感想・要約『テーマパーク化する地球:東浩紀』批評の役割とは

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『ゲンロン』から刊行された最新の本です。

『テーマパーク化する地球』

批評家であり、哲学者であり、作家であり、今では会社の経営者でもある東浩紀の様々な原稿を47編集めた本。

自身で創業した『ゲンロン』に掲載されていたものを始め、様々な媒体で掲載された文章が集められている。

この本の刊行にあたり、すべての原稿を読み直し、ほとんど全てに加筆修正を加えているという。

扱われているテーマは多岐に渡る。

本書のタイトルともなっている『テーマパーク化する地球』という章から始まり、震災後の『フクシマ』や慰霊に関する話。

哲学や文学に関する話もあれば、創業した『ゲンロン』の経営者としての苦悩も綴られており、批評に関する極めて本質的な話も掲載されている。

『ゲンロン』

東浩紀さんの本や、考え方はとても好きで、新し本が出版されればできるだけ買って読むようにしています。

そして、僕は『ゲンロン』の友の会にも2年ほど前から入会しています。

『ゲンロン』の最新刊が刊行されればいち早く読んでいます。

しかし、読めば読むほど思うのは、この人の知性は全然次元の違うところにいるのだということです・・・。

東浩紀さんの本が好きだと言いつつも、正直言ってその本質をどこまで深く理解できているのかは怪しいです。

物事を考えているステージが違うというような印象を受けます。

それでも、僕はこの人の本が好きです。読めば面白いと思えるような部分がたくさんあるし、少しずつ理解していけているような気もするのです。

扱っているテーマ自体は、僕らが身近に感じられるようなことも多いです。

オタクに関する話であったり、震災後の日本についての話であったりとテーマ自体は決して難しいものではありません。

そんなテーマでありながら、東浩紀さんの本は新しい見方や、自分では決して生まれないであろう考え方を与えてくれます。

読めば、何かしら「なるほどな〜」と思える部分がある。だからこの人の本が好きなんだと思います。

批評とは何か

前半の1・2章は、震災後の福島の話やチェルノブイリの話となっています。

3章以降は、批評というものそのものの存在意義や、その役割について書かれています。

前半も面白いのですが、個人的には後半の批評についての部分がとても面白いなと思いました。

批評とは、作品を生み出す行為とは違います。

誰かが生み出した作品に対して、事後的に展開されていくものです。

作品がたくさん作られ、消費され、うまく回っている時に批評など必要ありません。

しかし、映画や小説、漫画、音楽など様々なジャンルにおいてそのジャンルそのものが危機に陥ってしまうときがあると言います。

ジャンル全体が停滞してしまい、前へ進むことができなくなってしまうような。そんな状態です。

批評は、そういう時に必要とされるべき『健康保険』』のようなものなのです。

なるほど・・・。

確かに、小説や映画など、うまく回らなくなった時に「小説とははにか」、「あの映画はヒットしたのに、なぜこの映画はダメなんだ」というような問いが必要になるのでしょう。

それこそが批評の持つ極めて本質的で重要な役割なのだと言います。

経営者として・・・

本書の最後には、東浩紀さんが創業した『ゲンロン』の経営者としての苦悩が書かれています。

会社として『プラットフォーム』を提供する役割を果たさなければならないながらも、書き手として『コンテンツ』も提供しなければならないと、そこに苦悩し『ゲンロン』の代表としての立場を降りています。

分かるような、分からないような・・・。

それでも、今ではそんな状況からも復調し、両者を同居させるために活動を続けています。

きっとこれからも僕とは次元の違うようなところで物事を考え、新しい視点で物事を見て、面白い本を書き続けてくれるような気がします。

僕も今のところは継続して『ゲンロン』の会員ではあり続けるつもりです。

この会社のことを応援していきたいと思っているからです。

きっと、長期的に見ても意味のあるものを残してくれるような気がするからです。

次にはどんな本が刊行されるのでしょうか・・・。

とても楽しみです。

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