感想・要約『マンソン・ファミリー 悪魔に捧げたわたしの22ヶ月』

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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』という映画を見て興味を持ち、読んでみました。

なかなかに衝撃的な本でした。

恐ろしいことでありながら、とても読みやすい本となっていました。

マンソン・ファミリーに属した少女の自叙伝

マンソン・ファミリーに実際に属していたダイアン・レイクさんと、作家であり法律家であるデボラ・ハーマンさんによる著作です。

山北めぐみさんの翻訳でハーパーBOOKSより刊行されました。


著者であるダイアンの幼少期から、マンソン・ファミリーに属し、教団から離脱し、人生を再建するまでが事細かに書かれています。


3つの章に分かれていて、第一部は『めざめ』という章で、どのような家庭に育ち、いかにしてマンソン・ファミリーに入るに至ったか。

第二部は『傾倒』という章で、ダイアンがどのようにカルト教団に心酔していくか。

第三部は『離脱』で、殺人事件が起き、教団から離れ、人生を再建していくかという章となっています。


一番厚いのは第二部となっていて、ここでは後々冷静になって考えれば狂っていたと分かるのにも関わらず、なぜ教団へ心酔してしまうこととなったかが書かれています。

マンソン・ファミリーとは

マンソン・ファミリーとはチャールズ・マンソンという人物を中心としたアメリカのカルト教団のことです。

1960年代後半から、1970年代にかけてアメリカのカリフォルニア州でコミューンを率いて集団生活をしていました。


家出したヒッピー少女たちを集め、ドラッグで洗脳し信者を増やしていたといいます。

そして、1969年にはシャロン・テートというハリウッド女優を含む5人を殺害する無差別殺人を起こしています。

その後教団は裁判にかけられ、チャールズ・マンソンは死刑となっています。(後に死刑制度が廃止されたために、終身刑となり、その後病死しています)


当時は結構な話題となり、衝撃的な事件だったのですが、僕はまだ生まれる前でもあり、全く知りませんでした。


彼らのことを知るきっかけとなったのが、最近公開されたタランティーノ監督で製作された『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』という映画です。

映画はシャロン・テート殺人事件を扱ったものとなっていて、マンソン・ファミリーも劇中に登場します。


なんの知識もなく映画を見たのですが、なんのことだか全然分からず・・・。

後々色々と調べてみて見つけたのがこの本でした。

閉鎖性とドラッグ

この本では、ダイアンという14歳の少女がいかにしてカルト教団へ入り、マンソンという人物に心酔していくのかが描かれています。


マンソン・ファミリーは古い西部劇の映画セットのようなところで集団生活をしていました。

その閉鎖的な世界で家出少女たちを洗脳していたのです。


読者として外の世界からの視点で見ると、その世界がいかにおかしいかがはっきりと分かります。

しかし、その内側にいる人たちがなぜそこから離れる事ができなくなってしまい、心酔してしまうこととなったのかもこの本を読むと分かります。

閉鎖的な世界においてドラッグやセックスに溺れ、チャールズ・マンソンという人物による精神的な支配。

著者であるダイアンは、次第にマンソンは誰よりも正しく、自分たちを正しく導いてくれると本気で信じていたと述べられています。


この出来事の恐ろしいところは、50年近く前に遠い国で起きた事件でありながらも、完全に他人事とは思えないところです。

ここで起きていることは日本に生きる僕にも、現代に生きる僕らにも確実に地続きとなっていると思います。

人心掌握

チャールズ・マンソンの行なっていた洗脳は極めて人の本能のようなものに即したものとなっています。


まずは、行き場のない家出少女たちであるということ。

そして、ドラッグにより判断力を奪い、外の世界との接点を断ち閉鎖的な空間い閉じ込めます。

さらにセックスという人の本能的な部分で縛ることによって、人は支配されてしまいます。


マンソンは、そのことを誰に教えられるでもなくやっていたのです。

彼の最終的な目的がなんだったのかは分かりません。


しかし、彼が強大な支配力を持っていたことは間違いありません。


ある意味において、彼はすごい人物でもあるのです。

方向性を間違えてはいたのですが、たくさんの人を支配し、心酔させていたのです。

シャロン・テート殺人事件

閉塞感を感じていたファミリーは、その鬱憤が最悪の形で表面化してしまうこととなります。

ハリウッド女優であるシャロン・テートいう人物を始めとした5人を無差別に殺害するという事件を起こしてしまうのです。


しかし、著者であるダイアンにとってその事件は教団から離れるきっかけとなりました。

マンソンは裁判にかけられ、そこでダイアンはマンソンがいかに狭量な人物であるのかをはっきりと理解します。


そして、教団から離れ人生を再建していくこととなるのです。

読み物として

なかなか分量のある本でしたが、文章はとても読みやすい本でした。

現実とは思えないほどの恐ろしい事が書かれていながらも、ある意味でとても『面白い』本でした。


改めて、本というものが持っている本質的な意義を教えてくれるような本でもあります。

本は、このような事を記し、後世へと伝えていくべきなのかもしれません。


そしてきっかけとなった映画である『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。

これももう一度観に行こうかと思います。

また違う見方ができるような気がしています。

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