
村上春樹さんの長編小説です。
長いけど、読みやすくて面白い小説でした。
『1Q84』
日本の小説家である村上春樹さんによる長編小説で、2009年から2010年にかけて刊行されました。
書き下ろしによる作品となっていて、2009年5月29日にBOOK1とBOOK2が、その約1年後の2010年4月19日にBOOK3が発売されました。
3冊すべてがミリオンセラーとなっていて、2012年には全6冊の文庫版も新潮文庫より刊行されています。
短編小説である『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』という話を元にされていて、タイトルはジョージ・オーウェルの小説である『1984年』から取られています。
あらすじ
スポーツインストラクターをしている女性である青豆は、老婦人である緒方から女性をDVで苦しめる男たちを暗殺する仕事を引き受ける。
その一方で予備校で数学を教えながら小説を書いている天吾は編集者である小松という男と知り合う。
小松はふかえりとう少女の書いた『空気さなぎ』という小説のリライトを天吾に勧める。
天吾によってリライトされた『空気さなぎ』は、新人賞を受賞し、爆発的にヒットする。
そんな青豆と天吾はそれぞれ別々の形で『1Q84年』という別世界に入り込んでいることに気が付き始める。
二人はその世界で『さきがけ』という宗教団体の関わる事件に巻き込まれていく。
二人は10歳の頃出会っていて、それ以来会っていなかったのだが・・・。
書き下ろし長編小説
『1Q84』は村上春樹さんの書き下ろしによる長編小説です。
本が好きな人であれば、おそらく多くの人が知っているであろう作品の一つです。
発売されている3冊ともがベストセラーとなっていて、社会的にも大きな話題となっていました。
僕が最初に読んだのは大学4年生の頃だったかと思います。
村上春樹さんの小説は、そこまでたくさん読んだことはなかったのですが、僕はこの作品で村上春樹さんのファンになるとともに、小説というジャンルそのものをすごく好きになってしまいました。
それほどの力を持っている作品だだったと思います。
決して短い小説ではないのですが、飽きさせない『読ませる力』に驚かされました。
総合小説
村上春樹さんは『カラマーゾフの兄弟』のような総合小説を書きたいというようなことを言っています。
総合小説とはジャンルに縛られることなく、あらゆるテーマを含んでいるような総合的な小説のことです。
『1Q84』は村上春樹さんの小説の中では最も総合小説と呼ぶにふさわしい小説ではないかと個人的には思います。
軸となる話はとてもシンプルなものです。
離れ離れになった少年と少女が不思議な世界の中で再開するという話です。
しかし、この小説にはこれでもかとばかりに豊かなそれ以外の要素がたくさん含まれています。
ふかえりという少女による『空気さなぎ』という小説や、リトルピープルという謎の存在。
そして『さきがけ』という組織や、『1Q84』年という並行世界も登場します。
読んでいる間は本当に飽きることがありませんでした。
長いけど、スラスラと読むことができます。
村上春樹初心者にも
僕はこの『1Q84』は、村上春樹をあまり読んだことのない人にこそぜひ読んで欲しいと思っています。
物語の中に引き込まれ、小説を読むことそのものの喜びを感じることができる小説だと思うからです。
過去の村上春樹さんの小説を読んでいれば、より楽しめるような部分もあるかもしれませんが、入り口として読むにも十分です。
BOOK1とBOOK2は青豆と天吾の話が交互に進んでいくのですが、BOOK3は牛河という男が登場します。
牛河は元弁護士の男であり、『さきがけ』の裏の仕事を担っている男です。
そして、牛河は青豆のことを監視することとなるのです。
BOOK3にきて、突然別の男による視点が持ち込まれるところは面白いなと思いました。
牛河はある意味で僕たちと同じ視線で物語を見ている人物とも言えます。
そんな男の視線で語られる『1Q84年』の世界はまた新しい視点を持ち込んでくれます。
ハルキムラカミの凄さ
この小説は小説家としてのハルキムラカミの凄さを改めて知った作品でした。
海外でも出版され、たくさんの人に読まれている作品です。
そして、小説でしか与えることのできない快楽にあふれている小説でもあると思います。
この話は映画やドラマ、漫画などでは決して描きだすことのできないものです。
ある程度本を読む人でも、そうでない人でもきっと楽しむことのできる作品です。