
号泣してしまった映画です・・・
『シング・ストリート 未来へのうた』
2016年に公開されたアイルランドの音楽映画。
脚本・制作・監督はジョン・カーニー
主役のコナー(コズモ)役はフェルディア・ウォルシュ=ピーロ
兄のブレンダン役をジャック・レイナー、恋人のラフィーナ役はルーシー・ボイントンが演じた。
アイルランドでは3月17日に公開。その後、4月アメリカ、5月イギリスと封切られ、日本では7月9日に公開された。
あらすじ
舞台は1985年のアイルランドの町ダブリン。
ダブリンの南部に住むコナーの家族は、父親が職を失い厳しい状況に立たされていた。
両親の仲も悪く、コナーは学費節約のために私立の高校から無料の公立校へ転校することとなる。
カトリックの修道会が運営するシングストリート高校に転向したコナーは茶色い靴を先生に目をつけられ、さらにいじめっ子のバリーからも目をつけられてしまう。
散々なスタートとなった新しい学校生活だったが、学校の前にある家の前に立っている一人の女性を見つける。
ラフィーナと名乗るその女性は、モデルの仕事をしているという。
彼女に一目惚れしたコナーはなんとか気を引こうと、組んでもいないバンドのMVの出演しないかという話を持ちかける。
電話番号を手にしたコナー。そしてMV撮影に向けバンドのメンバーを集めるのだが・・・
青春音楽映画
最初に見たのは、もう2年ほど前になるこの映画。
個人的には本当に大好きな映画です。
ダブリンを舞台とした高校生たちの音楽青春映画となっています。
転校生のコナーはラフィーナという女性の気を引こうとして、組んでもいないバンドのMV出演を依頼する。
そこからメンバーを集め、『シング・ストリート』というバンド名の彼らは曲を作っていくこととなります。
いわゆる1980年代の音楽というものを完全に理解しているわけではありませんが、この映画に出てくる音楽はどれも絶妙なものばかりです。
高校生たちが少しずつ成長していく様子、そして見たものにすぐに影響を受けてしまう感じであったり、ちょっとした別のシーンが曲に盛り込まれていたりしているのです。
そして、どれもいい曲ばかりです。
悲しみを隠す音楽
コナーの両親は仲が悪く、兄も引きこもってしまっている状態です。
そんなコナーの唯一の希望となっているのが仲間創る音楽であり、ラフィーナなのです。
コナーはたくさんの悲しみを抱えています。
しかし、音楽は希望となり彼のことを支えてくれているのです。
この映画を見ると、音楽だけでなく芸術などの持つ意味がとてもよくわかります。
生きていく上で不可欠ではないかもしれませんが、芸術には人の人生を支えてくれる力があるのです。
仲間たちと『Up』という曲を演奏するシーンは、本当に幸福感に溢れています。
最初二人で歌っているかと思ったら、カメラが動き他のメンバーが映し出される。
音楽を演奏することの幸福感。音楽を作ることの幸福感が本当にうまく表現されています。
たくさんの人が聞いてくれなくとも、音楽を演奏することそのものが持っている強い力を感じさせてくれます。
兄のブレンダン
映画の中でもとても絶妙な存在となっているのが主人公の兄のブレンダンという存在です。
兄はコナーの音楽の師匠として、彼のことを導いていきます。
しかし、彼自身は学校に行っているわけでもなく、働いているわけでもなく引きこもっています。
音楽にはとても詳しく、コナーにいろいろなことを教え込もうとします。
女の気を引きたいのなら、コピーではなくオリジナルの曲を作れというアドバイスをしたり、これからはMVの時代だなどということを教えます。
映画が進んでいくと、彼もコナーと同じように過去に音楽にのめり込んでいたことが明らかにされます。
そして、何処かのタイミングで音楽を諦めざるを得なかったということも。
兄のブレンダンは実は誰よりも悲しみを抱えている人なのです。
両親の不和を誰よりも近くで見てきていて、自分の夢も諦めざるを得なかったのです。
それでも、弟のためにできるだけのことはしようとする。
最後には、あることの手助けをすることともなるのです。
この兄は本当にかっこいいなと思いました。
演奏シーン
この映画の音楽を演奏しているシーンは本当にどれもいいものばかりです。
海辺でのMV撮影のシーンや、最後のギグのシーンなんかも本当に感動的です。
自身の悲しみを覆い隠すような音楽の力をとても感じることができます。
中でも『Drive It Like You Stole It』という曲のライブシーンは本当に感動的・・・。
両親は仲が良く、家族の関係も良好。恋人のラフィーナともうまくいっていて、自分のバンドも大成功している。
そんな『全てがうまくいっている』様子をイメージしながら歌っている彼らの姿に涙が溢れてしまいました・・・
この映画はこれからも定期的に見返してしまいそうです。
そしてその度感動させられそうな気がします。