな何かを追い求める話を描いている映画や小説は嫌いにはなれません。


そこにこそ、本質的な救いを見出すことができるような気がするからです。

現役のアイドルにしか見えない世界

高山一実さんは今や日本一のアイドルグループといっても過言ではない乃木坂の一員です。

第1期生として9年近く活動しています。


全く無名の状態から始まり、辞めていったメンバーもたくさんいます。

そして、その全てが美しい辞め方ではなかったはずです。


この小説にはそんな様子も描かれています。

ごく普通の高校生だった女の子たちが『アイドル』という不特定多数の人から見られることを仕事とする世界に飛び込んでいく。


そこで得ることのできる喜びと苦悩・・・。

主人公はそんな世界での喜びを諦めることができなかったような人物です。

アイドルは特殊な仕事

アイドルはとても華やかな仕事だと一見思えます。

そういった側面があるのも間違い無いのですが、実際は決してそんなことはありません。


喜びと苦悩を天秤にかけたとき、喜びの方が少ないと感じてしまう人も多いのでしょう。

それでも、この仕事は確かに存在している仕事であり、必要としている誰かがたくさんいる仕事でもあるのです。


単なるアイドル小説かと思っていましたが、そんなことはありませんでした。

一つの青春が終わり、次へと進んでいく姿が描かれています。

そして、最後はなかなかいい感じでした・・・。


おそらく、この作品は乃木坂の誰かしらが出演する形で映画化かドラマ化される気がします。

そうなった時、是非見に行きたいです。

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