
内田樹さんの自叙伝的な本です。
『そのうちなんとかなるだろう』
2019年にマガジンハウスより出版された武道家であり、大学教授であり、翻訳家でもある内田樹さんの本です。
何かについて書かれた本というよりは、内田さんの今までの人生について書かれている本です。
内田樹さんといえば
内田樹さんの本はどれもとても好きで、内容を見ずとも作者の名前だけを見て買ってしまう人の一人です。
何について語っていても、この人の書く文章には独特のオリジナルな呼吸のようなものがあるような気がするからかもしれません。
出版されている本はほとんど読んでいるような気がします。
この人の文章は、決して簡単ではない事柄に関しても、本当にわかりやすく書かれています。
予備知識がなかったり、頭のレベルが違う人でも理解できるような文章を書くのが本当に上手い人なんだな・・・とすごく思います。
日本の教育に関する話や、村上春樹さんなどの文学や哲学に関する話。
政治の話や経済の話も、どれもとても面白いものばかりです。
たくさん読んできましたが
内田樹さんの本はたくさん読んできましたが、『内田樹』という人間がどのような人生を歩んできているのかは詳しくは知りませんでした。
この『そのうちなんとかなるだろう』は、人間としての内田樹のことを書いている本です。
いろんなことを語ることのできる内田樹さんが、『内田樹』について改めて語っている本です。
2時間ほどで読み終えることのできる量で、とても読みやすい本でした。
読み終えてみて、この人はなかなか波乱万丈な人生を送っている人なんだな・・・と知りました。
都内屈指の進学校である日比谷高校を中退し、家出してアルバイト生活を送っていたものの、これではダメだと一念発起し、大検を受け、その後東京大学へ進学。
東大卒業後も、友人と翻訳会社を営みながら3浪して大学院へ進学し、その後結婚や、合気道の師との出会いを果たしながら神戸女子大で教えることとなります。
その後、離婚をし、再婚し、大学の教授としての役も終え、自宅兼合気道の道場を作り、物書きとしてたくさんの本を書いています。
なかなか面白い人生を歩んでいるのだな・・・と思いました。
しかし、この本では流れに身をかませるようにして生きてきた結果だと言っています。
なすべきとこでなすべきことをなす
内田樹さんは、合気道をやっているからということもあり、自分の身体感覚を信じることの重要性を度々述べています。
この本の中でもやりたくないことはやらなくて良いと書かれています。
身体が何かしらのアラームを出しているのであれば、その身体感覚はとても正しく、我慢することなく、やりたくないことはやらなくても良いというのです。
そして、スティーブジョブスの言葉も交えながら、自分の直感的な部分を信じることの重要性も述べています。
自分の本当にやりたいことは自分の身体が知っているというのです。
流れに身をかませること。これは簡単なようでとても難しいことではないかと思います。
これはつまり、過去の自分を肯定した上で、現在の自分を肯定し、さらに自分のどんな未来も信じるということでもあります。
なんだかんだで
読み通してみて、この人はなんだかんだで恵まれている人なんだなという印象も受けました。
日比谷高校や東京大学は、決して流れに身を任せているだけで入ることのできる学校ではないと思います。
そして、たくさんのいい出会いが彼の人生を支えているのだと思いました。
出会いによって導かれている部分もたくさんあると思いました。
そして、個人的にとても興味深かったのが日比谷高校での同級生に関する描写です。
その場所では真面目に受験勉強をすることは禁忌であるような空気で、努力して良い成績を収めることで同級生からのリスペクトを集めることはできないといいます。
自分はいかにも深く物事を考えてはいませんよ。成績なんて気にしてはいませんよ。という空気を醸し出しながら、抜群の成績を取ることが日比谷的美意識なのだと。
僕も大学では、日比谷高校のような高校出身の人にたくさん会いました。
彼らは、遊んだり、麻雀をしたり、部活でスポーツをしたり、音楽をしたりしながらも、やるべきところはしっかりやる。そんな人たちです。
正直、僕は決してそっち側ではありません・・・。
内田樹さんも自分はそうでないと言っています。
だからこそ僕はこの人の本が好きなのかもしれません。
そっちではないことを自覚しているその客観的な視線が内田さんの強さなのだとも思います。
これからもたくさんの本を書いて欲しいと思います。
そして、書かれた本は片っ端から読んでいきたいです・・・。