感想『(舞台)神の子どもたちはみな踊る』映画と小説の中間としての舞台

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『海辺のカフカ』に続き、舞台観てきました。

『神の子どもたちはみな踊る』(舞台)

2000年に刊行された村上春樹の短編集を原作とする舞台で、2019年7月〜8月にかけて上演されています。

本の『神の子どもたちはみな踊る』は6編の短編が収録されていて、その中で『かえるくん、東京を救う』と、『蜂蜜パイ』を合わせたような内容の舞台となっています。

キャスト・スタッフ

原作:村上春樹
脚本:フランク・ギャラティ
演出:倉持 裕

淳平:古川雄輝
小夜子:松井玲奈
片桐・高槻:川口 覚
沙羅:横溝菜帆、竹内咲帆 ※Wキャスト
かえるくん・語り手:木場勝己

あらすじ

小説家である淳平は、友人の家で沙羅という女の子に話を聞かせていた。

大学時代からの友人である小夜子の娘である沙羅は、震災のニュースを見て以来、夜に目を覚まし泣くことがあるという。

地震男がやってくる。

沙羅はそう言い、家を隅々まで探し始めるという。

小夜子はそんな娘にどうすることもできずに頭を悩ませていた。


一方で、信用金庫に勤めるサラリーマンである片桐の元に、ある日巨大なカエルが現れる。


「ぼくのことはかえるくんと呼んで下さい」

巨大なかえるはそう言った。

「ぼくは東京を壊滅から救うためにここに来ました。」


地下にはみみずくんがいて、みみずくんが東京で起こす地震を止めるために戦わなければならない。

かえるくんはそう言い、片桐の助けが必要だと言うのであった。

舞台としての

先日観てきた『海辺のカフカ』に続き、村上春樹原作の舞台を観てきました。

今回は2000年に刊行された短編集である『神の子どもたちはみな踊る』の中に収録されている『かえるくん、東京を救う』と『蜂蜜パイ』を合わせたような話となっています。

(『神の子どもたちはみな踊る』という短編集は、阪神淡路大震災の後の世界における、地震に関する話が6編収録されています。『神の子どもたちはみな踊る』という名の短編もあるのですが、舞台ではこの話ではありませんでした)


舞台を見るのは2回目でした。
今回は東京駅に近くにある大手町読売ホールという場所でした。

土曜日の夜で、たくさんの人が入っていました。


舞台は、現実と、テレビや映画などの間にあるメディアだと思います。

生身の人間が目の前で、物語を演じるのです。

分かりませんが、舞台はこれからもっと力を増していくのではないでしょうか。
そんな気がしました。


人々は、その場その場にしかない『生』のものを求める方向へ向かっている気がします。

映画や音楽など、パッケージ化されているものを見る手段が増えているがゆえに、その瞬間にしかない『何か』を求めるという方向へ向かっているのかもしれません。

村上春樹作品の舞台化

今回の『神の子どもたちはみな踊る』を見てみて、村上春樹さんの作品は舞台という場所にすごく合っているのではないかと思いました。

むしろ、その魅力を損なうことなく別の媒体で伝えることができるのは舞台だけかもしれません。


舞台は、小説的な文章の『語り』が許される場所です。
というよりは、そのような『語り』がプラスに働きます。

映画やドラマではこのような『語り』はあまり許されません。
小説的な長い語りは強烈な違和感を生んでしまうことの方が多いと思います。


村上春樹さんの小説は、気の利いた比喩や、独特な表現で溢れています。

文章によるそのような『遊び』は小説ならではのものなのですが、舞台であればそのあたりも極力違和感なく使うことができるのです。


今回の舞台にはかえるくんというキャラクターが登場します。

小説であれば、読者の想像力に委ねることができますが、映画であればその姿を形として映し出さなければなりません。

しかし、舞台ではその中間でかえるくんというキャラクターを表現することができるのです。

かえるくんは独特な喋り方をし、独特な言葉選びをします。
しかし、そんなセリフも舞台ならあまり違和感なく見ることができます。

見終えてみて

『神の子どもたちはみな踊る』の小説を読んだのはおそらく6〜7年前だったかと思います。

話の全てをしっかりとは覚えていませんでしたが、舞台を見る前にはあえて読み返すことはしませんでした。

舞台を見た後に読み返してみて、ほぼ原作通りだったのだなと思いました。


話の大筋がとかということではなく、細かいセリフに至るまで、一つ一つがほぼ原作通りとなっていました。


淳平役を演じいてのは古川雄輝さんという俳優です。
前に、『太陽』という映画に出ているのを見ました。

そして、小夜子という女性を演じているのは元SKE48の松井玲奈さん。
二人ともとても上手に演じていました。


それにしても、舞台という場所での声の出し方・・・。
これは本当に独特です。

話し上、囁くようなセリフでも、観客にはそのセリフを伝えなければなりません。
当たり前のようにやっているようで、これって素人からしたらなかなか凄いことだと思いました。


そして、かえるくんを演じていたのは木場勝己さんです。
この方は、『海辺のカフカ』の舞台でもナカタさんという少し癖のある役を演じていました。

村上春樹作品に登場するトリッキーなキャラクターを演じていて凄いなと思いました・・・。


調べたところ、今度『ねじまき鳥クロニクル』も舞台化されるとのことでした。
まだ少し先のことですが、これも是非見に行きたいです。

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