感想『SR サイタマノラッパー』油断していると、感動させられます・・・

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最初のきっかけは大学の授業でした。
先輩が紹介していたこの映画。見るたびに発見がある映画です。

『SR サイタマノラッパー』

2009年に公開された日本映画です。

監督は入江悠さんです。


【キャスト】
MC IKKU:駒木根隆介
MC TOM:水澤紳吾
MC MIGHTY:奥野瑛太
小暮千夏:みひろ


ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でオフシアター部門グランプリを受賞している他、国内外で数多くの賞を受賞しています。

その後シリーズ化され、2、3と映画版が公開。
2017年にはテレビドラマ化もされました。

あらすじ

埼玉県のフクヤという町(深谷市がモデルの架空の町)に住むIKKU、TOM、MIGHTYはSHO-GUNというグループを組み、いつかラッパーとしてライブをする日を夢見ていた。

しかし、ニートであるIKKUと、おっパブの店員として働いているTOM。ブロッコリー畑の親の元で暮らしているMIGHTYはなかなか日の目を浴びることもなく暮らしていた。


ある日、東京へ出ていた同級生である小暮千夏という女性がフクヤへ帰ってきているという噂を耳にする。

そして、SHO-GUNの元に初めてライブの依頼が来ることとなるのだが、それは市役所内で大人たちを前に行うライブであり・・・。

埼玉の田舎に住む

この『SR サイタマノラッパー』という映画。
個人的にはとても好きな映画です。

続いていくシリーズもどれも良さがあって、好きなのですが、やはり始まりとなる1作目はとても面白い映画だと思います。


舞台は埼玉のフクヤという架空の町です。
実際にある深谷市をモデルとしている町が舞台となっています。

フクヤは東京まで絶妙な距離感の場所にある埼玉の田舎町となっています。


決して遠くはないのだけれど、近くもなく、町を出て東京へ行こうと思えばそれなりに覚悟のいるような。そんな町として描かれています。


メインの3人となるMC IKKU、TOM、MIGHTYはそんな町に暮らしている青年です。

年齢は明確にはされませんが、おそらく高校を卒業して数年後の20代前半くらいではないかと思われます。


彼らはフクヤという田舎町で、HIPHOPに魅了されながらも、決して安定しているとはいえない状態で鬱々とした日々を過ごしています。

彼らはいつかライブすることを夢見ながらも、その兆しはなかなか見えてきません。

市役所でのライブ

そんな彼らにライブをするチャンスが訪れます。

しかし、それは市役所で行われる、フクヤに住む若者を紹介するというような意図のライブでした。


いわゆる『普通』の人たちがたくさんいる前で、まだプロとして成立してもいないラップを披露することとなるのです・・・。

観た人であれば分かると思うのですが、このシーンは本当に凄まじいです・・・。


彼らがいかに『痛いやつら』であり、世間から浮いている存在なのかということを、これでもかとばかりに突きつけられるのです。


しかも、このシーンはワンシーン、ワンカットで撮られています。
映画を見ている方は、それを『普通』の人達側の視点で観ることとなるのです。

そのラップはとても拙く、しかもシーンが変わると説教のような質疑応答が始まっているのです・・・笑

感動のラストシーン

そんな彼らですが、色々あってSHO-GUNは最終的に解散することとなってしまいます。

彼らの夢は行き詰まってしまったかに思えたのですが、最後にまさかのラストシーンが待っています。


IKKUはとある定食屋さんでアルバイトを始めることとなります。
そして、TOMもどこかの肉体労働的な仕事へ就くこととなります。

そんな二人がIKKUの働く定食屋で再開するのです。
店員と客として初めは接している二人だったのですが、次第にIKKUの思いが溢れ出していきます。


自分の思いをラップに乗せてTOMに向けて歌い始めるのです。

RHYMSTERの宇多丸さんの映画評論でも言っていましたが、ここは彼が初めて『言葉を獲得した瞬間』なのです。


HIPHOPに憧れていながらも、どこか表面的な魂の抜けていたラップに、初めて魂が宿る瞬間とも言えます。

本質的に内面から言葉が出てくる瞬間をワンカット、ワンシーンで捉えているのです。


このシーンはとても美しいです。
彼らはとてもダサいやつらなのですが、このシーンには、この映画でしか描けない、他の映画では見たことのないような美しさが宿っています。


IKKUの呼びかけに最後、TOMが振り向きます。
その瞬間映画は終わります。

その後彼らの間にどんなやりとりがあったのかは描かれていません。

しかし、その先を描いている続編を見ると、IKKUの熱い思いはTOMに届いたのでしょう・・・。

サイタマノラッパーシリーズ

何を言われようと、何を思われようと決して嫌いになれない何かが誰しもあると思います。

そんな何かに執着するような話が個人的にはとても好きです。


『SR サイタマノラッパー』はまさにそんな映画です。

なめているほど、感動させられる映画です。


続編が出ていることも見ると、多くの人に評価され、たくさんの人に愛されている映画となっているのだと思います。

さらなる続編もあれば見てみたいです・・・。

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