
読んだことなかった太宰治の小説。
今度映画もあるとのことで読んでみました。
『人間失格』
日本の小説家、太宰治による中編小説です。
『走れメロス』や、『斜陽』に並ぶ太宰治の代表作品の一つで、1948年に雑誌『展望』に三回にわたって掲載されました。
太宰治はこの作品を書き上げた後に入水自殺しており、死後の7月25日に筑摩書房より刊行されました。
また、新潮文庫からも刊行されていて、累計670万部以上を売り上げるロングセラーとなっています。
2010年には生田斗真主演で映画化もされていて、アニメや漫画にもなっています。
2019年には『人間失格 太宰治と3人の女たち』という映画が公開されますが、これは本書を原作としたものではなく、太宰治自身の人生にスポットを当てたものとの事です。
あらすじ
「はしがき」「第一の手記」「第二の手記」「第三の手記」「あとがき」からなっています。
「はしがき」「あとがき」は「私」視点のものとなっていて、主人公である大庭葉蔵の手記とされるのは「第一〜三の手記」となっています。
「恥の多い人生を送ってきました」
手記はそんな一文から始まります。
「自分」は他の人とは異なるという強い感覚を持っていて、その事実に混乱を覚えていた。
人とうまく関わることのできない「自分」は他者と関わるための道化を演じることを覚える。
旧制高等学校へと進んだ「自分」は、人間への恐怖を紛らすために、悪友である堀木により酒、タバコ、淫売婦、左翼思想に浸ることとなる。
何人かの女性と関わり、自殺未遂を経ながら「自分」は次第に破滅への道を歩んでいくこととなり・・・。
太宰治の代表作
『人間失格』は作家である太宰治の代表作となっている小説です。
存在は知っていたのですが、なかなか読む機会がなく、今回『人間失格 太宰治と3人の女たち』という映画が公開されるにあたり読んでみました。
日本文学史における傑作として読み継がれていて、これからも読み継がれていくであろう作品です。
読み終えてみて、そこまで高い評価を受けることが分かるような・・・分からないような・・・そんな印象でした。
『人間失格』は太宰治が自分自身のことを書いているいわゆる私小説というものではないとされています。
しかし、この作品には太宰治の極めて本質的な、内面化から湧き出てくるような思想が込められているような気がしました。
「自分」と太宰治
この小説は「自分」という手記の語りで進んでいきます。
「自分」は、人とは違うという感覚を強く持っていて、それを隠し世間とうまく折り合いをつけていくために道化を演じることとなります。
しかし、その道化が見抜かれそうになり、旧制高等学校へ入学してからは酒やタバコ、女性というものに放蕩していきます。
そして、画家を志すものの夢は叶わずに漫画家として生きていくこととするのですが、アルコール中毒となり、薬物中毒となり、病院へ入ることとなるのです。
そこで出てくるのが『人間、失格』という言葉です。
人間として終わってしまったと感じた「自分」は、不幸も幸福もないままにただ時間が過ぎていくこととなってしまいます。
なぜ多くの人が共感するのか
『人間失格』は一人の人間の破滅を描いた小説です。
なぜこの小説が、多くの人に共感され、読み継がれているのでしょうか。
それは、深い深い部分で誰しもが持っている感覚や、欲望をしっかりとすくい取り、描き出しているからではないかと思います。
「自分だけが世間と異なっている」という感覚。
これは誰しもが多かれ少なかれ抱いたことのある感情ではないでしょうか。
そして、それはこの小説が書かれた時よりも現代に生きる我々の方が強く抱くことがあるかもしれません。
常に抱いているようなことはないかもしれませんが、自分の知らない世界へと接した時や、新しい環境に入った時なんかは「自分だけが違う」というような感覚を誰しもが抱いてしまいます。
そんな時、人はとても不安になります。
そして、恐怖に近い感情を抱くことにもなるのです。
破滅していく姿
物語は、終盤とてつもない勢いで破滅へと向かっていきます。
その姿はどこか清々しいほどです。
人の破滅には、強烈な物語性が伴います。
語るべきことは不幸の中に実はあるのかもしれません。
この小説を読むとそんなことを考えさせられます。
何もかもがうまくいくことを人は願うかもしれません。
しかし、それは喜劇でもなく、悲劇でもないつまらない物語です。
不幸や破滅は喜劇にもなり、悲劇にもなるのです。
そして、そこから人は何かを学ぶこととなるのかもしれません。
映画も公開予定
来週『人間失格 太宰治と3人の女たち』という映画が公開されます。
これは『人間失格』の小説に沿ったものではないそうですが、太宰治という人間の人生を描いたものとなっています。
蜷川実花さん監督で、小栗旬さん主演ということでこれも観にいきたいと思っています。
そして、太宰治の他の小説も読んでみたいです。